第2章
2015 2016
事業領域の進化と安定経営
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人材の育成と女性の活躍

人材の確保と育成

拡大する建設需要に対応するため、当社は技能者の育成を目的とした諸制度を強化した。

大林組林友会連合会と協働して2011(平成23)年度に導入した「大林組認定基幹職長(通称:スーパー職長)制度」に関して、2015年度より対象年齢を満60歳未満から満65歳未満に引き上げた。2016年度には、従来の「レギュラークラス」「マイスタークラス」に加え、将来スーパー職長をめざす若手職長を対象とした「ジュニアクラス」を新設した。ジュニアクラスの主な認定規準は、将来スーパー職長となるための十分な資質・技能を有する40歳未満の若手職長で、職種ごとに定める資格を保有していること、職長としての実務経験が3年以上(大林組以外での経験年数も含む)あることなどを条件とした。

また、同年度より新たに「大林組認定優良クレーンオペレーター(通称:スーパーオペレーター)制度」を創設した。協力会社の推薦を受けたクレーンオペレーターのうち、基準を満たす者をスーパーオペレーターに認定し、一定の収入の上積みを行うもので、主な認定基準はクレーン運転士免許または移動式クレーン運転士免許を保有していること、クレーン運転士安全衛生教育または移動式クレーン運転士安全衛生教育を受講済みであること、実務経験が10年以上(大林組以外での経験年数も含む)あることなどであった。

2014年度に開校した「大林組林友会教育訓練校」の運営も軌道に乗り、訓練コースの充実や受講生枠の拡大を順次行うなど、将来を担う育成支援機能を強化した。さらに、技能者が安心して働ける環境を整えるため、社会保険に関する事業主向けのセミナーや個別相談会を開催するなど、協力会社における社会保険の加入促進への取り組みを進めた。

女性の活躍推進

当社は社員の仕事と家庭の両立を支援するために職場環境の整備に継続して取り組んでいる。次世代育成支援対策推進法に基づく「第五次行動計画」(2015年4月~2017年3月)では、短時間勤務制度を拡充し、育児のために利用できる期限を小学校3年生の年度末までに延長した。また、育児休職制度について従業員の理解を深めて育児休職の取得促進を図ること、育児に携わる女性が働きやすい建設現場の環境整備を進めることなどを掲げた。2016年4月には「次世代育成補助金制度」(出産時の補助金支給制度)を導入している。

さらに2016(平成28)年度からは、女性活躍推進法(2016年4月施行)の趣旨に基づき、社員一人ひとりが個性と能力を十分に活かし、誇りを持って働けることをめざす「第一次行動計画」(2016年4月~2021年3月)を新たにスタートさせた。

この行動計画では、女性役職者比率や技術系女性職員比率の引き上げを目標に掲げた。当社の女性役職者比率は6.4%(2016年3月末)で、すでに建設業大手でトップの水準だったが、さらに2024年度までに倍増(2014年度比)させ、2021年度までに女性役職者比率を8%程度に引き上げることを目標とした。また、技術系の女性の比率を2024年度までに10%程度に引き上げる目標のもと、男女を問わない人物本位の採用を継続した。建設業への女性入職希望者の拡大につながるよう、当社の女性技術者の活躍状況を幅広く社会に広報することも定め、継続的に実施している。

建設現場においても、女性が働きやすい環境づくりを進めた。女性専用トイレやロッカー、更衣室の設置および衛生面や使いやすさの向上を図った。さらにサイトウェア(現場作業服)のデザインを女性向けに改良し、着心地や軽さを重視した生地を採用し、ヘルメットには女性の頭囲に対応した短めの調整ベルトや日焼け跡を防ぐ透明のあごひもを採用するなど、女性の視点から職場環境の整備を推進している。

こうした取り組みが評価され、日本経済新聞社と日経BP社が主催する「女性が活躍する会社Best100」(2015年度)において、建設・不動産業で当社が1位に選ばれた。女性社員活用の実態を「管理職登用度」「ワークライフバランス度」「女性活用度」「男女均等度」の指標で調査するもので、特に男女間における勤続年数差の解消や女性管理職比率の高さなどが評価され、業界トップとなった。

女性現場責任者の誕生

当社では、人材が最も重要な経営資源の一つであるという考えのもと、女性活躍などという言葉の出現どころか、男女雇用機会均等法が施行された1986(昭和61)年よりも前、1970年代の後半から女性技術者を積極的に採用し、1988年に初の女性現場監督が誕生した。

このように当社は早い時期から人物本位、適材適所の配属を行ってきた実績を持ち、2003(平成15)年には業界に先駆けて総合職、専門職、一般職のコース別雇用制度を撤廃、管理区分を一本化した。男女の職務差がなくなり、旧一般職の女性社員にも基幹業務に携わる道が開けた。

2014年には、赤坂一丁目地区第一種市街地再開発事業に伴う南北線溜池山王駅連絡出入口設置などの関連工事で、大手ゼネコン初の女性所長が誕生。続いて2015年には、インドネシア・ジャカルタの高速道路建設工事で、ゼネコン初の女性海外プロジェクト所長が誕生した。