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東日本大震災 復旧・復興から新たなまちづくりへ

大林組は、災害復旧を建設会社の社会的使命の一つととらえ、
災害時のインフラの復旧や復興支援に力を注いでいる。

「平成23年(2011年)東北地方太平洋沖地震」では、
大きな揺れと巨大な津波が2,000万tを超える
膨大で多種のがれきを発生させ、
福島第一原子力発電所の深刻な事故を引き起こし、
いくつもの「まち」を破壊した。

当社は地震発生直後から人員や物資などの調達力を発揮し、
公共インフラの迅速な復旧に努めるとともに、
被災地域の人々の生活を取り戻すために建設会社として総力を尽くした。

災害廃棄物処理
(がれき処理)

宮城県亘理町では、津波が内陸4kmの地点まで押し寄せ、126万tに上る災害廃棄物が発生した。これは、亘理町の一般廃棄物量の約112年分に相当する量であった。大林組JVは、一次仮置場から二次仮置場に運搬された災害廃棄物を、選別・破砕・焼却処理する災害廃棄物処理業務を担当した。
まず、二次仮置場に焼却炉5基のほか、廃棄物の破砕、篩(ふるい)分け、選別施設を設けた中間処理施設を建設。次に、集積・搬入される廃棄物を破砕し、機械と人の手により分別して可燃物を焼却、二次仮置場に搬入されたすべての災害廃棄物の処理が完了したのち、施設を解体する。
2012(平成24)年4月には、宮城県内の災害廃棄物処理業務で初となる焼却炉の本格運転を開始し、全工程を2013 年度中に終えた。

なお、当社はこの事業でコンクリートや泥はもとより、通常は埋め立て処分となる焼却灰も再生してリサイクル率を向上させ、廃棄物や堆積物を資源として復興事業の地盤づくりに利用した。
焼却する際に発生するばい塵の連続監視や焼却灰に含まれる放射性物質の測定などを、法令に定められた基準以上の項目・頻度で行い、安全性を確認した。また、地元の農協や漁協、商工会と連携して資材調達を行い、施設での分別にあたる作業などの要員として1日当たり200人以上の地元雇用を行うなど、地域経済への貢献にも努めた。

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除染工事
(モデル実証事業)

福島第一原子力発電所から20km圏内の警戒区域や計画的避難区域12市町村において、独立行政法人日本原子力研究開発機構が2011(平成23)年度に内閣府から委託を受けて実施した除染モデル実証事業のうち、大林組JVは福島県大熊町、楢葉町、川内村、広野町の4町村を担当した。
この実証事業の目的は、のちに始まる本格除染に向けた効果的な除染方法の検証、除染効果の確認、除染で発生する除去物を貯蔵する仮置場の建設、高放射線量下での作業の安全性の確立などであった。

除染対象は、森林や農地のほか、宅地、大型建物、道路など、合計およそ123haにも上った。まず、除染する場所で事前モニタリングを行い、その結果をもとに最適な除染方法を検討。具体的には、人力による草や木の刈り取り、重機を使った表土の剥ぎ取り、高圧洗浄機による洗浄、建物の屋根や窓枠のふき取りなどを実施し、これらの作業ののち、再度モニタリングを行って放射線量がどの程度低下したかを測定し、効果を検証した。

また、これと並行して除染作業で発生した除去物を搬入する仮置場を建設し、除去物の搬入・仮置き、モニタリングを行った。
作業地域が警戒区域や計画的避難区域内にあって多くの制約があるなか、短期間で最大限の成果を得るため、当社は、人と技術力を結集し、本格除染に向けた第一歩となるこの事業に取り組んだ。

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除染工事

内閣府が実施した除染のモデル実証事業を受けて、2012(平成24)年から、帰還困難区域を含む12市町村を直轄地域として環境省による除染が実施された。その他の地域は福島県以外の地域も含め、各市町村が除染を実施することとなった。
当社は、直轄区域においては川内村、大熊町、富岡町を担当。福島県の各市町村においては郡山市、伊達市、福島市を担当し、福島県以外では柏市、一関市等で除染や除染前放射線計測を実施した。

除染箇所は、住宅、建屋構造物、道路、公園、農地、果樹園、近接部森林等に及び、避難解除準備区域を中心に住民が避難先から帰還し復興に向かえることを第一に、住民からの要望を十分に反映した工事を行った。

先行するモデル実証事業があったとはいえ、発注する環境省も、また当社も除染工事は初めてであったため、さまざまな技術開発を行うとともに、海外からも技術を導入した。また作業員や使用する工事車輌、設備が膨大な規模となるため、日本全国から協力や支援を得た。

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中間貯蔵・減容化
・再生利用

除染工事により剥ぎ取った除去土壌はいったん仮置場に集積したのち、国道6号より東側の大熊町、双葉町に跨り確保された約1,600haの「中間貯蔵用地」に持ち込まれた。当社は、約1,400万m3の想定貯蔵量のうち400万m3超について、仮置場から中間貯蔵用地までの輸送、除去土壌の受け入れ・分別処理および土壌の埋め立てによる土壌貯蔵の一連の工事を担当した。

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このような中間貯蔵における土壌の受け入れ・分別処理は、世界でも先例のない事業であったため、全体システムの構築から個々の装置設備の概念・設計・実証と、発想段階から実装まで、一から準備。フレコンバッグを効率的に破る破袋機、ダンプアップ荷下ろしなど、独自の設備を開発して実装した。

中間貯蔵用地には除去土壌以外にも放射線高濃度の可燃物を焼却した焼却灰も持ち込まれる。貯蔵期間は30年で、その後は福島県外にて最終処分のため搬出しなければならない。また除去土壌と焼却灰を合わせた総量を減らすための減容化と再生利用も求められ、国の重要な事業とされている。
当社は焼却、溶融技術のトップランナーである日鉄エンジニアリング株式会社、クボタ環境サービス株式会社と共同で双葉町に大型の焼却溶融炉を設置し、運用の支援を行っている。また除去土壌の再生利用事業でも、実証事業内で開発した技術で計測した濃度の低い除去土壌を農地盛土の基礎部に用いて農地を再生する工事を飯舘村で実施している。

当社は、雇用や調達も含め地元の安全と復興を第一に考え、これらの事業に臨んでいる。

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復興まちづくり

防潮堤の後背地など、住民の居住に適当でない区域内の住居を集団で移転させる「防災集団移転促進事業」では、移転先の土地となる山を切土して整地する。次に、道路、公園、河川などの公共施設を整備して、土地の区画を整える「土地区画整理事業」では、被災前と同じ場所で地盤を嵩上げ(盛り土)することにより、コミュニティを維持しながら市街地を整備する。最後は、病院や学校等の公共施設や災害時の避難・復旧の拠点を整備する「津波復興拠点整備事業」を行う。

これら三つの事業に基づいたまちづくりに関して、東日本大震災の被災市町村は、独立行政法人都市再生機構(UR)と「パートナーシップ協定」を締結し、各地で新たなまちづくりを進めた。

大林組JVは、2013(平成25)年4月に、岩手県の沿岸中部に位置し、津波によって市街地が壊滅的な被害に遭った山田町の復興まちづくりを、コンストラクション・マネジメント(CM)方式で、URから受託。URが個々の事業地区の総合調整を行い、コンストラクション・マネージャーである当社が必要な調査や測量を含めた詳細設計および施工を担当した。さらに当社は未来へと続く山田町の原風景を建物のコンセプトとし、新しい住まいを必要としている住民のための集合住宅を計画。2016年9月に「山田町山田中央団地」が完成した。

このプロジェクトは大規模造成現場にICT測量を導入し、3次元モデルを活用して住民との合意形成を図るなど、ICTを先駆的、積極的に活用して生産性と品質を向上させたことが評価され、「2019年度エンジニアリング功労者賞」を受賞した。

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公共インフラの復旧
(道路・トンネル・河川)

大きな被害を受けた三陸海岸の沿岸部の復興の象徴となるべく、三陸沿岸道路(三陸縦貫自動車道、三陸北縦貫道路、八戸・久慈自動車道)が「復興道路」として、また宮古盛岡横断道路(宮古~盛岡)、東北横断自動車道釜石秋田線(釜石~花巻)、東北中央自動車道(相馬~福島)が「復興支援道路」として事業化された。
当社はこのうち「復興道路」となる国道45号吉浜釜石道路工事(トンネル3本と高架橋2橋を構築する3km区間)と「復興支援道路」となる国道283号釜石道路工事(トンネル1本と橋梁下部工14基、上部工1橋)の施工を担当(2017年10月竣工)。
内外のさまざまな技術を用いて早期開通と開通後のメンテナンスを減らすための耐久性の確保に努め、地域の産業と経済の活性化に寄与した。

水道施設が立地するライフラインでもある宮城県石巻市の北上川水系皿貝川では、広域的に堤防の沈下等が生じたため、両岸10kmにわたる復旧工事を実施した(2017年9月完了)。

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東北
災害廃棄物処理(がれき処理)
除染工事(モデル実証事業)
除染工事
中間貯蔵・減容化・再生利用
復興まちづくり
公共インフラの復旧(道路・トンネル・河川)
公共インフラの復旧(道路・トンネル・河川)
高速道路
  1. 災害廃棄物処理
    (がれき処理)
  2. 除染工事
    (モデル実証事業)
  3. 除染工事
  4. 中間貯蔵・減容化・再生利用
  5. 復興まちづくり
  6. 公共インフラの復旧
    (道路・トンネル・河川)

当社の復旧・復興支援は、震災発生後のがれき処理から、
放射能汚染地域の除染・減容化、復興まちづくりに至るまでの各段階で、
東北地方全域にわたって行われ、いまも進行中である。