都心から半径約15kmの圏域を環状に連絡する東京外かく環状道路(外環道)。現在、関越自動車道・大泉ジャンクション(JCT)と東名高速道路・東名JCTの間では、巨大シールド機による本線トンネルの掘削が東名JCT側から始まっており、北に約7kmの地点では、交差する中央自動車道(中央道)とのジャンクションの構築が進められている。
大林組は、地下を走る外環道本線と地上の中央道とをつなぐジャンクションの北側連結路(ランプ)の一部の整備を行っている。各道路の上下線に向かう路線や新設されるインターチェンジの入退路などを、地中に配置していく。
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本線トンネルと中央道などをつなぐ連結路を整備
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施工箇所A~A'の地中断面図
地下躯体を細分化し2つの方法で構築
「徐々に変化していく深度に応じて躯体を11区画に分けて施工します。そのうち早期に引き渡す必要のある立坑2区画と掘削深度が30mを超える1区画の計3区画(下図:緑)をニューマチックケーソン工法で、浅い8区画(下図:赤と青)は開削工法で構築します」と、所長の森山が語った。
ニューマチックケーソン工法は、地上で鉄筋コンクリート(RC)造の大型の箱、函体(ケーソン)を構築しながら、自重で沈下させていく工法だ。原理は、水中に逆さまに沈めたコップ内の空気圧と水圧が均衡し、水が入ってこないことを応用したもので、地下水のくみ上げを要さないため周辺地盤や井戸への影響を小さくできるメリットがある。
もう一つの開削工法は、地盤を地表から直接掘削していくものだ。支保工で土留めしながら重機で掘り進め、最下部まで掘削した後、底版、側壁の順に下からコンクリートを打設し、躯体を構築する。
ICT技術を品質と精度の向上に活かす
地下水が豊富な場所で地中構造物を建設する場合、コンクリートの品質や沈設精度の管理が重要になってくる。そのため、ICT技術やCIMを積極的に取り入れている。
例えば、コンクリートミキサー車に搭載したICタグ。どのプラントからいつ運んできたものか、そしてどこにどれだけ打設したかを一括で管理できる。
またケーソンのコンクリート打設にはCIMを活用し、打設状況を3次元モデル上で確認しながら、打設量の調整や、次に打設する箇所の打ち重ね時間の管理を行っている。これらの施工中の情報は、完成後の維持管理にも活用できると期待されている。
ほかにも沈下掘削では、沈下量や傾斜量をリアルタイムで表示するだけでなく、土圧や摩擦力などの計測器をケーソンの四隅に設置し、常時、遠隔操縦室のモニターで確認。重機の操縦に反映することで誤差のない垂直沈下を実現している。
地下水の流れを止めない
掘削する武蔵野れき層は地下水に富み、都民の貴重な水源の一つとなっているため、地下水の保全措置をする必要がある。そこで、トンネルの東西に大口径の井戸と、地下に両者を結ぶ水路トンネルを構築。上流側の井戸で集めた地下水を下流側に流すことで、工事着手前と変わらない地下水の流動性を確保していく予定だ。
メリハリをつけた業務で活力を創出
長期の工事でも、業務にメリハリがつくよう、2016年の秋から4週8休を取り入れた。その結果、数ヵ月間で月平均の休日取得率が1.5日増加したという。「安全を徹底させるためには、心身を良好に保つことと、コミュニケーションが重要です」と話す所長 森山は、社員と作業員の双方にとって働きがいのある環境づくりに意欲を見せる。
交通ネットワーク構築の一翼を担う工事は、関係者の連帯感で造られている。
(取材2017年1月)
工事概要
名称 | 東京外かく環状道路 東京外環中央JCT北側ランプ改良工事 |
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場所 | 東京都三鷹市 |
発注 | 国土交通省 |
設計 | 大林組 |
概要 | 施工延長461.8m(Aランプ257m、Hランプ204.8m)、ニューマチックケーソン3函(最大深度40.7m、掘削面積計2,054m²)、開削工法(幅83m、最大深度30.3m、掘削土量36万1,600m³)、地下水流動保全工事3ユニット、排水構造物、仮設工 |
工期 | 2015年3月~2018年3月(予定) |
施工 | 大林組、大本組 |