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  • カレッタ汐留エントランス

解説

ブーメラン形状が特徴的な、汐留シオサイトのランドマーク

電通の新本社ビルは、旧国鉄汐留貨物駅跡地の再開発で誕生した「汐留シオサイト」の先陣を切って建設された。「地球環境との共生・省エネルギー」をコンセプトに、100年以上の長寿命化をめざした超高層オフィス棟を中核とし、商業施設と劇団四季の劇場などからなる「カレッタ汐留」、電通ホールと地下に地域冷暖房システムを持つ「汐留アネックスビル」から構成されている。

設計は当社が担当し、ジャン・ヌーヴェル氏とジョン・ジャーディ氏をデザインパートナーに迎えた。岩のように堅固な大地に透明感あふれるクリスタルがそびえる、「クリスタル・アンド・ロック」をコンセプトとして設計されている。オフィス棟は、他に類を見ないブーメラン形の平面形状を持ち、見る位置によってさまざまにその姿を変え、外装は純白からダークグレーに変化するセラミックプリントガラスで覆われている。カレッタ汐留は壁面や床に花崗岩が多用され、都市の中で、自然と時の流れを体験できる空間として構成されている。

非対称かつブーメラン形状の超高層オフィス棟には、構造的にさまざまな技術が採用されている。地震の外力に対する安全性を確保するために、544台ものPYOダンパーが各階に、メガブレースと曲げダンパーが10フロアごとに設置され、屋上2ヵ所の220tハイブリッド制振装置AVICS-2が風による揺れを低減し居住性を確保している。

設備には、当社が開発したビル統合管理システム「FRiGATE」を採用し、外装に用いられた二重構造ガラスの間に空気を循環させるエアフローシステムで、省エネと快適性を実現している。

施工においては、地下鉄大江戸線汐留駅、新交通ゆりかもめ、首都高速道路などに近接しているため、周辺に及ぼす影響を最小限に抑えることが重要な課題であった。一部の山留め壁にはH形鋼を挿入したOWS-SRC壁を採用し、不整形な敷地に不整形な建物を建てるため、逆打ち工法とした。掘削工事に伴う地盤の変状予測、計測工に関する施工技術を積極的に導入し、周辺街区で始まった掘削工事による影響も広範囲にわたり、それが工事の進捗とともに変化するため、各要素の自動計測システムによる常時監視を行い、変化を予測しながら施工を進めた。またブーメラン形状の建物の施工は、CAD技術の発展なしには実現しなかった。

当社のゼロエミッション活動のモデル現場にも指定され、協力会社と協議して、リサイクル体制づくりを進めたほか、職長会にも専門委員会を設け、作業員への指導を徹底して廃棄物削減に取り組んだ。その結果、リサイクル推進協議会から2001年度リサイクル推進功労者賞(国土交通大臣賞)を受賞した。

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