❶ 大井地区トンネルとURUP工法

トンネルができるまで

プロジェクトへの挑戦

初めてのURUP工法適用現場ということで、社内や同業者の注目はもちろん、マスコミにも取り上げられるなど、大井地区トンネル工事は大きな関心を集めましたが、何かプレッシャーはありましたか?

(役職:当時)

地上発進、地上到達という、今までのシールド工事の常識を超える工事であったということは、僕を含めてみんな感じていたと思います。初めてのことをやるというときにわからないこと、想定できないことがいっぱいあって、本当に到達するのだろうかという不安、プレッシャーをかかえてやっていました。

田代良守 所長
田代所長 

大林組としても、これから売っていきたい技術なので、失敗はできないと感じていました。地表面の変状や浮上りなどに対する策は講じていましたが、安心はできないと、常に不安がつきまとっていました。シールド機が発進して、法面を削るまでドキドキしていましたが、想定よりは地山にうまく入ってくれたので、ほっとしました。

中野孝二 工事長
中野工事長

実際にシールド機が発進してからはどうでしたか? 何か不安だったことはありましたか?

地上発進時の土層は埋土層で、40年くらい前に埋め戻したもののようなので、何が埋まっているかわからなかったんです。コンクリートガラや金属片、木片などいろいろなものが掘削土に混ざって出てきました。

田代所長 

シールド機が地山に入っていくにつれて、通常はセグメントと地山の付着により推進反力が確保され、反力設備に伝達される掘進時の推力は減ってきます。それが今回はなかなか低減しませんでした。1リング掘るたびに切羽圧が上がり、増える推力に対し反力設備がもつかどうか、いつまでこの推力の伝達は続いていくのだろうとヒヤヒヤしていました。

中野工事長

土被り4mくらいでシールド機が安定するようになったときは少しほっとしましたが、今後何があるかわからないという不安もありました。

後藤義宜 主任
後藤主任

実証実験工事では幅4.8m高さ2.15mの矩形シールドでしたが、今回は日本最大級の円形シールドということで、何か違いはありましたか?

実証実験工事では、URUPというものを売り込むために、(シールド機に)いろんな装置を付けましたが、側部カッターも分割掘進も必要ないということを実証実験工事で確認していました。そのため、今回はシールド機自体に特別な装置は付けませんでしたが、それに対する不自由さは感じませんでした。実証実験工事に携わっていた立場としては、(地上発進時に)掘削した土砂や地山に注入した添加材が側部から出てくるなどの現象は、実証実験工事の知見として把握しておりましたが、(断面が大きいため)想定を超える規模でその現象は起こりました。

井澤昌佳 工事長
井澤工事長

シールド機が盛土から顔を出して、地上到達したときの心境はどうでしたか?地上発進のときと違いはありましたか?

地上発進に比べると、地上到達のほうがストレスなくできました。地上到達に関しては、ある日突然出てくるわけではなくて、徐々に土被りが浅くなってきて、今日も進んだな、変な挙動もなかったなと一日一日を重ねていっている感じでした。上を歩いていると、「ガリガリガリガリ」と土砂を削っている音がしました。ええ音だな、と思いました。トンネルを掘っている、その上に立てることは感動しました。

中野工事長

到達は率直に嬉しかったです。やっぱり、地上発進は後ろ(のトンネル)が不安定なだけに(制御が)非常に難しかったですが、地上到達は後ろがトンネルで繋がっていて固っているので、シールド機の姿勢やセグメントの線形は地上発進に比べると制御しやすく、安心感はありました。しかし、土圧の管理は地上到達のほうが難しいと感じました。

井澤工事長

毎日、優勝のカウントダウンみたいな気持ちで、残り何リングとか考えて、ちょっと楽しみでした。もうちょい、もうちょいと言って、やっていました。ついに残りあと数個しかないとなると感慨深かったです。

後藤主任

プロジェクトを通じて、一番心に残っていること、印象深い出来事などがあれば教えてください。

東京電力の洞道を通過したことです。あれはしびれました。東京電力の洞道を行きは下をくぐって、帰りは30cm離れで上越ししました。特に、帰りは東日本大震災後で、計画停電も行われており、万が一洞道にぶつけるようなことがあれば、東京の1/3をまかなっている電気が止まるということで、これは相当なプレッシャーでした。洞道にぶつかったら、東京電力もうちの会社もどうなるんだろうと不安でした。通過時の行き帰りの3日間は施工中で一番のプレッシャーでした。

田代所長 

最後に、URUP工法のさらなる発展性についてお聞かせください。

道路トンネルや鉄道トンネルは必ず地上との接点があるので、URUP工法というのは、やっぱり鉄道とか道路には、開削をなくしてやれますという点で、今後も発展していく技術だと思います。そして、大井地区トンネル工事で地上発進、地上到達したという実績があるということは、今後、大きなアピールポイントになると思います。

田代所長 
(以上)
プロジェクト担当者。地上に設置されたシールド機の前で。
プロジェクト担当者。地上に設置されたシールド機の前で。