第2章
2015 2016
事業領域の進化と安定経営
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事業領域の拡充〔3〕開発事業

賃貸ポートフォリオ多様化の推進

高度成長期に建設された建物が相次いで更新時期を迎えたことや、東京2020オリンピック・パラリンピック開催に向けて、首都圏を中心に都市基盤の再整備や開発事業が進められた。また、インバウンドビジネスの活発化により「国際競争力のある都市の創造」や「国際的ビジネス拠点の整備」などが急がれ、国家戦略特区などの制度を活用した都市再生事業・再開発事業が推進された。

こうした状況を受けて賃貸マーケットの市況が改善し、東京都心のオフィスビルの空室率は低水準で推移していた。そこで当社は、開発事業の収益の柱である「オフィス賃貸事業の拡充」と「賃貸不動産ポートフォリオの多様化」を積極的に進めた。賃貸オフィスについては東京都心部を中心に、競争力を将来にわたって維持できると見込まれるエリアの収益物件への投資や、再開発事業・共同開発事業などの大規模開発案件への参画などにより、新たな賃貸事業収益を創出し事業基盤の強化を図った。

2016(平成28)年3月、新規開発物件「oak meguro(オーク目黒)」が、目黒駅近くに竣工した。10階建ての「oak meguro」は免震構造ビルで、Low-EペアガラスやLED照明など、省エネルギー性能や快適性を高めるCASBEE(建築環境総合性能評価システム)認証Aランク相当の環境配慮技術を採用した。また、非常用発電機の設置や電力引込線の二重化など入居者のBCP(事業継続計画)をサポートする安全性に優れたオフィスビルであった。「oak meguro」は当社が計画、設計、施工を手がけ、大林新星和不動産が所有し運営管理を行っている。

oak meguro
oak meguro

海外における開発事業では、ロンドンで所有している「Bracken House(ブラッケンハウス)」のリニューアル工事を実施した。ロンドン中心部のセント・ポール大聖堂の南に位置するブラッケンハウスは、1959(昭和34)年にフィナンシャル・タイムズ社の本社として建築され、英国重要歴史建築物として保存指定されている。

1987年に当社が建物を取得し、1991年に両サイドの南北棟(煉瓦外壁部分)を保存したまま間に挟まれる形の中央棟を建て替えた。そして2017年、約25年ぶりに外観をそのままに、内部を現代のオフィス需要に合わせるリニューアルに着手した。

2019年の完成後は、日本経済新聞社の子会社となったフィナンシャル・タイムズ社の本社ビルとして活用されているほか、日経ヨーロッパ社が入居している。

ブラッケンハウス(1991年リニューアル)
ブラッケンハウス(1991年リニューアル)

所有不動産の活用

開発事業では、大林グループが所有する不動産の活用や土地区画整理事業への参画などを通して、賃貸住宅、物流施設を開発するなど、オフィス以外の賃貸事業も推進した。特に大林グループ所有不動産についての事業化・収益化に際しては、立地特性を十分に見極めて、住宅・商業・物流施設としての活用を検討したうえで実施し、事業領域・バリエーションの拡大を図った。

2015(平成27)年9月には、当社名古屋機械工場の跡地を有効活用した小牧物流センターが完成した。計画・設計・施工は当社が行い、大林新星和不動産が所有し、現在は大手物流会社に賃貸している。

そのほか、遊休不動産を太陽光発電などの再生可能エネルギー事業用地として、グループ内で有効活用することで新たな収益を創出した。また、活用困難な遊休不動産については売却を進める一方で、賃貸物件の新規投資を積極的に推進するなど、着実にポートフォリオの改善を進めた。

グランフロント大阪――関西の都市再生をリードする新しいまちづくり

2013(平成25)年4月、JR大阪駅北側に広がる「うめきた」の先行開発区域で、大型複合施設「グランフロント大阪」がまちびらきを迎えた。以来毎年、来場者数は年間目標の3,650万人を上回り、2016年 4月のまちびらき3周年では、延べ来場者数が累計1億5,000万人を突破した。

このプロジェクトは三菱地所株式会社を代表とした共同開発事業だが、大林組は、構想段階から開発事業者、設計者、施工者それぞれの立場で携わってきた。駅前のうめきた広場から続く4棟の高層ビルは、産・官・学連携による知的創造・交流の場「ナレッジキャピタル」を中核施設とし、約270の専門店が集まる商業施設、国際級ホテル・サービスレジデンス、最先端技術を導入したオフィス、高級分譲住宅で構成されている。

かつての梅田貨物駅を中心とする約24haの「うめきた」(都市再生緊急整備地域内)のうち約7haの先行開発区域であるこの地は、公民連携によって推進、国際的な情報と人材の集積・交流拠点を形成し、多様なイノべーションを生み出す"まち"に変貌した。

さらに、グランフロント大阪は、国土交通省の「住宅・建築物省CO2先導モデル事業」に採択された事業であり、複数の街区一帯に緑のネットワークが整備され、自然換気システム、太陽光発電など、環境に配慮した最先端の技術が導入されている。

また、まちびらきに先立ち、長期的ビジョンに立ったエリアマネジメントを展開する「一般社団法人グランフロント大阪TMO」(TMO:Town Management Organization)を設立。TMOは公民連携による持続的かつ一体的なまちの運営による「賑わい創出」「質の高い都市景観形成」「独自のコミュニティ形成」や、多様な人々の交流や感動との出会いを生み出す「体験・経験」の創出によるまちの付加価値向上を通じた梅田地区全体の持続的な発展を取り組み方針としており、新たな文化芸術を発信する各種イベントプロモーションや、まちのコミュニティ形成、公民連携による公共空間の管理・運営に取り組むなど、在住者、在勤者、来街者とともに「まち」を育てる参加型のまちづくりを推進している。