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Project Story 02

地震・火災時の構造物挙動を予測。
世界が認める解析ソフト「FINAL®」「FINAL-GEO®」

地震・火災時の構造物挙動を予測。
世界が認める解析ソフト「FINAL®」「FINAL-GEO®」

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プロジェクトリーダー プロジェクトリーダー

Project Leader

構造技術研究部 主席技師

米澤 健次

Kenji Yonezawa

学生時代から鉄筋コンクリート構造の解析技術やソフトの研究開発に取り組む。非線形FEM解析プログラム「FINAL(ファイナル)」、その大規模解析バージョン「FINAL-GEO(ファイナル・ジオ)」の開発・拡張・改良に携わる。日々、この分野の第一人者をめざし研さんを積む。

学生時代から鉄筋コンクリート構造の解析技術やソフトの研究開発に取り組む。非線形FEM解析プログラム「FINAL(ファイナル)」、その大規模解析バージョン「FINAL-GEO(ファイナル・ジオ)」の開発・拡張・改良に携わる。日々、この分野の第一人者をめざし研さんを積む。

コンクリート構造物の挙動を高精度で予測できる「FINAL」、大規模モデルへの対応と高速化を実現した「FINAL-GEO」は大林組の独自技術。国内外で高い評価も得ており、日本の有名大学の研究室などでも定番ソフトとして活用されている。開発研究を担当する米澤健次研究員は日々複雑化する建物に対応するため、ソフトのバージョンアップに余念がない。

About Project

建築分野のデファクト
スタンダードの解析ソフト

「FINAL」は、地震時や火災時の鉄筋コンクリート造建物の挙動を高精度で予測再現できる大林組が開発した解析ソフトです。大林組独自の材料構成則(建築材料に関する数理モデル)が導入されており、他社にはまねできない技術が用いられています。その解析精度は高い評価を得ていて、国際解析コンペで優勝したこともあります。

2004年ごろから社外にも有料でレンタルしており、多くの建設会社、大学の建築系研究室で使われてきました。原子力施設や道路橋脚、LNG(液化天然ガス)地下タンクなど重要度の高い建物の安全評価に多く活用されています。また、技術開発などにおいては実験の代替として活用され、研究開発コストの削減に貢献しています。リリース以来、「FINAL」をツールとして用いた学術論文は年々増えており、日本の建築分野でデファクトスタンダードになりつつあります。

現バージョンの「FINAL」が画期的なのは、それまで簡易にモデル化していた「非線形性」(物質に力が加わり変形した際、力を抜くと元に戻る弾性の範囲を超えるような挙動)を詳細にモデル化し、実物の形状を忠実に再現した3次元(立体)の解析を実現したこと。最近では、建物が多様化・複雑化しており、従来の設計手法が適用できないケースが増えていますが、「FINAL」は実際の構造物や部材のさまざまな形状を細かく分割してモデル化しています。その活用により、経済性と安全性の両面から建物や構造物の合理的な設計・評価が可能となります。例えば、部材内部に作用する応力も含め、精度良く構造部材や建物の非線形挙動がシミュレーションできるので、想定外の地震が来た時に建物がある程度損傷しても崩壊に至らないといった設計もできるわけです。

アバウトプロジェクト アバウトプロジェクト

技術研究所では、これからも豊かで持続可能な社会の構築に貢献できるよう、「FINAL」を拡張・改良する研究開発を続けていきます。「FINAL」の大規模解析バージョン「FINAL-GEO」もその成果の一つ。「FINAL」の材料構成則を導入し、地盤モデルも充実させた解析ソフトで、主に地盤と構造物の連成解析を実施することを目的に開発しました。実物の形状を忠実に再現した詳細なモデルを用いているので、細かなコンクリートのひび割れや圧壊、鉄筋降伏(鉄筋が弾性範囲を超えた状態)などの非線形事象も解析で再現できます。

アバウトプロジェクト アバウトプロジェクト

Story

実験と解析を比較し、
チューニングを繰り返す毎日

私が入社した時、既に「FINAL」はあり、主に2次元解析に使われていました。それを3次元に拡張する、新たな材料構成則を組み込むといった「FINAL」の機能拡張・適用範囲拡大がミッションとして与えられました。諸先輩の指導のもと、過去の研究例も必死に勉強しながら、活かせるものは活かし、改良できるものは改良し、独自手法の構築に取り組みました。

解析ソフトの精度を向上させるためには、新たな材料構成則が本当に正しいかなど、試験体を使った実験の数値と解析の数値を比較して、ちゃんとシミュレーションできるかどうかを確認することが不可欠です。

特に、コンクリートも鉄筋も一定の荷重を超えるとさまざまな方向にひび割れが生じたり、鉄筋が降伏したりするなど非線形性が強い材料ですから、数値解析的に扱うには非常に難しい力学特性を示すので苦労しました。例えば、鉄筋コンクリート造の場合、荷重によって弾性範囲の限界に近づくと、まずコンクリートがひび割れ、鉄筋が荷重を受け止めるようになり、荷重の増加に伴い鉄筋が降伏し、損傷が進むとコンクリートがクラッシュします。こうした現象は数値解析的には不連続なものなので、うまくいかないことが多いのです。かなりの時間をかけていろいろな仮定を試み、一つひとつ材料構成則に調整を加え、構造物の挙動をきちんと再現できるようにしていきました。

解析がうまくいかないのは、ごく簡単に言うと、何十万行もある解析プログラムの中にエラーがあるからです。どこがおかしいのか、一つひとつ潰しながらエラーを見つけて修正しないといけないので、すごく根気がいるし、かなり時間もかかるわけです。入社以来、構造実験棟や振動台実験施設で実験し、解析と比較してチューニングする。そんな毎日が続いています。

他社に先んじて新技術を
発表する大きなやりがい

鉄筋コンクリート造の挙動を再現するうえで、最も重要なポイントはやはり材料構成則です。諸先輩がつくってきた蓄積があるからこそ、今も「FINAL」の機能拡張・適用範囲拡大に取り組めています。それは私たちにとって大きな宝物だし、きちんと後進に引き継いでいかなければいけないものでしょう。

ストーリー ストーリー

また3次元の解析が可能になったのは、コンピュータ自体の計算速度やメモリなどが飛躍的に向上したからこそです。先輩たちはコンピュータの性能面の制約上、2次元(平面)でしか解析できなかった。2次元の解析は、立体のものを平面に置き換えるので、モデル化する際にさまざまな力学的仮定を置かないといけません。なので、シミュレーションの精度は立体に比べてどうしても落ちます。先輩たちも本当は3次元で研究開発したかったのではないでしょうか。その意味では、私たちの世代は非常に恵まれていると思います。

もちろん、私も機能拡張・適用範囲拡大を一歩いっぽ進めてきたと言えます。3次元に関しては、先輩の指導も受けながら、まず単調載荷(圧縮や引張など一方向の荷重)の解析から始めました。それから繰り返し載荷(周期的に外力の大きさが変化する荷重)に進み、やがて地震の揺れなど複雑な動的載荷の解析ができるようになりました。そしてもっと大きな構造物、さらに地盤の影響も含めて解析できるようにと「FINAL-GEO」の開発に取り組んだわけです。ただし、まだ完成形とは言えません。例えば、鉄筋とコンクリートの間の相互作用はもっと突き詰めてモデル化する必要があります。

当然ながら、こうした解析ソフトの研究開発の目的は、構造物の安全性をより高めることであり、同時にコストダウンなど経済性に貢献することでしょう。それを両立する最新の技術を他社に先んじて発表してきた自負があるし、そこに大きなやりがいを感じています。これからも「FINAL」の精度向上に懸命に取り組んでいきたいと思います。

Project Development


ダイナミックス実験棟「遠心模型実験装置」

ダイナミックス実験棟

「遠心模型実験装置」

プロジェクトデベロップメント プロジェクトデベロップメント

「FINAL」の精度向上のため、ダイナミックス実験棟の「三次元振動台」や「遠心模型実験装置」などを活用。実験を対象に解析を行い、その実験結果と「FINAL」の解析結果を比較することでチューニングしました。

構造実験棟

プロジェクトデベロップメント プロジェクトデベロップメント

構造実験棟では、実大規模の建築物を用いて実験することができます。大型構造物の応力状態を再現できる「反力壁・床」や、載荷実験などの装置も揃っているので構造解析の精度向上のための有用な検証データが得られます。

公正な研究活動について

大林組技術研究所では、
公正な研究活動を推進しております。
研究活動における不正行為等、
お気づきの点がございましたら、
以下の連絡先までご連絡ください。

  • 大林組技術研究所企画管理部
  • 〒204-8558 東京都清瀬市下清戸4-640
  • 電話番号:042-495-1111
  • FAX番号:042-495-0901
  • メールアドレス:tri_kousei_kenkyu@ml.obayashi.co.jp