先端技術を駆使したリニューアル工事
岩盤PSアンカーの採用など、1966年の建設当時に最先端の技術で造られたこのダムは、50年を経過して、既設アンカーの健全性を調査した結果、今回新たに更新アンカーを施工することとなりました。
私は今回の補強工事で主にアンカー工の品質管理と安全管理を担当しています。岩盤にアンカーを打ち込み、内部をセメントミルクで固める岩盤PSアンカーはやり直しがきかないため、アンカーの組み立てから挿入までの安全、鋼線を束ねているテンドンの品質、削孔(さっこう)時の孔曲り管理、注入するセメントミルクの品質など、あらゆる点に慎重で厳密な管理を行っています。
川俣ダムの補強工事の難点の一つに、作業構台の問題がありました。急傾斜の岩盤を覆う構台は設置が非常に難しく、試行錯誤の末、岩盤に張り付くように設置しました。構台は狭く、高所作業となるため、安全面には常に気を配っています。
私はこれまで地下鉄駅の通路の施工に携わっており、ダムの現場は川俣ダムが初めてです。アーチダム特有の管理や施工に関わる計算など、一から学ぶことも多くありました。今回のリニューアル工事はアンカーの増設という一見シンプルに見えるものですが、国内最大のアンカー、岩盤の状況により複数箇所を補強する「二段緊張」工法、急勾配への足場設計など、特殊かつ最先端の技術が採用されています。ここで得た知識や技術を、今後のダム建設工事やリニューアル工事に活かせるように、これからも研さんを重ねたいと思います。