第2章
2015 2016
事業領域の進化と安定経営
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事業領域の拡充〔2〕土木事業

社会インフラの整備――大規模プロジェクトの本格化

地震や相次ぐ大型台風の上陸など自然災害の脅威が増大するなか、人々の生命と暮らしを守るための防災・減災工事やインフラの老朽化対策、国土強靭化への取り組みが本格化し、道路・鉄道の橋脚の耐震化や補強工事、治水ダム建設、河川改修などが進められた。一方で、安全で豊かな生活を支えるための新たな社会的基盤整備のニーズも高まり、新規高速道路の建設や延伸、リニア中央新幹線など、次の時代を担う交通幹線の建設計画が進められた。

当社では、こうした各種インフラの新設や長寿命化に取り組み、供用中の高速道路の維持更新や、大深度超長距離シールド工事による高速環状道路の建設など、高度な技術力とマネジメント力が必要とされる分野で先駆的な役割を担っている。

その一例が2014(平成26)年4月に受注した、東京外かく環状道路の大泉ジャンクション―東名ジャンクションを結ぶ本線トンネル最大工区の工事である。大深度地下領域を活用し、直径16mの日本最大の大断面シールドマシンにより長さ9kmの高速道路用トンネルを構築するもので、当社は東京湾アクアライン首都高速中央環状新宿線などの工事を通じて蓄積したトンネル技術を活用して工事を進めた。また、ランプウェイなどの関連工事も受注した。

2016年2月に開通した、新東名高速道路の浜松いなさジャンクション―豊田東ジャンクション間の工事では、愛知県内で多数のトンネルや橋梁を施工した。これにより開通済みの静岡県内区間と合わせた開通区間は延長約200kmとなり、ダブルネットワーク化による東名高速道路の渋滞緩和、大規模災害時の早期復旧への貢献、三大都市圏の連携強化などにつながった。新名神高速道路関連では、2013年8月から三重県鈴鹿市と亀山市をつなぐ野登トンネル(4.1km)の工事を担当したほか、神戸ジャンクション菰野(こもの)第一高架橋などの建設も行った。

東日本大震災の復旧・復興関連では、大きな被害を受けた三陸海岸の沿岸部を南北につなぐ復興道路(国道45号吉浜釜石道路)と沿岸部と内陸部を結ぶ復興支援道路(国道283号釜石道路)のトンネルや橋梁などの建設を行い、2017年に竣工した。また、2018年から2020(令和2)年にかけて、環境省発注の福島県双葉町における中間貯蔵施設関連工事を行った。可燃性の除染廃棄物や津波廃棄物などを焼却した焼却灰を減容化して処分量を減らし、最終処分方法が決まるまで貯蔵する施設で、当社は仮設処理施設の建設を担当した。

(参照:スペシャルコンテンツ>6つのストーリー>東日本大震災)

一方、2027年に東京―名古屋間の先行開業をめざしているリニア中央新幹線の建設工事では、当社は2015年より、地下ターミナル駅部地中連続壁構築、シールド立坑、山岳トンネル、シールドトンネル、橋梁、変電所建設など多工種にわたり順次工事を受注、施工中である。 

アジア諸国の社会基盤整備への貢献

政府が提唱する「質の高いインフラパートナーシップ」の考え方に基づき、当社はアジアを中心とする新興国において、環境に配慮しながら安全・安心な生活を実現する各種社会インフラの整備に取り組み、地域の経済発展に貢献している。

ラオスでは2012(平成24)年に、当社と大林道路のJVがメコン地域東西経済回廊であるラオス9号線の整備工事(延べ58.1km区間)を受注した。国道9号線は、すでに2003年に日本のODA(政府開発援助)によって改良工事が実施されたが、その後大型車両の通行量増加などが原因で、広範囲に大規模な損傷が生じた。そこで再度ODAにより整備計画が実施され、2015年3月に改修工事が終了した。また、ナムニアップ1(NNP1)水力発電所建設工事を2013年に受注した。ラオスとタイの国境を流れるメコン川の支流ナムニアップ川に、黒部ダムの約11倍の貯水量をもつ巨大な重力式コンクリートダムと発電所を建設するもので、当社はダム本体、発電所、管理用道路などの土木建築工事を施工し、2019年に竣工した。

インドネシアでは、首都ジャカルタ北部の国際港湾タンジュン・プリオク港と市中心部や工業地域を結ぶ「ジャカルタ高架橋 タンジュン・プリオックアクセス道路建設工事(E-2A工区)」を受注した。当社は港に直結する最大規模の工区を担当し、本線高架やランプの新設工事などを、交通量が多い幹線道路の上で安全に配慮しながら施工し、2016年11月に竣工した。

さらにバングラデシュで「カチプール・メグナ・グムティ第2橋建設工事および既存橋改修事業」をJVにより受注し、2016年から工事を開始した。首都ダッカと国内第2の都市チッタゴンを結ぶ国道1号線上のカチプール橋、メグナ橋、グムティ橋を改修するとともに、既存の3橋それぞれに並行する第2橋を新設するもので、2020(令和2)年に竣工した。

カチプール橋
カチプール橋
メグナ橋
メグナ橋
グムティ橋
グムティ橋

ラオス・ナムニアップダムの建設

2019(令和元)年9月5日、ラオスのナムニアップ1(NNP1)水力発電所が商業運転を開始した。NNP1は、ラオスの首都ビエンチャンの北東130km、ラオスとタイの国境を流れるメコン川の支流、ナムニアップ川に位置している。NNP1メインダムの総貯水量は22億m3で、黒部ダム(2億m3)の11倍、国内最大の貯水量を誇る徳山ダム(6.6億m3)の3倍以上に及ぶ。大林組は、堤高167m、堤頂長535m、堤体積約236万m3の重力式コンクリートダム本体、出力27.2万kWと約1.8万kWの発電所、管理用道路などの土木建築工事一式を施工した。

NNP1水力発電所建設プロジェクトは、日本政府が主導する「質の高いインフラ投資」の代表例で、水力発電の開発・運営に豊富な実績を持つ関西電力株式会社が共同出資した現地の会社で実施した発電所建設プロジェクトであり、土木・電気・金物の主要工事契約先を日本のコントラクターとする“オールジャパン”の体制で取り組んだものだ。

本工事では、メインダムの堤体構築に日本での採用例が少ないRCC(Roller Compacted Concrete)工法を採用し、急速施工を可能にしたのが特徴である。また、ダム本体だけでなく、アクセス道路、転流用トンネル掘削、発電所建築、原石山掘削など土木建築工事のすべてを1社で請け負ったのも特徴の一つだ。

2013(平成25)年12月にアクセス道路の建設を開始し、2014年9月の本格着工から、わずか3年8カ月で堤体打設が完了したのは、1社施工のメリットの表れといえるだろう。

2018年5月25日には、メインダムの湛水(たんすい)セレモニーが開催され、ラオス政府や地元自治体、関西電力、施工会社関係者ら約400人が出席し、湛水を祝った。

また、建設工事では最大約3,200人/日のラオス国およびその周辺国からの労働者を雇用し、ラオス国および近隣国における雇用創出にも貢献した。