品質・環境への取り組み

全店全部門でISO9000シリーズ認証取得

1990年代、グローバル化の進展などから、品質マネジメントシステム(QMS)の国際規格ISO9001を取得する企業が増加し、建設業も1990年代半ばから認証取得の動きが始まった。

当社建築部門では、1985(昭和60)年に建築工事における品質保証(QA:Quality Assurance)の体制を構築、QA計画書策定などを推進して、ISO9001取得の土台は整っていた。1990(平成2)年7月には品質保証室を設置、さらにシンガポール(1995年12月、ISO9002)やオーストラリア(1996年1月)では、同認証を先行取得した。こうした実績を背景に、1996年11月の東京本社建築部門を皮切りとして、1998年3月には全支店建築部門が認証取得を完了した。取得後しばらくは、過度な文書化や、日付・押印などの形式偏重といった弊害も発生したが、2000年の同規格改正では、規格の位置づけが、それまでの「製品品質を保証するための規格」から「品質保証を含む顧客満足の向上を目指すための規格」へと変化した。これにより、顧客重視、継続的改善が重要視されるようになり、当社建築部門のQMSは、顧客の要求に適合し顧客が満足する建物を提供するための実質的で有効なシステムに改善されていった。2005年8月には、支店ごとの認証から国内全店一括認証取得に変更し、各店単位で運用されていたQMSを全店統合し、QMS最高責任者(建築本部長)のもとに運用と改善を継続している。品質保証室は、品質の不具合発生を未然に防止し品質を確保するため、技術標準類を整備、品質不具合予防フィードバックシートを作成して、イントラネット掲載、社内研修会、eラーニングを通じて全店展開を図っている。

土木部門も、1985年4月に品質保証業務実施基準を策定しており、1996年には同基準をISO9001に準拠して改訂、1997年9月に国内全店で認証を一括取得し、全社的なQMSが整った。

ISO14001の認証取得とゼロエミッションへの取り組み

受注確保や採算性向上、コスト削減に強力に取り組んだ1990年代後半においても、地球環境保護への対応は経営方針の柱の一つとして継続して推進された。環境問題への対応は、企業が社会的責任を果たすうえで必須条件となっており、特に海外展開では不可欠となりつつあった。同時にコストが優先されがちとなった国内市場でも、高い技術力や企業姿勢をアピールできる分野であった。

1997(平成9)年2月、東京本社に環境マネジメント室を設置して、活動は本格化した。同室は、1996年に制定された国際的な環境マネジメントシステム規格(ISO14001)の認証取得に向けて設けられ、エンジニアリング本部地球環境部で行っていた環境問題対応も引き継いだ。続いて1997年4月には、社長を委員長とする環境委員会を設置(環境保全推進委員会を廃止)、同年11月には「大林組環境方針」を制定して、基本理念と基本方針、さらに環境マネジメントシステムの構築・運用を内外に表明した。ISO14001の認証取得は、東京本社(1998年9月)をスタートとし、1999年3月の北陸支店をもって全店全組織の取得が完了した。その後、2005年4月には支店ごとの認証から国内全店一括認証取得に変更した。

1999年4月、工事現場のゼロエミッションへの取り組みを、建設業界で初めて、開始した。当時、日本の産業廃棄物および最終処分(埋立処分)量のそれぞれ約2割を建設業が占めており、当社は率先して排出量削減に積極的に取り組んだ。具体的方策としては、発生抑制については部材のユニット化や工場生産化、仮設材の再利用、梱包材の削減、分別面については発生時・清掃時・フロアチェック時といった段階別の分別徹底、再資源化については材料別の再生ルート確立などを進めた。この結果、当社の建設廃棄物の最終処分(埋立処分)率は、1995年の36.2%から2000年には13.6%となった。(2010年の最終処分率は2.1%である。)実施にあたっては、全国各地にゼロエミッションモデル現場を選定した。このうち2002年竣工の丸の内ビルディング電通本社ビルにおいて業界初のゼロエミッションを達成し、後者は、2001年度3R推進功労者等表彰「国土交通大臣賞」を受賞し、2003年度には同賞の最高位にあたる「内閣総理大臣賞」を受賞した。

この間、1999年9月に「二酸化炭素排出量削減」を環境の重点課題として設定し、2000年4月には「建設廃棄物対策」、「グリーン調達」、「有害化学物質」を追加した。CO2排出量削減については、1999年12月に大型ダンプトラックを対象とした省燃費運転研修会を日本で初めて実施、徐々に車種を広げていった。

1999年10月発行の「環境アニュアルレポート1999」(1992年から作成してきた「環境保全活動報告書」を改編)において、業界初となる環境会計を導入し、環境保全コストなどを公表して、より効果的・効率的に環境保全を進めることをめざした。

大林組環境方針
大林組環境方針