２ 外装工事をシステム化
●鉄骨工事用のタワークレーンを使わない |
がキーワード！ |
●エレベーターを使わない |
●風を制する |
タワークレーンは鉄骨を組み立てるのに精一杯で、外装工事に使用する余裕がありません。また、塔体内部は鉄骨が入り組んでいて、外装材を運ぶための大きなエレベーターを設置するスペースもありません。
そこで、この難題を解決するために考案したのが、「シャフト外装CW垂直水平搬送システム」です。
① 外装CWの搬入
外装パネルは、工場で専用パレットに2枚ずつユニット化され、そのまま荷揚げできる姿で40フィート（約12ｍ）コンテナに詰め込み、海上輸送後、コンテナのままで港から現場へ直送します。現場搬入後、コンテナから引き出し、回転機構を備えたフォークリフトで、吊り上げと取付けを行いやすい縦向きに変え「垂直ガイド」にセットすると、一度に2枚 の外装パネルの荷揚げができます。多機能の専用パレットは、フォークリフトによる回転時や垂直ガイドレールを使用した吊り上げ時におけるパネル保持機構を併せ持ち、このパレットを使用することにより、限られたスペースでの効率良い荷捌き作業が可能となります。
② 超高揚程テルハ
一般的に使用されるテルハは、20〜30m程度の高さを1分間に約15mの速度で荷物を揚重します。大林組で東京スカイツリー用に設計・開発したテルハはなんと通常の10倍以上となる400mの高さまで、そして、最大1分間に70mの速度で揚重できるのです。さらに複雑な鉄骨の中にも据えられるよう、超コンパクトな設計になっています。この「超高揚程テルハ」の自社開発によって、鉄骨工事用クレーンも、大きなエレベーターも使わないで外装材の揚重が可能となりました。
③ 垂直ガイドを活用した外装パネルの揚重
外装パネルユニットは、複雑に組まれた鉄骨の狭い隙間（鉄骨との距離わずか10㎝）を揚げなければなりません。しかも、揚重中のユニットが300ｍの高さで横風を受けると、なんと1tもの力で横に押されてしまいます。これらを解決する強い味方が、「垂直ガイド」です。 パネルを沿わせて、揚重するレールのような役割を果たします。
④ 荷取ステージ
1階から揚重された外装パネルを、水平搬送システムへ中継するための空中基地です。外装パネルを最大で4枚ストックでき、外装パネルを水平搬送システムを使って取り付けている間に、超高揚程テルハで次のユニットを揚重します。取付用、揚重用にクレーンを役割分担することで揚重効率、作業効率を高めることが可能となります。
⑤ 水平搬送システム
水平搬送システムは、シャフト鉄骨外周部全周にレールを配置し、このレールに沿って走行するクレーンを2基備えています。外装パネルを荷取ステージから取付場所へ横移動後、取付レベルまで垂直方向に移動させ、外装パネルを取り付けます。
⑥ セルフクライミング
なんとこの揚重水平搬送システムは取付レベルの外装パネルの施工がすべて完了すると、自分で次の高さへ登ってしまうのです。セルフクライミングと呼ばれるこの機構は、システム機器の移動に鉄骨工事用のタワークレーンを使わなくて済むので、絶え間なく行っている塔体鉄骨工事や全体工程に負担を与えることなく外装工事が行える、他の超高層ビル建設では例を見ない機構です。
