130年史概観
新領域の拡大とESG経営の推進
2011
平成23
2021
令和3

「大林組基本理念」制定

当社は創業120年を迎えた2011(平成23)年1月、創業以来の「技術」と「誠実さ」などのDNAを継承するとともに、「地球に優しい」リーディングカンパニーをめざすため、「大林組基本理念」を制定・公表した(詳しくはこちら)。創業以来受け継がれてきた三箴(さんしん)の精神「良く、廉く、速い」を礎とし、その上に「企業理念」(私たちのありたい姿)および「企業行動規範」(「大林組が考えるCSR」と「5つの行動指針」を再構成)を置く構成となっている。

同年3月に発生した東日本大震災(「平成23年東北地方太平洋沖地震」)の際には、当社は日本を代表する建設会社として、震災直後から緊急対応を開始。建設会社の強みである人員や物資、輸送手段などの調達力を活用し、生産施設や公共インフラの早期復旧に努めるとともに、震災で発生した膨大ながれきの処理や、除染事業、復興工事にも取り組んだ。

その後も日本では熊本地震や広域的な豪雨などの災害が相次いで起きている。当社はこうした防災・減災関連工事を受注する一方、相次ぐ自然災害の復旧・復興工事にも引き続き尽力している。

(参照:スペシャルコンテンツ>6つのストーリー>東日本大震災)

(参照:スペシャルコンテンツ>6つのストーリー>熊本地震)

収益基盤の多様化推進

当社は、リーマンショックや東日本大震災のような事業環境の激変に対し、柔軟かつ強靭に対応できる収益構造へと変革するため、3カ年計画「中期経営計画 '12」をスタートさせ、基幹分野のさらなる成長に加えて「収益基盤の多様化」を推進し、グループとしての収益力を高めるとともに、「海外へのさらなる戦略的展開」を主要施策の一つに掲げ、東南アジア、北米、中東の3地域およびオセアニアを重点地域と定めて、M&Aや共同企業体(JV)などによって現地企業のノウハウを活用しつつ、各地域の特性に応じて戦略的に事業展開を進めた。

その後2014(平成26)年10月には、テクノ事業創成本部を新設し、再生可能エネルギー事業をはじめとする新領域での事業の展開を加速。2012年度に再生可能エネルギー事業をスタートさせて以来、2021年3月末現在までに日本の約7万世帯分の年間消費電力量(約154MW)を発電する施設が稼働した。

2015年4月には、新たな3カ年計画「中期経営計画 2015(Evolution 2015)」がスタート。前中期経営計画の目標をほぼ達成したことを受けて、それまでの路線を引き継ぎ、建築・土木・開発に加えて「新領域事業」を第4の柱とし、さらに収益基盤の多様化を推進していった。

ESG経営の推進とグループ経営の強化

「中期経営計画 2015」の期間に、大林グループの業績は国内建設市場の回復や建設現場の生産性向上を背景として上向き、最終年度を待たずに計画に掲げた目標をほぼ達成した。従来以上のスピードで技術革新が求められるなか、グループ総力を挙げて現在の好業績を維持・拡大し、将来への布石を打っていくため、1年前倒しして新たに「中期経営計画 2017」を策定。この計画の推進を通して大林グループが持続的に成長していくため、当社単体だけではなく大林グループ全社による戦略を強化することでグローバル化を加速し、国際競争力とグループ経営力を高めていくこととした。また、当社はこの計画の推進に際し、経営基盤戦略としてESGへの取組方針を掲げ、2019年には、ESGの重要性や社会課題であるSDGs達成への貢献などの要素を2011年策定の環境ビジョン「Obayashi Green Vision 2050」に取り入れて、「Obayashi Sustainability Vision 2050」に改訂した。SDGsと関連づけて事業活動を行うことで、当社の企業理念に掲げる「持続可能な社会の実現」と大林グループの「永続的な企業価値の向上」をめざすことにしたのである。

経営体制の刷新とコンプライアンス体制の再整備

当社は2006(平成18)年から2007年にかけて各種公共工事において競売入札妨害罪や独占禁止法違反などの法令違反事件を起こした。この反省を踏まえ、二度と談合事件を発生させないよう、「企業倫理プログラム」「独占禁止法遵守プログラム」を策定・公表。その後、全社を挙げてコンプライアンスの徹底に努めてきたが、2017年にリニア中央新幹線建設工事における談合事件が発生した。これを受けて、当社は2018年3月に社長を含む経営体制を刷新。新社長に取締役専務執行役員の蓮輪賢治が就任し、新体制のもとコンプライアンス体制の再整備を図り、信頼回復に取り組んだ。

蓮輪賢治
蓮輪賢治

創業130年とブランドビジョンの制定

1892(明治25)年1月25日、土木建築請負業「大林店」として大阪の地で誕生した当社は、時代が変わっても、顧客や社会のニーズに真摯に向き合い培ってきた誠実な「ものづくり」の精神を脈々と受け継いできた。

創業130年を迎えた2021(令和3)年1月、当社は、社外からの理解と共感、未来に対しての期待を得ることを目的に、大林グループがめざす方向性を顧客や社会に約束するブランドビジョン「MAKE BEYOND つくるを拓く」を社外に公表。このビジョンは、創業以来、一貫して社会の要請に応え、その発展に貢献してきた大林グループの存在意義を再確認し、「ものづくり」を通じて、新しい地平を拓いていくとの意思を表明するものであった。

大林グループの挑戦

当社は2018(平成30)年度に過去最高益を更新するなど順調に業績を伸ばしてきたが、2019(令和元)年度末以降、新型コロナウイルス(COVID-19)感染症が世界中に拡大したことで、2020年度には一転して営業利益が大幅に滅少した。

当社の生産性向上、技術の水平展開、事業領域の拡大などの取り組みは道半ばであるが、その一方で、コロナ禍が引き起こす社会・経済の変容やDX(デジタルトランスフォーメーション)の進展などがもたらす事業環境の変化への迅速な対応が急務となった。大林グループにとって、次の10年は、社会的使命を問われる時代であり、グループ各社が「One Team」となって使命に応えるとともに、挑戦していかなければ、持続的に成長していくことはできない。

将来を見据え、足元の課題を一つひとつ達成していくこともブランドビジョン「つくるを拓く」のアプローチの一つである。

大林グループは「目指す将来像」の実現に向けて、「『ものづくり』の次」をめざしていく。