第1章
2011 2014
収益基盤の多様化とグループ経営の推進
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ワークライフバランス支援と技術の伝承

ワークライフバランスに向けた取り組み

当社は「社員一人ひとりが、個性と能力を活かして、安全・安心に働くことのできる職場環境をつくる」という基本理念のもと、ワークライフバランスの推進に取り組んでいる。

建設業界では、建設現場における総労働時間の縮減が課題となっており、休暇取得の促進と時間外労働の縮減を図った。大型連休などの長期休暇の前には、全部門に対して計画的な休暇取得を促したほか、転勤時休暇の導入、半日年休の取得対象の工事事務所限定から全社員への拡充などを実施した。さらに時間外労働の縮減のため毎月第3水曜日をノー残業デーと定め、定時退社を呼びかけた。

社員の健康管理の取り組みも強化した。全社員を対象とした定期健康診断や希望者への消化器検診に加え、2011(平成23)年4月に人間ドックの補助金給付対象に配偶者を含めるなど、社員とその家族も含めた健康づくりを推進。2002年には大林組共済会において国内・海外を問わず社員とその家族が、健康に関するあらゆる相談を24時間365日相談できる窓口を設置した。またメンタルヘルスにも力を入れており、社員の理解を深めるための研修を毎年度実施し、メンタルヘルスカウンセリングサービスも設置している。

また、当社は「次世代育成支援対策推進法」の趣旨に基づき、2005年から独自の行動計画を策定し、子育て期の多様な働き方を継続的に支援しているが、2011年度に策定した「第四次行動計画」(201110月~20153月)では、育児休暇の取得目標を「計画期間内に男性従業員の最低1人以上、女性従業員の取得率90%以上」とし、社内制度に関する情報提供を積極的に行うなど制度を利用しやすい職場環境を整備した。なお、こうした取り組みが評価され、201110月に厚生労働省から子育てサポート企業として認定を受け、次世代認定マーク「くるみんマーク」を取得した。翌20124月には、育児休職制度をそれまでの16カ月から2歳までに延長するなど、さらなる制度拡充を図った。

介護関連制度については、介護補助金制度を設け、社員およびその家族が利用した居宅介護サービスに対する補助金の給付を実施した。介護支援情報の提供や介護セミナーの開催、相談窓口の設置などさまざまなサービスの提供も開始した。

さらに労働協議会や衛生委員会など、労使による定期的な協議会で、働きやすい職場環境の整備や健康管理の推進など、ワークライフバランスに関する幅広いテーマについて話し合っている。

20134月には、20184月施行の労働契約法改正に先んじて、勤続5年以上の期間職員を自宅から通勤可能な地域を勤務地とする「エリア職員」として無期雇用採用する制度を導入した。

技術の伝承と人材確保の取り組み

建設業界では、就業者の高齢化や若年入職者の減少に加え、東日本大震災の復興需要への対応や、2020(令和2)年の東京2020オリンピック・パラリンピック開催に向けた都市整備事業等の増加により、建設技能者の人材不足が喫緊の課題となっていた。当社はこうした状況に対処するため、建設技能者の人材確保と育成に取り組んだ。

その一つが「大林組認定基幹職長(スーパー職長)制度」の導入である。建設技能者を束ねる職長の中から優秀者をスーパー職長に認定し、一定額の手当を上積みして支給する。初年度の2011(平成23)年度には5職種75人がスーパー職長に認定され、2014年度には対象職種を拡大し25職種194人へと増加した。

2011年度スーパー職長認定式
2011年度スーパー職長認定式

また、20144月には当社と大林組林友会連合会により埼玉県八潮市に「大林組林友会教育訓練校」が開設された。「林友会加盟各社の幹部候補生とスーパー職長候補となる人材の育成」および「若手技能労働者への技能伝承の支援」を目的とし、入社25年目程度の若手技能労働者を対象に、当初はとび工・鉄筋工・型枠大工の3コースを開講。それぞれ2カ月間にわたり大林組の現場作業を前提とした施工管理・安全管理、CADを用いた作図、作成した計画に基づく施工などを学ぶほか、技能検定対策や資格取得(技能講習)に向けた学習も行っている。開校時の20144月にとび工コース、同年9月に鉄筋工コース、20151月には型枠工コースが開始され、以後、継続的に対象コースや訓練生枠の拡大など内容の充実を図っている。なお、同校は、人材育成の画期的な試みとして高く評価され、20154月に東京都からゼネコンで初めて厚生労働省の制度(キャリア形成促進助成金等)を活用した職業教育訓練を実施する広域団体に指定された。

大林組林友会教育訓練校
大林組林友会教育訓練校
大林組林友会教育訓練校

一方、2014年度からは、技術系職員を対象とした三つの新たな研修をスタートさせ、技術の伝承に取り組んだ。一つ目が、富士教育訓練センターで行う「新入社員研修(建築職)」で、1週間合宿して鉄筋・型枠の組み立てや測量、墨出し、材料検査などものづくりの原点である建設現場における施工体験型の研修を行う。二つ目が「若手・中堅社員研修(建築職)」で、当社の大阪機械工場(現 西日本ロボティクスセンター)に併設する模擬建設現場でものづくり研修を行う。そこでは、鉄筋工事の不具合を見抜く訓練などを通して、施工管理能力の向上とともに中堅から若手社員への技術の伝承も図っている。三つ目が「新任所長研修」で、ベテラン工事長や若手所長を対象とした新任所長研修を行った。

「大林組林友会」との協業

全国の調達先で組織する「大林組林友会」には、さまざまな工種の企業約1,100社が加盟している。同会は、1906(明治39)年に創業者・大林芳五郎の専属下請名義人の組織として大阪で発足し、その後、地域ごとの連合会に発展した。まもなく結成から120年を迎える歴史ある組織だ。

林友会発足当時の主な役割は作業員の手配だったが、いまは、会員各社の採用活動の支援や工事の省力化、短工期化にも力を入れ、当社への業務改善の提案なども行っている。これらの成果に対し、当社は協力会社を対象とし、2016(平成28)年に建築では「省力化・短工期化技術表彰」、2017年に土木では「協力会社業務改善表彰」の制度を新設。今後も当社は、事業にかかわるすべての人との協業で、誠実にものづくりに挑む。

バーナーの使い方を学ぶ高校生
バーナーの使い方を学ぶ高校生

2014(平成26)年度から大林組林友会と共同で高校を対象とした合同会社説明会を開催。高校生や専門学校生を対象とした職業体験型現場見学会も実施している。