長期ビジョン「大林ルネッサンス111」を策定

人間尊重企業を旗印に

1991(平成3)年4月、創業100年を機に長期経営ビジョン「大林ルネッサンス111」を策定した。「役職員の共通意識を醸成し、ベクトルの合った企業活動を通じて、個人の活力を引き出し組織の活性化を図り総合力を高める。」「重要経営課題に対し、集中的かつ戦略的展開を図りつつ強固な経営基盤の形成に努める。」を策定の目的とし、その後の10年間を見据えた経営の基本方向を示すものであった。同ビジョンは、「10年後の企業像」「全社的経営基本方針」「事業別目標・基本戦略」「経営基盤に関する基本方針」からなり、「10年後の企業像」を「『空間に新たな価値を創造し、社会と感動を共有する』人間尊重企業」と定めた。そして、理想像の実現のため次の項目を掲げた。

  • ① 顧客に真の満足を提供する。
  • ② 社員の幸せを追求し、仕事を通じて自己実現できる場を提供する。
  • ③ 世界から求められる知的集団、技術集団からなる企業グループを目指す。
  • ④ 建設文化の担い手として情報発信を活発に行い、クリエイティブな提案を行う。
  • ⑤ 品格ある企業として、社会及び株主に対する責任を果たすとともに、社会貢献にも真剣に取り組む。
  • ⑥ 常に競争優位を意識し、企業革新に努める。
  • そして「2001年、建設業のリーディング・カンパニーの地位を確保する。」

以後、当社は、同ビジョンに基づき、環境変化の激しさに即応すべく、毎年見直しを行うローリング方式の中期計画(アクションプラン)を基本に経営展開を図った。中期計画では、「総合営業力の発揮」「情報化の徹底」「社員のゆとり・創造性の創出」「社会貢献への取り組み」などが継続的に追求された。

同ビジョンで謳われた“人間尊重企業”実現のための施策は、厳しい経営環境の中でも着実に実施されていった。バブル期に、建設業は3K(きつい・汚い・危険)職場のイメージが定着しており、これを払拭する意味でも、社員が活き活きと働ける環境づくりは重要であった。1991年度からは完全週休2日制が実施されたほか、現場職員を対象とする現場休暇や研究員向けフレックスタイム制も設けられ、同年11月には共済会による遺児育英年金制度が導入された。また、1992年4月には「育児休職規程」が制定された。

社員の能力開発にも取り組み、1992年1月から始まった社内トレーニー制度は、若手・中堅職員を一定期間他部門に配転して、実践的に幅広い業務経験を積ませるものである。また、同年11月には技能長・技能主任・現業職員の役職発令等に関する規程を設けた。いずれも、建設業を取り巻く環境変化に適応できる、視野の広い人材を育成するための施策であった。また1994年4月には当社初の教育専用施設として「大林組研修センター」(東京都墨田区)が完成した。

協力会社職員のための職場環境改善や研修にも積極的に取り組んだ。1991年5月には労働省の雇用近代化モデル事業のトップバッターとして指定を受けた。当社は、労働省および雇用促進事業団からの指導を得ながら、リフレッシュカーの開発、作業員宿舎の設置基準の制定などによって作業環境の向上に努めたほか、協力会社職員の家族を現場見学会に招待するなど、就労環境の改善を行った。研修面でも、協力会社経営者向けの講演会開催や、協力会社専用の宿泊研修施設である八潮研修センター、専用宿舎である八潮ベースハウスの建設などを行った。

大林ルネッサンス111
大林ルネッサンス111
大林組研修センター
大林組研修センター
リフレッシュカー(四季の山並号)
リフレッシュカー(四季の山並号)
リフレッシュカー(地球の仲間号)
リフレッシュカー(地球の仲間号)
八潮研修センター:1993年3月竣工
八潮研修センター:1993年3月竣工
八潮ベースハウス:1995年12月竣工
八潮ベースハウス:1995年12月竣工

社会貢献活動

「大林ルネッサンス111」で標榜された“建設文化の担い手”の取り組みは、1995(平成7)年1月、東京六本木にTNプローブとして具現化した。TNプローブは、ギャラリー施設を有し、建設に関する国内外の新しい思想、情報をシンポジウムや展覧会で発信するほか、講演・ワークショップ・専門家会議などを通じ、さまざまなプロフェッショナルが交流するプラットホームとなることをめざした。シンポジウムをまとめた『TN Probe』シリーズの発刊や、Webでの情報発信なども行い、2008年に活動を終えたが、オランダの建築家レム・コールハースの講演や連続シンポジウム「オルタナティブ・モダン 建築の自由を開くもの」などは大きな反響を呼んだ。

1998年9月、大林芳郎会長により財団法人大林都市研究振興財団(2011年9月公益財団法人大林財団に改称)が設立された。同財団は大林会長が私財を投じて設立したもので、都市・文化・環境の学際的・総合的研究の支援を目的とし、研究や研究者の海外招聘・派遣、国際会議などに対する助成のほか、「大林賞」を設けて優れた研究成果を表彰している。

TNプローブイベントリスト
TNプローブイベントリスト