コンクリート構造物の複雑な挙動を高精度に解析するソフト「FINAL」の使用許諾を開始

高精度なシミュレーション解析を、簡易にかつ詳細、短時間に行うことができます

プレスリリース

大林組は、地震や熱などの外力の影響によるコンクリート構造物の複雑な挙動を、簡易に、かつ詳細、短時間、高精度にシミュレーション解析することができる、独自に開発した、非線形有限要素解析ソフト「FINAL」(登録商標)の使用許諾を開始しました。第一弾として、(株)CRCソリューションズ(本社:東京都江東区、取締役社長:杉山尋美)に、使用許諾を供与しました。

コンクリートを使用した柱や梁などの部材や構造物は、地震や熱などの外力によりひび割れが生じ、複雑な非線形挙動を示します。これらの挙動を予測解析することで、より合理的な設計や、必要な安全余裕度を確保した設計が可能となります。しかし、市販されている一般的な解析ソフトは、非線形性の強いコンクリートを用いた部材や構造体などの解析には向かず、大学等の研究機関などが独自に解析ソフトを開発し、構造実験や実証実験から得られたデータを蓄積することで、ソフトの精度向上を図っています。

大林組では、1990年以前からコンクリートを用いた部材や構造物の挙動を解析するためのソフト開発に着手し、多数の構造実験により蓄積された豊富な基礎データと予測精度向上のための検証実験を繰り返すことで、解析ソフトの高度化を図ってきました。既に、RC耐震壁や、柱梁部材、スラブ、橋脚、CFT柱、PCタンク、サイロ、原子力関連構造物、複雑な形状の構造物などを対象として、設計荷重に対する変形予測や安全余裕度の把握、合理的な配筋方法やディテールの検討などに活用し、設計の合理化による建設コストの削減や耐震性能の向上を実現してきました。また、新しい構造や工法の開発時には、構造性能の確認や耐力の予測、破壊メカニズムの検討などに用いることで、実験コストや研究開発期間の削減などにも貢献しています。近年では、関西電力舞鶴発電所の大規模貯炭サイロ建設における応力変形解析や、大阪ガス姫路製造所におけるPCLNGタンクの低温と水平力の作用解析、ハイブリッド・ハニカム工法開発における鋼管・コンクリート複合橋脚の地震荷重に対する内部応力状態の把握、火災加熱時における鋼管コンクリート柱や床スラブの挙動予測、道路橋や鉄道橋などの工期短縮や複合構造を採用した場合の性能設計の検証などに利用されています。

今回、使用許諾を開始した非線形有限要素解析ソフト「FINAL」は、主にコンクリートと鋼材で構成される部材や構造物を、汎用パソコン上で、2次元や3次元でモデル化して解析することができます。解析範囲には、地盤までを含めることができ、また、有限要素法による分割は10万要素までをモデル化することができるので、小さな部材から大規模で複雑な構造物まで広範囲に、そのままをモデル化し、汎用パソコン上でシミュレーションすることができます。また、コンクリートのひび割れや圧壊、鋼材の降伏など構成材料の非線形現象に加えて、コンクリートと鋼材の間の付着すべり状況までを考慮することができるので、RC構造のシミュレーションをより高精度に行うことができます。
操作も簡単で、グラフィカル・ユーザー・インターフェース(GUI)を利用して、簡易にデータ入力を行うことができます。解析のための計算処理も、独自の工夫により効率化を高めており、解析モデルの大きさに応じて必要最低限のパソコンのメモリを利用するだけなので、他のソフトを起動したまま、シミュレーションを行うことができます。従来、数時間から1日程度を要していた3次元モデルの非線形解析の場合、10分程度で処理することができます。

今回使用許諾を開始した非線形有限要素解析ソフト「FINAL」の特長は次のとおりです。
  1. 高精度な解析
    様々な構造実験による豊富な基礎データと、多数の実証実験に裏付けられた高精度な解析を行うことができます。

  2. 簡易な操作
    汎用パソコン上で、GUIによる簡易な操作だけで、解析を行うことができます。

  3. 短時間で解析
    独自の手法により、解析のための計算時間を著しく短縮しました。パソコンのメモリの使用は最小限のまま、高速計算を実現しています。従来、数時間から1日程度を要していた3次元モデルの解析の場合、10分程度で解析処理を完了することができます。

今後、大林組は、「FINAL」を利用して、より合理的な設計による建設コストの削減と、新しい技術の開発期間の短縮や開発費の削減を目指します。また、解析精度の向上や機能追加により、さらに適用範囲の拡大を目指していきます。

プレストレス導入時のタンク側壁の変形モード

以上

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大林組 東京本社 広報室企画課
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