新たな生産システムを開発

生産性の向上は、競争力や利益率のみならず、不況下において長期ビジョンで掲げた“人間尊重企業”を具体化していくうえでも重要であった。1991(平成3)年3月に鉄骨生産合理化プロジェクト・チームを設置した。同チームは、鉄骨需要増加に伴って価格上昇・受注忌避・納期遅延などが発生していたことから、当社と複数の鉄骨発注先をCAD/CAMシステムで結び、早期予約発注体制を整えていった。

建築分野では、トータルな生産性を向上させるべく新建築生産システムO-SICS(Obayashi Strategic Integrated Construction System)の開発・構築が進められた。これは、設計、見積、施工計画、現場生産、工場生産、ロジスティクス関連、労務管理、要員管理、コスト、協力会社などのデータベースを結合したプロジェクト総合管理システムを構築し、プロジェクトの初期段階からアフターサービスまでの全プロセスにおいて、顧客・設計者を含めた情報を統合、最適な生産計画立案と施工管理を行うものであった。また、他社に先駆けて発表した全自動ビル建設システムABCS(Automated Building Construction System)も、1994年4月に完成した自社独身寮(墨田寮)の新築工事に採用して検証を進め、玉川ルネッサンスシティサウスタワーで実用化し、アートヴィレッジ大崎セントラルタワーなどで威力を発揮した。

土木分野でも、新たな生産システムの開発と普及を進めた。無人化施工機械土工システムは、土石流、地滑り、山崩れなどの災害危険地域での土工事や有害物汚染土の処理などで、危険で人が直接入ることのできない場所での施工法であり、重機を遠隔操作・施工管理する情報通信システムにより構成されている。当社では、姫路市中部処分場の汚染土処理工事、上ノ国ダムの土工事で適用した。また、東京湾アクアラインにおいて、シールド工事にセグメントの自動組立システムの導入を始めたほか、セグメント自動搬送システム、ダム用コンクリート自動搬送システムなどを開発し、工事に適用した。