千本ダム堤体補強工事

DAM REINFORCEMENT WORK

千本ダムは島根県東部に位置する、1918年に完成した水道専用の重力式コンクリートダムです。
建設後100年が経過した今もなお松江市の水道用水の4分の1を供給し続けています。
千本ダムは、表面が石積み式で大きな石の間にコンクリートを充填(じゅうてん)する粗石コンクリートで造られました。
国指定の登録有形文化財や土木学会推奨土木遺産に指定されるなど、歴史的価値の高い構造物です。

千本ダム概要

目 的:上水道用水
形 式:重力式コンクリートダム
堤 高:15.8m
堤頂長:109.1m
堤体積:7,000㎥
総貯水容量:38万7,000㎥
所在地:島根県松江市西忌部町字細田
発注者:松江市
竣 工:1918年
補 強:2020年

千本ダム施工風景

千本ダムの堤体PSアンカー

ダム健全度調査により、地震時の堤体の安定性に問題があることが確認されたため、耐震補強工事が行われました。
この工事ではダムの機能を維持しながら文化遺産としての姿を保持するため、大林組はPSアンカーを用いた国内初の工法によりダム堤体の耐震補強を行いました。

千本ダム施工風景

堤体PSアンカー工法は、ダムの堤体の天端からPC鋼線を束ねたアンカーを挿入して基礎岩盤に定着させ、大規模地震などによって堤体が転倒するのを防止するものです。最長のものでは約30mもあるPSアンカーを38本設置しました。

堤体PSアンカー仕様
・アンカー長:30.5m(最長)
・設計緊張力:1702kN(最大)
・アンカー設置間隔:2.5m
・本数:38本

千本ダム施工風景

堤体PSアンカー施工状況

千本ダム施工風景

アンカー削孔

アンカーを挿入するため、削孔(さっこう)機械で堤体を掘削

千本ダム施工風景

テンドン挿入

アンカー本体となるテンドン(高強度の鋼線など)を挿入

千本ダム施工風景

テンドン挿入

景観保持と歴史的な姿を残すために

ダム湖から水が流れ出る越流部(えつりゅうぶ)天端施工の工夫

既存の石積堤体の頂部を削除し、PSアンカーを設置。PSアンカーでの補強後は、新たな石積みを施し、補強工事前の姿を再現します。

施工手順
千本ダム施工風景

同質石材による風合い確認
千本ダム施工風景

既存部との取り合いに配慮した復旧
千本ダム施工風景

既存部の洗浄

千本ダム施工風景
復旧部と既存部の色調差を軽減(100年前の姿を復活)

足場構台施工時の配慮

千本ダム施工風景
石積面保護のため、アンカーを打ち込まず、ベース金具使用により構台組立

水質保全

漏出対策

PSアンカーを堤体に挿入した後、セメントミルクなどのグラウトを注入して固定するため、注入したセメントミルクが漏出しないよう対策を行います。

◆石積み目地の事前チェック・補修
◆全孔水圧試験による透水性確認

千本ダム施工風景

工事排水対策

千本ダム施工風景
千本ダム施工風景

受賞歴

第6回インフラメンテナンス大賞 国土交通大臣賞(総務省、文部科学省、厚生労働省、農林水産省、経済産業省、国土交通省、環境省、防衛省)
日建連表彰 第3回土木賞(一般社団法人日本建設業連合会)
第27回しまね景観賞 特別賞(島根県)
令和2年度土木学会技術賞Ⅱグループ(公益社団法人土木学会)
令和2年度ダム工学会技術賞(一般社団法人ダム工学会)
第1回土木学会インフラメンテナンスプロジェクト賞(公益社団法人土木学会)

主要パーソン