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研究者の思いが「つくるを拓く」
技術は、研究者一人ひとりの思いの結晶です。社会の安全・安心と、より豊かな暮らしの実現に技術で貢献すること、それが私たちの願いです。
技術は、研究者一人ひとりの思いの結晶です。社会の安全・安心と、より豊かな暮らしの実現に技術で貢献すること、それが私たちの願いです。
コンクリート構造物の寿命は30年~50年程度が一般的です。原因として、コンクリート中にCO2や水、塩分などの劣化因子が侵入し鉄筋を腐食させるからです。そこで、コンクリートに劣化因子の侵入を防ぐ技術が必要となります。
劣化因子の侵入を防止するには、因子の通り道を極力少なくすることが重要です。セメント材料や施工方法、補強繊維の研究を行うことにより、コンクリートの空隙やひび割れを減少し劣化因子の侵入を防止します。最先端のコンクリート技術を研究し100年先の安全を創ります。
社会基盤のほとんどがコンクリート構造物で、我々の生活はコンクリートによって支えられています。ただ、コンクリートはあまりにも身近なため、世間の関心が薄いのも事実です。それはコンクリートが100年近く大きな変革がないためと思われます。今後カーボンニュートラルや少子高齢化を見据えて、コンクリート研究に大きな変革をもたらし、社会基盤を支え続けたいと考えます。
建設業の環境負荷低減は、コンクリートがキーテクノロジーになると考えています。低炭素型のコンクリートの開発や適用にとどまることなく、コンクリートは貴重な資源であると捉えて、コンクリート構造物の長寿命化やリサイクルも考慮した未来像を描いています。
コンクリートは建築物に欠かせない材料です。人が関与することで良いコンクリートにも悪いコンクリートにもなります。大林組がつくるコンクリートは良くて当たり前と言われるように日々研究開発に励んでおります。
鉄筋コンクリートは、自身の初期欠陥や外的要因などが原因で、共用期間が長期にわたる場合、劣化することがあります。劣化の原因の一つにセメント水和熱に起因したひび割れがあります。そこで、このひび割れの発生の可能性を簡単に予測するシステム「温度ひび割れ簡易評価システム」を開発しています。
また、長い時間をかけて塩分がコンクリート内部に浸透することにより鉄筋がさびることがあります。そこで、鉄筋をPVB樹脂で被覆し、さらに珪砂を塗布することでコンクリートとの付着力を向上した鉄筋を開発しています。
数百年前から使用されてきた構造物の根幹を成す建設材料のコンクリートや鉄筋は、あまりに汎用的に使用されているため、既に完成した技術と思われがちです。しかし、建設産業を取り巻く状況に応じて日々進化を遂げています。固定観念や既成概念にとらわれず、時代に即した材料技術の開発をめざして、粘り強く研究開発に取り組みたいと思います。
近年の地球環境の変化によって、グローバルな観点からカーボンニュートラルによる脱炭素社会の実現が重要になります。このような観点から、建築材料からのアプローチとして、二酸化炭素排出量の少ない低炭素型のコンクリート「クリーンクリート」や、外部からの劣化因子の侵入を抑制しコンクリート構造物の耐久性を向上させる塗料「クリヤ塗料」の開発に取り組んできました。
今後は、未来の姿を考えながら、さらなる環境配慮を進めるべく、環境にやさしい建築材料の研究開発に取り組んでいきます。
研究開発には、産みの苦しみがあり、その苦しみが大きいほど、成果物のヒットする可能性が高くなると思います。今後も夢のある建築材料を世に送り出せるように、産みの苦しみを楽しみつつ、研究開発を推進したいと思います。
「技能工が徐々に減少していくが、工事量は減らない」状況下において、働き方改革で残業時間を短縮しなければなりません。そのためには、今のやり方にとらわれず、新しいやり方で乗り切る必要があります。そのために、最新技術を導入し、次世代の施工技術・施工管理技術を開発していきます。
常に新しいものを国内外問わずウォッチし、次世代の施工技術や施工管理技術を開発していきます。
脱炭素社会を実現するには、どんな技術を組み合わせて建設すれば良いのでしょうか。材料分野において、CO2の排出量が小さく、長寿命化できる材料技術に着目しています。こうした革新的材料技術の開発を通して、将来にわたり、より快適で安全・安心な環境や構造物を創ります。
社会変革の時代が到来していると考えています。これまでの価値観と異なる視点でもう一度技術を見つめ直し、これからの時代の要請に応えます。
建設就労者数が減少し、工事現場の働き方改革が求められる中で、施工現場の生産性向上は必須の課題です。一方、ICTの進歩は目覚ましく、私たちの生活環境と労働環境を急速に変えつつあります。建設物を3次元で設計するBIM・CIMの情報が、施工段階でも積極的に利用されつつあります。ロボット技術と連携し、大幅な生産性向上につなげていきたいと考えています。
請負が本業の建設会社において、独自の施工技術こそが他社と差別化できる「商品」だと考えます。他社があきらめたようなテーマにも、宝があると信じています。
建設業の働き方改革の実現には、工事現場の作業そのものと施工管理業務の生産性の向上が求められます。
現場作業の解決策の一つが自動化・ロボット化です。30年前にも技術開発を進めましたが、当時は技術レベルが低く頓挫しました。現在は最新技術でブレークスルーが可能です。
施工管理には、AIや建設DXが展開できます。要素技術の進展が著しいため、常に最新技術の動向に着目して技術開発を進めます。
自動化・ロボット化技術と建設DXを統合したものが自動化建設システムです。3Dプリンターをはじめ、ものづくりの変革に挑戦しています。
自動化建設システムのような大がかりな技術開発では、複数の要素技術を組み合わせることが求められます。多くの部門、さらには他企業の方々と協力するチームワークが大切です。多角的な視点から革新的な技術開発を推進したいと思います。
地震や火災が生じたときの構造物の損傷状況をあらかじめ詳細かつ正確に予測できれば、合理的かつ安全な構造物を構築することができます。大林組が開発した三次元非線形解析ソフト「FINAL®」は、地震や火災時のコンクリート系構造物の状態や挙動を詳細かつ正確に予測・再現できる技術です。国内外の解析コンペで最優秀賞を受賞するなど、解析の信頼性は高く評価されています。また、大規模高速化FEM解析ソフト「FINAL-GEO®」では、実物の形状を忠実に再現した解析モデルにより、地盤を含めた構造物の挙動を精度良く予測・再現できます。これらの解析ソフトは、構造物の設計・施工法の検討や安全性の評価に用いられています。
近年、頻発している激甚災害により、世間の防災に対する意識が高まっています。より信頼性の高い解析技術の開発や合理化構法の開発を通して、経済性と安全性の両面から合理的な構造物を建設することで、豊かで持続可能な社会の構築に貢献したいと考えています。
大地震対応の鋼構造・鋼コンクリート合成構造の部材・接合技術、中小地震~大地震対応の制震部材の研究開発を進めています。これまでに、鉄骨梁端拡幅工法、超高強度鋼材を用いたCFT柱・溶接ボックス柱、皿ばねとブレーキ技術を用いた制震用摩擦ダンパーの開発・応用展開を進めてきました。
建物利用者の地震時の「安全・安心」の確保だけでなく、環境負荷低減や建築計画における自由度増大など、時代の変化や要請に柔軟に対応し、+α(アルファ)の価値のある技術を創造していきます。
困難な課題にも果敢に挑戦する情熱を持ち続けること、すぐには成果が出なくても粘り強く継続して取り組むこと、自分の研究開発をさまざまな形でサポートしてくれる周りへの感謝を忘れないことが大切だと思います。
地震時には、建物が揺れて恐怖を感じたり、建物内の家具や備品などに被害を及ぼすことがあります。また、日常的には、歩行や建物内設備の振動で床が揺れ、居住者が不快に感じることがあります。さらに、人が揺れを感じなくても、精密な加工を行う半導体工場や最先端の研究施設では、ごくわずかな振動でさえ悪影響を及ぼすことがあります。大林組では、このようなあらゆる揺れに対応できる建物を実現するため、技術開発を進めています。
揺れに関する問題を解決するために、現場や設計などを支援する実務も数多く担当しています。実務において課題が生じているところに新しい技術開発のタネがあります。そのような課題を新たなアイデアで解決できるような技術を開発したいと考えています。
私たちの日々の生活は道路や鉄道、電気、通信などのさまざまなインフラ(社会基盤)施設に支えられています。首都直下地震や南海トラフ地震などの大地震が発生したら、これらの施設がどのくらい被害を受けるのか、そして社会にどのような影響を及ぼすのかを把握することは、適切な対策を講じるために大変重要です。想定する地震による地盤の揺れや構造物の損傷程度をニーズに応じた手法で予測し、お客様のご要望に応じた最適な対策の立案につなげます。
地震の時に実際にどんな現象が起きているのだろう?と思ったことが、この道に進んだ一つのきっかけでした。自然現象を解明していくことで、地震や風水害といった自然災害に強い社会の実現に少しでも貢献できればと思います。
近年の労働者や熟練工の不足により、鉄筋コンクリート構造物の建設には合理化が求められています。
それに加えて、今後発生すると予想されている大規模地震に備えるため、新設だけでなく既設の土木構造物も耐震性が求められています。
こうした要請に応えるため、新たな省力化施工法ならびに耐震構造や耐震補強工法を開発しています。
鉄筋コンクリート分野は完成された学問のように思われがちですが、まだまだ合理化する余地があると考えています。
その合理化を具現化するために必要な建設材料や施工方法が現時点で存在しなければ、それを創造することが私の責務だと思います。
近年、コンクリートや鉄筋の高強度化が進み、超高層鉄筋コンクリート建物が数多く建てられています。このようにコンクリートは、鉄筋コンクリート構造を中心に、プレストレストコンクリート構造、合成・混合構造など幅広く用いられており、多くの重要な社会資本を形成しています。地震などから社会資本を守る耐震設計に関する技術、高品質の建物を速く施工するための技術、および既存の建物をより安全に長期間使用するためのリニューアル技術を中心に、技術開発に取り組んでいます。
コンクリート構造は非常に広範囲で、しかも奥が深いものです。自分が知っていることはその一部ですが、技術は多くの人の和と知恵で開発できると考えています。
火災の温度は1,000℃にも達します。この高温の前では、あらゆる可燃物が燃えてしまい、鋼材やコンクリートで造られた建物でさえも、適切な耐火性能が備わっていないと崩壊してしまう危険性があります。
大林組では、国内最大級の耐火実験装置や、高度な解析技術を駆使し、万一の火災でも安全・安心な建物を提供するための研究開発を鋭意進めています。
近年、低炭素社会の構築に貢献するものとして注目されている木造建築の分野においても、国内初となる3時間耐火の木造部材を実際の建物へ適用するなど、日々新たな耐火技術の開発に取り組んでいます。
「火」は、太古の昔から人類に恩恵をもたらす一方、時に「災(わざわい)」となって人々を脅かしてきました。
人々の生活から火災による脅威を取り除きつつ、安全で快適な建築空間を実現する技術を一つでも多く世に送り出すべく、研究開発に努めています。
細くて少ない柱による空間づくりと安全性を両立させる技術として、超高強度の鋼管とコンクリートを組み合わせたCFT柱(コンクリート充てん鋼管柱)があります。材料の性質を理解したうえで、高度な設計技術と施工管理技術を組み合わせることが不可欠な技術です。
研究対象は柱や梁などの構造体にとどまらず、内装や外装などの非構造部材にも及びます。耐震性、耐風性、耐久性、水密性、遮音性、施工性、さらには地球環境負荷まで幅広く研究し、より人と地球に優しい都市と空間づくりに貢献していきます。
CO2削減は喫緊の課題です。安全・安心の分野も、地球の安全をなくしては語れません。カーボンニュートラル・ネガティブな材料、工法に熱視線中です。
近年、多数の建物被害を伴う地震がたびたび発生していますが、大規模地震時に余震による二次被害を防ぐために、建物の被害を地震直後に把握する技術が求められています。建物の振動を計測する技術と振動工学を駆使して、地震直後に建物の健全性を評価し、安全・安心な居住環境を実現する技術の開発に取り組んでいます。
振動現象は人間活動のあらゆる場面に登場するので、広範な課題に取り組むことが求められます。振動と取り組むには粘りが必要ですが、研究開発も粘りが肝心です。「根気と粘り」を信条として、日々努力を続けていきたいと思います。
持続可能な社会の実現には再生可能エネルギーインフラの整備が不可欠ですが、そのキーテクノロジーである洋上風力発電や水素インフラについては、自然環境、荷重条件および安全性・信頼性において新たな領域でのチャレンジが求められます。
これらの解決に向け、これまでに蓄積した技術を核として、高度な設計・評価技術の構築に貢献します。
地震工学を礎とした研究開発は、被害事例とその物理的要因の分析から始まると言えますが、そこからいかに工学的に価値のある技術を生み出すかが醍醐味です。
土木・建築の施工方法には、従来から定められたやり方があります。建設現場では、日々それを工夫して改善を図ることで、品質向上やコスト低減につなげていると思います。その工夫に化学の力を利用して、従来は不可能と思っていたことを実現できるような開発を行っていきたいと思います。
専門が土木・建築ではないので、まずは現場ニーズをよく聞いて開発につなげることを意識しています。また、最近では環境への配慮も重要になっておりますが、本質的に環境負荷低減となる方法は何かを考えて、将来的な企業価値を高めることにつなげていきたいと考えます。
肉眼では見えない小さな生き物、微生物に着目し、微生物を制御する技術開発を行っています。微生物を効果的に制御するために、どこにどんな微生物がいるかを把握することが重要で、DNA解析による微生物調査を行っています。
最近、感染症対策の観点から、家具や備品に付着した菌を取り除く環境表面除菌への関心が高まっていますが、「マルチミスト®」は、微細な薬剤ミストを噴霧し、環境表面を自動で除菌する設備です。手作業では拭ききれない細部まで短時間で除菌できます。
「アスペルバスター®」は、建物の改修や解体工事で発生する粉じん由来のカビ感染症対策技術です。工事着手前に天井裏を除菌し、原因菌の飛散リスクを効果的に低減します。
お客様に自信をもって提案できる研究開発を心がけています。そのためには、実験を繰り返し行い、データを積み重ね、最適化していくことが重要であり、時間も労力もかかります。しかし、実際に開発技術が使われた時、喜びとやりがいを感じます。今後も、世の中で使われる技術の開発をめざし、日々取り組んでいきます。
プロスポーツ用スタジアムの大屋根の影響により、天然芝の生育不良が頻発しています。天然芝への影響が少ない屋根設計が第一ですが、困難な場合が多く、育成管理に苦慮しています。
国内で環境条件の最も厳しいスタジアムの設計・施工・維持管理を長年経験したノウハウを活かし、最先端の芝育成促進技術を駆使した育成管理技術の研究開発を行っています。
天然芝の造成と維持管理の一貫した技術を担うことにより、快適で魅力的なスタジアム空間を提供します。
「天然芝」という生き物を相手にしているため、日々の観察・管理作業が重要です。3現主義をモットーに実際の芝生を見て触れることで、生育状態を瞬時に把握し、次なる対策・管理を講じることができます。隣の芝生ではなく、自分の芝生を青くできるよう努めています。
地域にふさわしい緑を大切に育てるためには、目的と立地に合った植物を選定した緑化計画、植栽基盤の適切な整備が必要です。
生き物(カエル、トンボ)を呼びよせる池や湿地の「ビオトープづくり」を行います。自然環境調査をもとに誘致する生き物を設定し、自然と共生する空間づくりを行います。
事業地周辺に生育生息する貴重種(絶滅危惧種)について、調査を行い、その結果から継続的に生育生息するための保全対策を行います。
なぜ、生物多様性は大切なのか?
多様な生物の「恵み」と「つながり」によって、私たちの暮らしは支えられています。名もなき草や虫たちも、何かの役割があり、その価値を人間が決めつけることはできないと考えます。
土壌汚染は人体に影響を及ぼすだけでなく、土地の価値を低下させてしまう恐れもあり、土地活用を考慮した適切な対応が必要です。汚染源はトリクロロエチレンなどのVOC、人為的あるいは自然由来の重金属、エネルギー関連施設の油・タールなど多岐にわたります。これらの汚染土壌をできるだけ低コストで確実に浄化する技術を開発しています。
バイオマスとは、農林水産資源、都市ごみ、下水汚泥など、エネルギーや製品として再生可能な有機性資源のことです。これらからエネルギーや有価物を効率よく取り出す技術開発を行って、カーボンニュートラルへのチャレンジを進めています。一方、微細藻類生産など将来の食に係る研究も行っています。
研究開発で大事なのは「あきらめず、しつこくやる」ことだと思います。しっかり計画を立てて実験したつもりでも、なかなか思惑どおりにいかないのですから。
さまざまな産業や医療でバイオ技術が活用されていますが、我々も建設業での活用を進めています。溶剤や油などで汚染された地盤を、微生物を上手に活用するための栄養剤や、賢く制御するための施工技術を用いて、浄化が困難な粘性土地盤であっても安価で、省エネルギーな浄化を進めています。
一方で、新型コロナなどの有害なウイルス、微生物が大きな問題となっていますが、実環境下で除菌性能を実証した信頼性の高いミスト除菌技術の開発を進め、安全な職場環境をつくるお手伝いをしています。
バイオ関連の活用技術や制御技術が世の中に溢れていますが、信頼性が乏しい技術も少なくありません。これは、エビデンスが不足しているためです。実際の現場や現場に近い条件でエビデンスを取得することで信頼性の高い技術の開発を進めています。
最近では、台風などの強風が作用した時の高層建築物の風荷重や風揺れ居住性の評価を、コンピュータで行うようになってきました。風荷重の評価には、ビル風などの環境問題とは異なり、時々刻々変化する風の変化を捉える必要があります。
大林組では、市街地に吹く非定常な風を再現し、建物の風荷重を評価する「数値風洞エアロダイナ」を開発しています。風荷重評価以外にも、吊り荷の風揺れ予測や、高温排気ガスや水素ガスの拡散評価や、爆風の伝搬予測など、さまざまな風をシミュレーションし建物の安全設計に活かしていきます。
実験や解析による評価が容易になると、操作方法はマニュアル化され継承されますが、過去に解明された学術的な知見は、残らない傾向があります。得られた結果が、特異な現象か、過去の事例の拡張かなど、流体力学的に判断できる体制をめざしています。
街の快適さとは何でしょう。熱、光、音などさまざまな環境要素を個別に評価するだけでは十分ではなく、人に重心を置き、人が心地よいと感じられる空間づくりをめざす必要があります。
「心地よい」には、環境の快適性のほかに、楽しい、安全・安心、気持ち良い、賑やかなど、人の主観や状況が含まれます。生体情報利用など、進化するICT技術を取り込みながら、人中心の未来の街づくりをめざしていきます。
快適さや心地よさに関わる技術は、コストアップが常です。変化する利用者のニーズを敏感に捉え、コストアップに負けない、魅力的な付加価値や、利用者の体験価値向上をめざします。そのために柔軟で既視感のない発想を心がけています。
マンションの隣戸の音がダダ洩れでは生活に支障があります。工場の騒音が垂れ流しでは法令が守れません。コンサートホールは良い響きであってほしいです。音環境は見えない性能ですが、建物の重要な要素の一つです。
大林組は、建物の音環境の設計・調査・シミュレーション・対策の幅広い技術を有し、これまで多くの対応実績を重ねてきました。お客様の建物の価値をさらに高めるため、快適な音環境の実現にこれからもまい進して参ります。
音の問題の多くは、それを聞く人の主観が大きく関係し、物理的な問題と心理的な問題が複雑に絡み合います。聞けば分かるなど、竣工後即座に良否が判明するので緊張しますが、それが音響工学の醍醐味でもあります。今後も「使ってもらえる技術」をめざして取り組みます。
建築火災時の避難安全対策は、火災覚知、消火、内装制限、煙制御、延焼防止、避難施設、避難誘導まで多岐にわたります。また、在館者の歩行能力、可燃物密度、天井高さや出口幅など空間条件、階数により、対策の効果は異なります。
研究対象は、避難行動や煙流動に関わるシミュレーション技術、対策技術、さまざまな要素を総合的に評価するための避難安全性評価手法です。
主張せず、日常に溶け込みながら、火災時には皆さんをしっかり守る、そんな空間づくりに貢献していきます。
開発技術の物件適用や専門知識を活用した支援業務を通じた社会貢献を心がけています。研究開発と社会の距離が近づき、やりがいを感じることができます。また、社会貢献を通じて触れた意見や疑問を新たな研究課題としています。
世界で5番目に多い日本のCO2排出量(エネルギー起源)のうち、約3割を建築・設備が関わる業務・家庭部門が占めています。また建物のライフサイクルにおいて、運用時に消費するエネルギー由来のCO2排出量割合は取り分け多く、ZEB・省エネ技術が地球温暖化対策に果たす役割は大きいと考えます。
とは言うものの、主役の居住者が快適と思わなければ、その空間は利用されません。居住者の快適性を損なわず、自然エネルギーを含めエネルギーを賢く使い、省エネ性能を継続できる技術開発を行い、持続可能な社会への貢献をめざします。
快適性や省エネ性の評価軸は空間利用の目的や居住者の好みだけでなく、時には地域や時代などによっても変化します。現地のデータ・声を地道に拾い上げ、分析を継続して、その中で最適解を導き出すなど、泥臭く継続的で柔軟な対応が必要であることを痛感しています。
音は、コンサートホールのようなパフォーマンス空間だけではなく、日常を過ごすさまざまな空間においても大切な要素の一つです。快適な音環境の実現のためには、用途に適した響きの長さを得る技術に加えて、静けさを得るために騒音を制御する技術が必要です。構造体から仕上げ材まで、音に係る建築的な要素は多岐にわたり、部材を組み合わる際のディテールの良否も音響特性に影響します。各要素の特性を考慮した解析技術の研究を進め、静かで快適な音環境の実現に貢献していきます。
音環境の設計では、大きさや響きの長さなどの物理的な側面だけではなく、人がどのように感じるかの心理的な側面まで想定しなければならない点、難しさと面白さがあります。物理量と心理量のバランスを考慮し、合理的な音響設計につなげていきたいと思います。
建築土木を問わず、建設行為の途上で発生する多様な技術的課題、特に規基準にない対象について、物理学の考え方に基づいてそれらの解決に努めています。
洋上・陸上風力あるいは気象災害に関連する気象流体解析、屋根や超高層建物外壁の雪氷対策、建設現場の作業者避雷対策、スポーツ芝生育に関わる日照環境解析、建物への火山灰降灰影響、さらには宇宙エレベータの力学解析など、幅広く取り組んでいますが、すべて地球物理学でとられる方法を応用しているところが共通しています。
物理学的合理性ある視点を常に持つことを最も大事にしています。自然は人の思いとは関係なくさまざまな現象を生起させます。建物や土木構造物は自然の厳しさにさらされるため、経験や大勢の考え方を重視しながらも、一方では、常にそれで十分なのかと問い続けることが重要です。
”どこからか地下鉄のゴーという音が聞こえる。。。” ”上の階の住人の足音が気になる。。。” このような音は固体音と呼ばれます。固体音は、大元が振動源であるため、建物に如何に振動を伝えないようにするかが最も重要で、その他、建物躯体や内装による対策などを組み合わせて、発生する音を低減します。
大林組では、これまで蓄積してきた高精度な予測技術と合理的な固体音対策手法を用いて、最適な音環境を実現します。
実物件の支援業務を行っていると、さまざまな課題が新たに見つかる一方で、建物ができてくると音の検証は容易にでき、貴重なデータを得ることができます。これらの課題やデータを研究開発にフィードバックすることが重要だと考えています。
これまでの快適な空間とは、地震や台風などの影響を建築で遮断し、設備で室内環境が調整されたものでした。しかし無限にエネルギーを消費することで快適空間を提供する時代は終わりました。これからは空間(サプライサイド)からの視点ではなく、利用者(デマンドサイド)の要求に基づいた空間の在り方が求められます。音・風・熱・光・空気質といった物理量だけでは測れない新しい指標を用いて、人と空間の関係を再構築していきます。
研究分野は細分化され深化されるにつれて、実社会とのかかわりが見えなくなります。常に複数の分野に目配りをし、時には専門分野以外のことにも手を出すことが必要です。そして知的好奇心と行動力を持つことが、研究開発を続けていくうえでのカギです。
岩盤の力学的な性質には未知なことが多く、掘削中にトンネルの一部が崩落することや、開通後に変形し、通行止めを伴う補修工事が必要となることがしばしば起こっています。
岩盤には亀裂が含まれることが多く、亀裂と岩塊が組み合わさった強度や変形性を評価すること、開通後に生じる変形のような、将来の挙動を定めるパラメータを評価することなどが課題となっています。
トンネルや地下空洞を安全で経済的に提供するため、このような課題に挑戦しています。
何でこのような変形が生じるのだろうか、といった現象の元となっている仕組みについて考えるようにしています。岩盤は自然の産物で、すべてを明らかにすることは困難ですが、基本的な仕組みにのっとることで、予測精度を高めていけると考えています。
掘削工事は、それまで地中で安定していた力のバランスを変化させる行為です。これを再び安定した状態でバランスを確保するのが、山留めの役割です。山留め架構の安全性のみならず、周辺地盤・構造物への影響や地下水分布の変化などを考慮する必要があります。
大林組は、これらの課題に対して現場と支援部門が連携し、各現場の状況に応じた最良の山留め計画をめざしています。また、施工中においてもICT技術を活用した地下水揚水の運転管理や山留め計測管理を通じて、リアルタイムに情報共有を行い、次段階にフィードバックしています。
現場で作業されている協力会社の方の「ちょっとしたひと言」が、行き詰った問題解決の重要なヒントになった経験が多くあります。現場の実情を熟知している方々への敬意を忘れずに、研究開発に取り組んでいきたいと思います。
地盤は目立ちませんがあらゆる構造物の土台となる部分です。安全・安心な構造物をつくるためには、土台となる地盤の性質や特徴を理解し、評価することがとても大事です。また、持続可能な社会を実現するためには、リサイクル材の活用や地下水などの環境への配慮も必要です。
これまでリサイクル材料を含む地盤材料に関する問題や切土・盛土問題、地下水問題に関する技術支援、研究開発に主に携わってきました。地盤に関するものづくりの技術で社会に貢献していきます。
現場が使いたい、あるいは現場で使える技術の開発を常に心がけています。
どんなにいい技術でも現場で使えなければ意味がありません。室内実験によるメカニズムの検討から現場への適用、改善まで、その技術が現場で役立つようになるまでが技術開発だと思って取り組んでいます。
都市部の建設工事では周辺の自然環境や住居・公共インフラへの十分な配慮が求められ、計画段階より地盤の挙動の予測や適切な対策の選定が重要となります。そのための予測評価に有限要素法(FEM)の数値解析が用いられています。大林組では3次元FEMコード:GRASP3Dを開発し、種々の建設プロジェクトへの適用を経て、改善と予測精度向上のノウハウを蓄積しています。
近年の自然災害による被害の甚大化に対しても、有限要素法による予測評価に加え、個別要素法の適用技術の研究にも取り組んでいます。これらを活かして、より安全で合理性の高い社会基盤の建設に向けて貢献していきたいと考えています。
地盤の解析技術を活かして、現状の設計法ではカウントできていない、現場の地盤の秘めたる耐力を拾い上げて、建設工事のコスト低減・環境負荷の軽減につなげていきたいと考えています。
日本のエネルギーを確保するために、ダム、発電所基礎、地下備蓄基地の岩盤の研究を行ってきました。安全が保たれ経済が発展した今、それが地球環境に大きな負の影響をもたらしています。地球環境の持続可能性をめざして温室効果ガスの削減をしなければなりません。
岩盤の水理、力学、化学特性を理解し、CO2をマイクロバブルで地中に貯留する、再エネ余剰電力で空気を圧縮して岩盤中に貯めて足りない時に発電するCO2フリーの発電などを研究し、CO2削減と経済発展の両立をめざしています。
自然である岩盤は技術者に協調しません。それはいくらデータを集めても本質が多くの影響因子に隠れて見えないからです。本質を見切るためには、新しい発想、イメージ、理論が必要であり、イノベーションはそれに依存します。まずは格物致知、そして適用です。
多くの人が生活基盤とする臨海都市部では軟弱地盤が厚く堆積している場合が多く、その物性評価と挙動把握は不可欠です。比較的浅い部分では地盤改良を行うことで土地利用に必要な残留沈下低減や支持力確保を解決することができます。一方、上載荷重が大きな場合には、地盤改良が難しい深い洪積粘土層の沈下が問題になることがあり、場合によれば工事完成後長期間にわたって悩まされる問題です。沈下特性を示す圧密特性を精度よく評価することが求められます。
また、地盤の挙動に対しては予測が実際に則しているのか、模型実験などを通して確認したい要望は数値解析が高度になった現在でも、根強くあり、大型遠心模型実験装置を用いた模型実験を行い、現場実験では確認が難しい土留めやトンネル切羽の破壊過程などを可視化して、対策工の確認や新たなアイデアの創出に寄与しています。
模型実験は、一種の「構成式」という考えに沿うと、模型実験を活かした、挙動の確認、破壊モードの確認は、対策工の検証の大きなよりどころになります。土を触り、地盤の変形挙動を見ることで、地盤構造物の理解が共有化できた時の達成感を糧に、新しい工法の挙動検討に取り組んでいきます。
土や岩などの地盤材料は、水や振動の影響を受けやすく、豪雨や地震によってさまざまな問題を引き起こすことがあります。しかし、地盤材料はその特性を良く調べ、うまくコントロールできれば、現場で大量に安く入手できることから、最高の土木材料となります。さらに、豪雨や地震による地盤の変状や崩壊のメカニズムを調べ、そのメカニズムに合った対策を施せば、豪雨や地震時の安全性も確保できます。
先人の知恵を借り、現実を直視し、自身の知恵を絞りだす。課題に対してはその現象を深く調べ、そのメカニズムに合った対策を研究開発します。研究員は長年コツコツと知識と経験を蓄積し、難題に直面した時にはそれらの知識と経験を駆使し、決してあきらめないで解決する粘り強さが必要だと思います。
地下深部は、掘削してみないと正確な地質状況は分かりません。トンネルや地下空間を安全に、かつ効率よく造るためには、地質の状況や挙動を理解しリスクを適切に予測することが重要です。
大林組では、掘削した空間周辺の力学的・水理学的岩盤挙動を最新式「光計測」によって可視化することを可能にしました。また、掘削最前線の切羽評価を人工知能「AI」で判断させる技術を開発し、施工から維持管理段階での収集情報を「トンネルCIM」で一元管理することを可能にしています。これらの開発技術によって、設計~施工~維持管理の全域で安全・安心なインフラ構築をめざしていきます。
開発する技術は現場での適用を常に念頭に置いています。現場で発生する事象をよく観察し、物ごとの本質を見極めることこそ技術者の本分であると考えています。これまで開発してきた技術によって、社会インフラの構築や整備に貢献していきたいと考えています。
基礎は地中にあるため、普段は全く人の目に触れることはありません。しかし、文字どおり建物を支える「縁の下の力持ち」となる重要な構造物です。建物を支持する基礎に求められる性能は、「有害な沈下や傾斜を起こさず、地震時にも安全に建物を支持すること」であり、このような性能と品質を合理的に確保できる基礎の技術開発に取り組んでいます。
建物の重さ・大きさ・高さ・重要度・地盤の硬軟・地震時の挙動・コスト・工期などを考慮に入れて、お客様のニーズに応える最適な基礎を提案し、これまで多くの実績を積み重ねてきました。多くのノウハウを活かし、今後も安全・安心かつ合理的な基礎を提供していきます。
トラブルや失敗の中にこそ、研究開発すべきテーマのヒントが潜んでいると思います。
ICTの進歩から新しい技術が建設分野で活用されています。3次元データも同様に活用が進んでいますが、これらをただ使うだけでなく「データモデル」+「センシング」という観点から施工プロジェクト管理技術の提案を行い、施工管理の合理化と高度な品質管理を実現するシステムを研究し、実装提案しています。
また、建設ロボットや遠隔操縦、施工の自律化、高速通信の活用などの研究開発も行うとともに、施工時の重機の振動を利用した対象構造物のリアルタイム品質管理システムやそれらを優位的に組み合わせた施工管理システムを開発しました。
近年の土木分野では研究開発の高度化が進み、数多くの技術開発が行われ現場適用されています。これらは重要な施工(管理)技術ですが、工事をプロジェクト管理として捉え、全体の最適化を図ることも重要です。このような提案を、基本的な工学と新しい技術の組み合わせで、施工の合理化を念頭に行うことがこれから必要とされます。専門分野を2つ以上極めた「π型人間」がこれから必要だと言われていますが、自分自身も基本の地盤工学とともに、土木情報学、ロボティクスをさらに研究していきたいと思います。
自然豊かな日本においては、その恩恵を享受するとともに、多くの災害にも襲われます。これら自然災害に強い社会を形成していくためには、事前に敵を知りそのリスクを洗い出しておくことが重要です。
敵を知ることで、事前の予防手段や万が一の時の早期復旧計画の策定が可能になります。大林組はお客様の事業継続マネジメントを支えるべく診断から対策の実施までを支援し、レジリエントな社会の構築に役立ちたいと考えております。
敵をよく知り、被るリスクを分析しておくことは、事前・事後の戦略立案のために重要です。さまざまなリスクに対応するためには、普段からアンテナを張り、必要な情報を収集し、かつ周辺知識について勉強していくという地道な努力が重要だと思います。
大林組技術研究所では、公正な研究活動を推進しております。
研究活動における不正行為等、お気づきの点がございましたら、
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