第3章
2017 2021
ESG経営と技術革新――持続可能な未来を拓く
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「ものづくり」の次へ

創業130年を迎えた大林組

2021(令和3)年1月、大林組は創業130年を迎えた。1892(明治25)年1月25日、土木建築請負業「大林店」として大阪の地で誕生した当社は、大正、昭和、平成、そして令和へと時代が変わっても、顧客や社会のニーズに真摯に向き合い培ってきた誠実な「ものづくり」の精神を、脈々と受け継いできた。

当社は創業130年記念行事として、10月26日に「神前祭」を大阪市の生國魂神社、10月27日に仏前祭・墓前祭を神戸市の柏葉倶楽部と御影霊園(大林家墓所)で実施した。また、2021年の行事に先駆けて2021年版カレンダーを「History of 130 Years」として制作。130年史(WEB)や記念写真集、全職員に配布する錫製タンブラーなどの記念品も制作したほか、コロナ禍を考慮した完全オンライン展示会として「OBAYASHI LIVE SHOWCASE 2021」を10月に開催した。

さらに記念事業として、創業130年記念事業委員会の下にオフィス改革ワーキンググループを設置し、品川事務所でオフィス改革を実施した。

品川事務所は、1999年に神田から移転して20年が経過し、什器や情報通信設備等の老朽化が進んでいた。加えて、品川事務所に勤務する職員数が増えたことから保管書類が増大し執務机やキャビネットに要する面積が増え、執務スペースさえ不足していた。そこで、働き方改革と生産性向上のため、オフィスの設備・レイアウトを一新。デスク配置を見直し「コミュニケーション活性化」のための共有スペースを設けたほか、書類の「ペーパーストックレス」化、快適性、利便性、安全性および省エネ性に優れ環境にも配慮した「スマートオフィス」を実現し、2022年3月までにレイアウト変更など全工程を終える予定である。

ブランドビジョンの制定

2020(令和2)年10月、当社は「MAKE BEYOND つくるを拓く」という大林グループのブランドビジョンを策定、2021年1月、社外に公表した。

当社はかねてゼネコンの枠にとらわれない成長に向けて事業領域の深化・拡大、グローバル化を進めてきた。しかし一方で、社外から見た当社のイメージは、いまだ「旧来のままの土木建築業」にとどまり、企業の成長に欠かせないオープンイノベーションや新たな人材確保が進みにくい状況になっていることが課題となっていた。そこで社外からの理解と共感、未来に対しての期待を得ることを目的に、大林グループがめざす方向性を顧客や社会に約束するブランドビジョン「MAKE BEYOND つくるを拓く」を策定したのである。

このビジョンは、創業以来、一貫して社会の要請に応え、その発展に貢献してきた大林グループの存在意義を再確認し、「ものづくり」を通じて、新しい地平を拓いていくとの意思を表明するものであった。

「企業変革プログラム」の策定

創業130年に先立つ2020(令和2)年10月、当社は「企業変革プログラム」を策定した。5年を計画期間とする「中期経営計画 2017」に沿って、2018年度には過去最高益を更新するなど順調に業績を伸ばしていた。

しかし、2020年度には一転して営業利益が大幅に滅少。新型コロナウイルス感染症の拡大は、社会や経済のみならず、個々人の働き方や生活のあり方にも多大な影響を及ぼし、景気悪化の長期化も予想されるなか、今後の業績への影響が懸念された。

2021年度に「中期経営計画2017」が最終年度を迎えるにあたり、その進捗を顧みると生産性向上、開発技術の水平展開、事業領域の拡大などの取り組みは道半ばであり、安全・品質についても未だ同様の事故やトラブルが繰り返されるなど、これら経営課題への取り組みを一層加速させる必要があった。加えて、コロナ禍が引き起こす社会・経済の変容やDXの進展などがもたらす事業環境の変化への迅速な対応も急務であった。

こうした状況を踏まえ、特に重点的かつ横断的に取り組む経営課題への対応指針を「企業変革プログラム」として定め、直ちに取り組むこととしたのである。

 「企業変革プログラム」では、四つの最優先課題、①安全品質管理の再徹底、②稼ぐ力の強化とキャッシュフローの改善、③改正労働基準法対応、④サプライチェーンとの新たな共創関係の構築に注力するとともに、次の成長フェーズでの飛躍を支える人財・組織、業務プロセス、デジタル、技術の各経営基盤の変革に取り組むこととした。

 大林グループの挑戦

新型コロナウイルスとの共生、気候変動への対応、デジタル変革など、事業環境は大きく変わった。大林グループにとって、「不確実性の時代」となる次の10年は、社会的使命を問われる時代といえる。

当社が、幾多の困難を乗り越え、130年の永きにわたって存続できたのは、先人たちが、こうした社会や事業環境の変化を的確にとらえ、社会と顧客の期待に応えてきたことによるものだ。われわれはこの大林グループの誇りを胸に、この危機を機会ととらえ、まずは企業変革プログラムによって、着実に、不断の変革を実践する。

将来を見据え、足元の課題を一つひとつ達成していくこともブランドビジョン「つくるを拓く」のアプローチの一つである。

大林グループは、ブランドビジョンと企業変革プログラムを羅針盤と推進力として位置づけ、「目指す将来像」の実現に向けて、「『ものづくり』の次」をめざしていく。