大林組ダム情報化施工技術「ODICT®

Obayashi-Dam Innovative Construction Technology

 

ダムをつくる人たち

STAFF INTERVIEW

大林組が考えるダム建設・技術の未来

大林組土木本部 生産技術本部 ダム技術部 部長

上髙 克弘

ダム事業の技術開発において、もっとも力を入れている分野を教えてください。

デジタルトランスフォーメーション(DX)は重要な開発分野となっています。背景には土木業界全体の人手不足があり、施工の自動・自律化技術の開発と適用によって、人の手を機械に置き換え、生産性の向上や働き方改革をめざしています。
これまでにも、クレーンや建機の自動化などを実現し、導入してきました。ただし、状況に合わせて微細な動きが求められる場面では、まだまだ作業員の精度に及ばないことも。機械の学習能力を高め、現場での適用性向上を進めています。さらには、一歩進んだDX化として、AI・ICTなどの最先端技術を駆使した施工のオートメーション化も推進。2023年に完成した川上ダムや、現在、国内最大のかさ上げ工事を行っている新丸山ダムなどで、実用化を進めています。
ダム事業で自動化できた技術は、ほかの分野にも応用できます。しかも、ダムは工期が長く、工事範囲も広大なことから、技術開発の場として好条件。ダムの現場は積極的に新しいことに挑戦しようという意識が高いのも特長です。ダムという器にさまざまな人が集まり、新しいことに挑もうとする、熱意とやりがいのある現場だと思います。

時代の変化と共に、ダム事業のニーズはどのように変わってきましたか?

日本国内においては、積極的にダムを新設する時代から、維持管理に力を入れるフェーズへと移行。施工内容は改修や増強、かさ上げなどがメインになっています。国土交通省でも、カーボンニュートラルの観点から、水力発電用ダムに治水設備を追加したハイブリッドダムを積極的に促進すると発表しています。こうした改修・増強工事は、新設とはまた違った技術が必要になります。DX化もそうですが、ロボティクスセンターや技術研究所など、社内各所と共同で開発を行っています。
また、ダム事業は周辺地域の環境や住民の方々との共生なくして成り立ちません。近年は社会の多様化が進み、住民の方一人ひとりの意見をいかに受け止めるか、というプロセスがより重要になっています。工期中、何度も対話を重ね、しっかりとした信頼関係を築くよう心がけています。

上髙 克弘

今後の課題と展望について教えてください。

やはり人材育成は大きな課題です。今の若手社員は考え方を含め時間の使い方がとても上手く、効率的に仕事を進めてくれます。そういった特性がきちんと活かせるよう、適材適所の役割分担を行い、彼らが成長を実感できる現場づくりを大切にしています。その経験がダムへの愛着となり、いずれ新しいダム技術の開発を支えてくれると期待しています。
ダム事業は土木技術の集大成であり、人間がつくる最大級の造形物。下流の生命や財産を守るという大きな使命もあります。ラオスのナムニアップ1水力発電所は、日本国内のダムを凌ぐ巨大ダムですが、こういったものをつくる力が大林組にはあります。リーダーとして、ダムに集まるさまざまな人が働きやすい環境を整え、大きなチャレンジを支えていきたいと思います。

上髙 克弘