5. 特殊な構造を積み上げる

b) 外周部特殊足場

1 床のない場所で作業をするためには「足場」が必要

作業員が作業するところには、手が届く位置に作業用の床(作業床)が必要です。必要な場所に作業床がない場合は、作業期間中だけ仮に作業床を設置します。この作業床を支える骨組みや墜落防止の手すりなども含めた仮設設備を「足場」といいます。

出来上がった後も床がなく、円形パイプ状の鉄骨で人が立つこともつかまることもでき ない東京スカイツリーのような鉄塔では、ほとんどの作業場所に足場が必要になります。特に外周部に面したところでは、作業員の安全のみならず、絶対に物が落ちないような養生を兼ねることが必要となるうえに、形状や大きさも特殊なため通常用いる組立式の既製品が使えません。そこで東京スカイツリーの現場では特殊な足場を考案しました。

2 外周部特殊足場の役割と転用サイクル

3 「外周部特殊足場」とはどのような足場?

「外周部特殊足場」の特徴と考え方

現場の状況などを考慮すると、以下の大きな2つの特徴をもつ足場が必要となります。

「外周部特殊足場」はこうなっている

上の2つの特徴を実現するために下図のようにしました。

「外周部特殊足場」の組立て方

鉄骨工事の足場は最上部での取付け作業を省き、揚重回数を減らして効率的な作業をするために吊り上げる前にあらかじめ鉄骨に取り付けておくのが一般的です。

通常のサイズの鉄骨用足場は人力で取付けが可能な大きさなので、柱材を横にした状態で取り付けます。東京スカイツリー塔体の外周部特殊足場は、下の写真のように柱材を立てたままの状態で支持する専用の柱架台を荷捌きヤードに作り、 大きな足場のままクレーンで取り付けます。

「外周部特殊足場」の取り外し方と吊り方にも工夫あり!

作業が完了して不要になった一番下の段の足場を一体のまま取り外すには、外部側へと水平に引き抜く必要があります。

常にネット内での作業に

すべての作業がネット内で行われるように、下図のサイクルで特殊足場を転用しています。

取付け完了後、足場内での溶接などの作業で物が落ちないようになっているのは当然ですが、足場を取り付けた鉄骨の組立や足場の取外しのときも物が落ちないようにネット内で作業することが理想的です。今回採用した特殊足場は、それを可能にしました。

未知の高さの東京スカイツリー施工においての、鉄骨の積上げに対するさまざまな課題

・高所から塔体外部への物の落下防止
・高所での作業員の安全確保
・効率の良い鉄塔組み立て作業の実現
これらの解決のため、塔体外周部の足場を「ワンタッチでの着脱・転用可能な特殊足場」として考案し、採用しているのです。

MOVIE

タワークレーンによる組み立て

塔体鉄骨の積層工法