ゼネコン汚職事件の衝撃

1993(平成5)年の春、元自民党副総裁の脱税事件の押収資料から発覚したゼネコン汚職事件は、建設大臣の逮捕に続き、仙台市長(1993年6月)、茨城県知事(7月)、宮城県知事(10月)などが現職のまま逮捕された。

そして、1994年1月18日、当社を震撼させる事件が起こった。当社の副社長と東北支店長が、前仙台市長への贈賄容疑で逮捕されたのである。翌月には2人が起訴され、11月には有罪判決を受けた。この結果、当社は10日間の営業停止処分(1995年1月9日〜18日)を受け、経営陣は株主代表訴訟を提起されることとなった(1999年に和解)。

当社は企業理念において「企業市民」であることの重要性を強調、「大林ルネッサンス111」でも社会性を指標の一つとし、大林会長もさまざまな機会を通じて不法行為を厳に戒めていた。さらに1992年12月には「独占禁止法遵守マニュアル」を作成し、営業関係の役職員を対象に独占禁止法遵守のための研修を行うなど、建設業として健全な発展をめざす取り組みを重ねていた矢先の不祥事であった。

1994年1月26日、津室社長は社報号外「事業活動の適正化について」を発し、再発の防止と信頼回復のため、「役職員一同においては、法令遵守の徹底など適正な事業活動を行うことの重要性を銘記し、業務活動にあたること」を訴えた。2月1日に社長を委員長とする事業活動適正化委員会を設置し、10日には「大林組企業行動規範」を制定、これを全役職員に配布するなど、矢継ぎ早に対策をとった。「大林組企業行動規範」は、「社会的使命の達成」と「企業倫理の徹底」からなり、後者は、①法令遵守及び良識ある行動の実践、②公正な入札の実現、③政治、行政との健全で正常な関係の確立、④反社会的行為の根絶、⑤企業会計の透明化と適正な情報開示――の5項目から構成されている。

社報号外「事業活動の適正化について」
社報号外「事業活動の適正化について」