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解説

当社の建設技術の粋を集めて、634mという未知の高さに挑む

東京スカイツリーⓇは、地上デジタルテレビ放送の送信塔として計画され、634mという自立式電波塔としては世界一の高さを誇る。「時空を超えたランドスケープの創出」をコンセプトとし、足元は一辺が約68mの正三角形で、各頂点から別々に上部へ伸びた脚は、地上50mの高さで一つにつながる構造である。上部へ行くに従い、平断面は三角形から円形へ変容し、立面に「そり」と「むくり」という独特の形状と変化を生み出すデザインとなっている。電波塔としての機能のほかに、高さ350mと450mの場所に展望施設が設けられている。

2008年7月、本工事に着工し、東京スカイツリーを支えるナックル・ウォール杭工事をスタートさせた。着工に先立ち、現地で実物大の壁杭を構築し、予想される引抜き・押込み抵抗を想定した載荷試験を実施している。工事敷地は東武鉄道伊勢崎線と都営地下鉄浅草線に隣接し、車両動線が南側にしかない状況であり、敷地の有効活用なしにタワー塔体鉄骨の構築は不可能であった。そこで低層棟を逆打ち工法により1階床を構築し作業床を確保しながら、地盤面から深さ10mに及ぶタワー足元部分を順打工法で進める「ハイブリッド地下工法」を採用した。同時に低層階の工事を進めて4階床を構築し、1階を車両通路と地下逆打ちヤード、低層棟4階をタワー塔体鉄骨の作業ヤードとする「重層ヤード」とした。

厳しい工期の中で、誰も経験したことのない高さ300mを超える環境での鉄骨建て方と接合部の溶接品質を確保することが重要な課題であった。そこで塔体鉄骨を地上350mの天望デッキ(第1展望台)まで構築した時点で、高さ495mまでの鉄骨建て方作業と並行して、タワー中心部の空洞部の地上レベルにおいて、ゲイン塔の鉄骨建て方を行った。塔の最上部から順次組み立てては吊り上げ、下部を継ぎ足すことを繰り返し、すべてを組み立てた後、リフトアップ工法により最終高さまで吊り上げた。通常であれば495mより上部で行うゲイン塔鉄骨建て方および溶接作業を、6ヵ月も前倒しでシャフト内の地上部で行うことで、工期短縮と品質確保に成功した。

2011年3月11日、ゲイン塔のリフトアップ作業の最終段階となる高さ625m付近で引き上げを行っていたところ、東日本大震災が発生した。大きな揺れに見舞われたものの、幸い作業員に一人のけがもなく、東京スカイツリーの耐震性能が実証される結果となった。1週間後の3月18日、ゲイン塔の最上部が高さ634mに到達した。

ゲイン塔の鉄骨組立完了後、直径8m、高さ375mの筒状のコンクリート構造物である心柱をスリップフォーム工法で構築した。

東京スカイツリーの建設は、塔体が伸びていくにつれて、メディアだけでなく一般の関心も高まっていった。当社では専用ウェブサイトを通じて、タワーの建設方法や進捗状況を詳細に紹介し、現場見学会も実施した。これだけの注目を集めたことは現場には大きなプレッシャーであったが、逆に作業員一人ひとりの士気を高めることになった。

東京スカイツリーは、当社の持つ技術の集大成であり、創業120年という節目の年にふさわしい成果となった。

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