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Project Story 01

建設業界のカーボンニュートラルに挑む。
CO2排出量を低減するコンクリート「クリーンクリート®」

建設業界のカーボンニュートラルに挑む。
CO2排出量を低減するコンクリート「クリーンクリート®」

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プロジェクトリーダー プロジェクトリーダー

Project Leader

生産技術研究部 上級主席技師

神代 泰道

Yasumichi Koshiro

学生時代から建築系コンクリートの研究開発一筋。コンクリート系廃棄物の活用など、環境負荷をトータルに低減する「クリーンクリート」のさらなる進化に取り組む。モットーは信頼されること、やらないことを後悔しないこと。

学生時代から建築系コンクリートの研究開発一筋。コンクリート系廃棄物の活用など、環境負荷をトータルに低減する「クリーンクリート」のさらなる進化に取り組む。モットーは信頼されること、やらないことを後悔しないこと。

CO2排出量の低減は、いまやさまざまな業界が直面する命題。建設業界でもかつては強度を競っていたが、現在の主戦場は低炭素化へと移り変わった。その先駆けとなったのが大林組の低炭素型コンクリート「クリーンクリート」。研究開発を担当する神代泰道研究員はどのように開発に至ったのか。

About Project

業界トップの施工実績、低炭素型コンクリート「クリーンクリート」

私が研究開発している「クリーンクリート」は、従来型のコンクリートに比べ、その製造過程で排出されるCO2量を最大で約80%削減できる低炭素型のコンクリートです。2010年の開発以来、改良を重ね、施工実績は2021年度末時点で34万m3 に達しています。この種のコンクリートの適用規模では業界トップ。これまでは主に超高層建物の地下躯体に使われてきましたが、最近は地上の外壁にも使われるようになっています。カーボンニュートラルに取り組むお客さまは着実に増えており、CO2排出量ゼロをめざすクリーンクリートの研究開発は、ますます重要になっていると実感しています。

クリーンクリートは、製造時に大量のCO2を発生させるセメントの混合割合を大幅に抑え、鉄鋼の製造過程でできる副産物の高炉スラグ微粉末などを用いることでCO2排出量を減らしています。日本のCO2の総排出量のうち、セメント関連は約4%を占めるので、その減量の効果は決して小さくありません。

主材料となるセメントの大部分を高炉スラグ微粉末などに置き換えることから、クリーンクリートは従来型のコンクリートに比べて①粘性が高い、②中性化が早い、③発熱が低い、④色が白いという特性を持っています。こうした特性にはメリットとデメリットの両面があります。

アバウトプロジェクト アバウトプロジェクト

具体的には、セメントは固まる際に発熱し、それがひび割れの原因になります。その点、セメント量の少ないクリーンクリートは低発熱なのでひび割れしにくい。ただ、高炉スラグ微粉末の混合割合が増えるほど粘り気が強くなるので、流動性が求められる外壁や柱には使いにくい。また、アルカリ性のセメントには鉄筋を保護する働きもありますが、セメント量が少ない分、クリーンクリートは早く中性化するので鉄筋がさびやすい。そのため、クリーンクリートは地上構造物には不向きとされ、これまではもっぱら地下構造物に使われてきたわけです。

こうしたデメリットを解消しようと、私たちは流動性と強度を両立する最適な水量や化学混和剤の配合を追求するとともに、メーカーさんと共同研究をして中性化を抑制するクリア塗料の開発にも取り組みました。それによって地上構造物にも適用できるようになり、現在、普及拡大が進んでいます。また、開発した特殊塗料には、クリーンクリートならではの白い美観を活かせるように配慮しました。

アバウトプロジェクト アバウトプロジェクト

Story

国際コンペから始まった
プロジェクト

クリーンクリートの開発は10年以上前に技術研究所の先輩たちが始めたものです。当時、日本の建設業界では「脱炭素」はほとんど注目されていなかったのですが、たまたま、ある原油産出国で環境負荷低減コンクリートの国際コンペがあって、それに先輩たちがトライしようと低炭素型のコンクリートの開発をスタートさせました。

業界的には、まだ強度を重視していました。国内の動きだけを見ていたら、いわば強度と相反するセメント量を減らすという着想は生まれなかったでしょう。国際コンペに参加して、世界の気候変動に対する危機感、CO2削減技術の注目度の高さといったものに直接触れたからこそ、先進的な研究開発に着手し、かつ継続することができたのだと思います。

開発に成功したものの、工事現場で適用されるまでにはいくつかのハードルがありました。例えば、きちんと対応できる生コン工場さんを見つけること。従来のコンクリートと使用材料や配合が異なるので、まず、私たちが提供する試験練り計画書に則して試し練りをしてもらい、出荷できることを確認する必要がある。また実際に出荷するには、通常はセメントが入っているサイロに高炉スラグ微粉末を入れてもらわなければならない。要するに、生コン工場さんにとっては余計な作業が増えるわけです。

こうしたハードルを乗り越えるには、大林組の調達、生産技術、品質管理の各部門との連携が不可欠です。連携なしには発注者や設計者に説明できないし、コンクリートの供給体制を築けないし、施工現場を支援することもできません。大林組ならではの垣根のないチームワークもあって、最近はこちらが提案しなくても、お客さまの方から「クリーンクリートを使いたい」とお問い合わせいただくケースが増えています。

先頭ランナーは
ガラパゴス化してはいけない

建設業界では今、いかにCO2を減らしていくかという競争が始まっています。コンクリートで言えば、海外に比べ、まだセメントの比率が高く、低炭素の高炉スラグ微粉末などの多量利用は、まさに各社が現在進行形で取り組んでいるところと言えます。その意味でも、先頭を走っているクリーンクリートはガラパゴス化しないように研究開発を進めていかなければいけない。直近で開発した、より低炭素の「クリーンクリートN™」は、そうしたトライの一環と言えます。

ストーリー ストーリー

コンクリートに求められるものは社会の動きによって変わってきます。それに技術者は応えていかないといけないでしょう。例えば、私たちは石や砂などの天然骨材を、解体したコンクリートの塊から取り出した再生骨材に置き換える研究開発にも取り組んでいます。もちろん、コストや供給体制などを十分考慮して、最終的に誰でも使えるような形にまで持っていかないと意味がありません。つまり、クリーンクリートNにしても再生骨材にしても、さらに汎用的な技術にしていく必要があり、改良の余地がまだあるわけです。

開発中は技術研究所の練り混ぜ試験室にこもって、さまざまな材料を計量して数十ℓのミキサーに入れて練って固めて、強度や耐久性などをチェックするといった試験を何十回も繰り返します。これからもそんな日々が続くでしょうが、カーボンニュートラルが実現するその日まで、クリーンクリートの改良・普及を着実に進めていきたいと思っています。

Project Development


オープンラボ2「練り混ぜ試験室」

プロジェクトデベロップメント プロジェクトデベロップメント

クリーンクリートの開発においてオープンラボ2の「練り混ぜ試験室」を活用。コンクリートの固まる前の状態から固まった後の状態まで、その粘度や強度を度重なる試験を通じて研究しました。また、オープンラボ2には、さまざまな環境要因に対するコンクリートの耐久性を試験する「耐久性試験室」や実物大コンクリート部材の施工試験が行える「コンクリート実験スペース」など、コンクリート開発に向けた設備が充実しています。

公正な研究活動について

大林組技術研究所では、
公正な研究活動を推進しております。
研究活動における不正行為等、
お気づきの点がございましたら、
以下の連絡先までご連絡ください。

  • 大林組技術研究所企画管理部
  • 〒204-8558 東京都清瀬市下清戸4-640
  • 電話番号:042-495-1111
  • FAX番号:042-495-0901
  • メールアドレス:tri_kousei_kenkyu@ml.obayashi.co.jp