概括

2007(平成19)年10月、「いざなみ景気」は後退局面に入った。米国で始まったサブプライムローン問題による景気減速と原油価格の高騰がその主因であった。さらに、リーマン・ブラザーズ証券の破綻(2008年9月)により世界金融危機が起こり、GDP成長率は2008年度(前年度比-4.6%)、2009年度(同-3.7%)と大きく落ち込んだ。建設投資は、2007年度には耐震偽装事件に端を発した建築確認申請手続きの遅延の影響もあって前年度比-7.0%、2009年度には世界金融危機の影響により-10.2%と大幅に減少した。

こうした中、2007年6月、白石達が社長に就任した。

当社業績は、談合事件による営業停止、指名停止の影響にこの不況が加わり、受注高は2006年度、売上高も2008年度から、それぞれ減少が続き、2009年度には受注高は10,211億円(前年度比-13.0%)、売上高は10,576億円(同-19.7%)となった。営業利益は2006年度以降減少が続き、2009年度には、中東ドバイのプロジェクトにおいて巨大な損失を計上したため、上場以来初の700億円の営業損失となった。

一方、談合事件で失われた信頼回復に向け、白石新社長は「コンプライアンスの徹底」を経営の最重要課題とした。2007年8月、「反社会的勢力排除プログラム」を策定したほか、金融商品取引法に基づく財務報告に係る内部統制の報告制度のスタートを機に、2008年4月、監査室とJ-SOX対応組織を統合して業務管理室を新設した。

2007年11月には「技術を核として利益成長企業へ」を目標とする「中期経営計画’08」を示し、技術による差別化、利益確保を訴えるとともに、新三箴「良く、速く、廉く」を業務取組姿勢と定めて、スピード重視を訴えた。

国内建設投資が縮小する中、2007年8月、開発事業を土木事業、建築事業に並ぶ新たな事業の柱として定め、東京本社に開発本部および東京不動産事業部を設置した。2007年11月には技術本部、2008年4月には海外支店を設置し、「中期経営計画’08」の実現に向け、競争力と収益基盤の強化策を打ち出していった。2009年4月には設計本部にプロジェクト設計部、本部長室、設計管理部、工事監理部および製作設計部、2010年12月には、グローバルICT推進室を、それぞれ設置した。

2010年3月、登記上の本店所在地を大阪から東京に変更することを決定。株主総会の決議後の7月、変更手続が完了した。これに先立ち、4月には東京本社の組織を改め、本社と東京本店に再編し、併せて本店を大阪本店に名称変更した。本社管理部門、各本部およびPFI事業部を本社とし、東京本店、大阪本店にはそれぞれ建築事業部、土木事業部を置いた。

人事面では、2008年4月、グループ制を廃止して課制に復し、併せて役職制度の見直しを行ったほか、2010年4月には新教育体系がスタートした。

グループ事業については、新たな収益基盤を確保するため積極的なM&Aに着手し、2011年3月、カナダの水処理施設などの土木工事で実績を有するケナイダン社(オンタリオ州)を買収したほか、国内でも、2011年6月、新星和不動産を買収し完全子会社とした。

2011年1月25日、創業120年を迎えた当社は、創業以来の「技術」と「誠実さ」をDNAとして次代へ継承するとともに、「地球に優しい」リーディングカンパニーをめざした、「大林組基本理念」を発表した。さらに、2月には、中長期環境ビジョン「Obayashi Green Vision 2050」、6月には「大林組人権方針」、7月には「大林組社会貢献基本方針」を発表した。

2011年3月11日、マグニチュード9.0の東北地方太平洋沖地震が発生した。地震により発生した巨大な津波の被害もあり、死者・行方不明者が1万9,000人を数える東日本大震災となった。当社は初動応急復旧工事をいち早く展開するとともに、その後の復旧工事にも全社をあげて取り組むこととなる。

創業121年目を迎えた2012年、白石社長は「中期経営計画’12」を発表した。これは、「中期経営計画’08」(5ヵ年)の策定時と比べ経営環境が激変したことを受け、1年前倒しで新たな経営計画を立案したものである。基幹事業である国内建設・開発事業の収益力の維持・強化はもとより、新たな事業領域への進出による収益基盤の多様化をめざすこととした。

当社業績とGDP、建設投資推移
当社業績とGDP、建設投資推移
中期経営計画'08
中期経営計画'08
大林組基本理念
大林組基本理念
中長期環境ビジョン「Obayashi Green Vision 2050」
中長期環境ビジョン「Obayashi Green Vision 2050」
中期経営計画'12
中期経営計画'12