概括

当社が創業100年を迎えた1991(平成3)年、冷戦終結や地球環境問題への関心の高まり、情報通信技術の発達などを背景に、時代は大きく変わり始めていた。日本もバブル崩壊で景況が一変、少子高齢化やグローバリゼーションが進み、新たな成長モデルが求められるが、突破口は容易に見つからない。いわゆる「失われた10年」(平成不況)が始まった。建設業界も、バブル崩壊で不稼働資産を抱えるなど、大きな打撃を受けた。また、急激に冷え込んだ建設需要に対し、各社の生き残りをかけたコスト競争も激しさを増した。さらに1994年のゼネコン汚職事件で業界に厳しい視線が注がれ、企業倫理や事業活動の透明性の確立が急がれた。

1991年3月期に受注高1兆9,540億円、経常利益603億円と過去最高の業績(経済指標と当社業績の推移)を記録した当社は、長期経営ビジョン「大林ルネッサンス111」を策定、“人間尊重企業”を旗印に掲げた。以後、労働環境・福利厚生の向上、建設文化への貢献などを継続的に進めていく。環境対応では、1990年4月に発表した「企業理念」において、建設事業の環境負荷の高さを踏まえ、「自然と調和し」との文言を盛り込み、同年5月、同業他社に先駆けて地球環境部を新設した。1992年7月には、「大林組環境保全行動計画」を策定して全社的対応の第一歩とした。

当社は、バブル崩壊後、受注(売上)から利益重視へと経営方針を転換した。国内外の事業拠点を整備強化するとともに、要員の営業シフトと重点市場への集中や建築・土木連携などを進めた。さらに効率的な営業体制の構築をめざした営業統括部の新設(1994年10月)、リニューアル需要の取り込みなども図っていった。また、1992年度にはバランスシートの改善を経営方針に掲げ、投資の抑制と不稼働資産の早期処分により、有利子負債の増加に歯止めをかけるとともに、全社的な情報化を推進して、新時代対応と業務効率向上の基盤とした。このほか、1994年1月の建築工事コストダウン推進委員会の設置をはじめとする価格競争力強化や生産性向上を目的とする自動化・省力化のための技術開発を積極的に行った。品質に関しても、1995年には、ISO9000に適合した品質保証体制を整備するために品質マニュアルを改訂するとともに内部品質監査員の養成に着手した。

1993年春の元自民党副総裁の脱税事件から始まったゼネコン汚職事件では、経営幹部の逮捕や営業停止処分など痛恨の結果を招き、企業倫理の確立と信頼回復が急務となった。一方で、1995年1月17日に発生した阪神・淡路大震災に際しては、当社は復旧工事や復興工事などで建設業としての責任を果たし、評価を高めた。
激動する経営環境の中、当社は創業第2世紀の第一歩を踏み出したのである。

当社業績とGDP、建設投資の推移
当社業績とGDP、建設投資の推移
大林ルネッサンス111
大林ルネッサンス111
企業理念
企業理念