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省エネルギー

ZEB (Net Zero Energy Building)ってなに? 「使うエネルギー」と「つくるエネルギー」を差し引きゼロにする建築物とは?

近年、ゼネコンや建設業界、不動産デベロッパーの間ではZEBというキーワードが頻繁に語られるようになりました。「ゼブ」と読みます。

ZEBは「Net Zero Energy Building(ネット・ゼロ・エネルギー・ビルディング)」の頭文字をとった略称です。カーボンニュートラル実現において非常に重要なキーワードだといわれていますが、それは一体どういうことなのでしょうか。この記事では、そのZEBについて詳しくご紹介します。

建築物は建てた後から大量のエネルギーを消費する

オフィスビルなどの建築物は、完成して実際にテナントが入居して稼働が始まると、大量のエネルギーを消費するようになります。まず、エアコンや換気扇などの空調、そして照明などに電気を使います。エレベーターやエスカレーターなども電気を消費します。

オフィスビルだけでなく、工場、ホテル、病院、大型ショッピングセンターなどの商業ビル、飲食店、学校など、さまざまな目的で稼働する建物は、想像以上に膨大なエネルギーを使用しています。

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ZEBってなに?

さて、ここからが本題です。

ZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビルディング)とは、室内環境の質を維持しつつ大幅な省エネルギー化を実現したうえで、再生可能エネルギーを導入することにより、年間の一次エネルギー消費量の収支をゼロとすることを目指した建築物をいいます。

一次エネルギーとは、自然界から直接採取できるエネルギー源を指します。石油、石炭、天然ガスなどの枯渇性のものと、太陽光、太陽熱、風力、水力、地中熱など再生可能なものに分類されます。一次エネルギーは、そのままではエネルギーとして使用することはできません。発電所などで加工・転換することで、電力や都市ガス、灯油などの二次エネルギーが得られます。

建築物利用による年間での一次エネルギーの消費量をネットゼロ(正味ゼロ)とするためには、建築物や設備のエネルギー性能の向上や、複数建物間でエネルギーを融通し合って最適化を図ること、再生可能エネルギーの活用などが重要だと考えられます。

具体的には、自然エネルギーの積極的な活用や高効率な設備システムを導入するなどさまざまな工夫を取り入れつつ、室内環境の質を維持しながら大幅な省エネルギー化を実現すること。そして、再生可能エネルギーを導入してエネルギー自立度を高め、年間の一次エネルギー消費量の収支をゼロとすることを目指していく取り組みです。

つまり、ZEBとは、使うエネルギーを節約する(省エネルギー)だけでなく、つくるエネルギー(創エネルギー)によって、使うエネルギーを差し引きゼロにする建築物を指しています。

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消費エネルギー削減の達成度により4段階に分類されるZEB

ZEBは、エネルギー削減の達成度によって4つの段階に分類されています。

ZEBの4段階を表示した図です。詳細内容は以下のテキストで説明します

<ZEBを見据えた先進的ビル(ZEB Oriented/ZEB Ready)>

エネルギー負荷を低減するためのパッシブ技術(高断熱化・日射の遮へい・昼光利用・自然換気など)に加え、エネルギーを上手に使うアクティブ技術(高効率設備システム)を最大限に活用し、第一ステップとして50%以上の省エネルギーを目指します。

① ZEB Oriented

ZEB Oriented(ゼブ・オリエンテッド)とは「省エネ」によって全体の消費エネルギーの30%〜40%以上の削減を達成している建物です。

② ZEB Ready

ZEB Ready(ゼブ・レディ)とは、「省エネ」によって全体の消費エネルギーの50%以上の削減を達成している建物です。



<ZEBに限りなく近いビル(Nearly ZEB)>

ZEB Readyの要件(省エネ50%以上)を満たしつつ、太陽光・太陽熱発電などの再生可能エネルギーの導入による「創エネ」を加え、エネルギー収支をゼロに近付けます。

③ Nearly ZEB

Nearly ZEB(ニアリー・ゼブ)とは、「省エネ」によって全体の消費エネルギーの50%以上の削減を達成しつつ、「省エネ」と「創エネ」の合計が75%以上を達成している建物です。



<ゼロエネルギービル(『ZEB』(ネットZEB))>

省エネ・創エネを極限まで推し進め、年間の一次エネルギー収支ゼロ以下を達成します。消費エネルギー以上の創エネで余剰が生じる場合もあります。

④ 『ZEB』(ネットZEB)

『ZEB』は、「省エネ」によって全体の消費エネルギーの50%以上の削減を達成しつつ、「省エネ」と「創エネ」の合計が100%以上を達成している建物です。

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ZEBの認証

前項で紹介した4つのZEBの種類は一般社団法人住宅性能評価・表示協会が登録したBELS認証機関によって認証されます。

BELS(ベルス:Building-Housing Energy-efficiency Labeling System)とは、建築物の省エネルギー性能を評価・表示する制度です。建築物省エネ法(建築物のエネルギー消費性能の向上等に関する法律)第33条の2に基づき建築物の省エネルギー性能を表示する第三者認証制度の一つであり、一般社団法人住宅性能評価・表示協会が運営しています。

ZEBの認証を取得することにより、その建物のオーナーである企業の信頼性が大幅に向上します。これから新規に建築するときには、設計時からZEB認証の取得を前提とすることが求められるようになるでしょう。

ZEBの判定は、設計時に計算プログラムにより算出されるBEI(Building Energy Index)という数値で行われます。

BEIとは「Building Energy Index」の略称で、建築物省エネ法において住宅・建築物の一次エネルギー消費性能の基準値として用いられる指標です。再生可能エネルギーを除きBEI≦0.50の場合に、ZEBを達成したと判定されます。詳しくはこちらをご覧ください。

また、ZEBに限らず、建築物の評価・認証・表示を行う制度は世界各国に存在します。

BELS

エネルギー性能に特化した評価で、設計時点での性能を評価します。
https://www.obayashi.co.jp/carbon_neutral/dictionary/detail/zebbels.html

CASBEE、LEED

エネルギー性能に限らず総合的な環境性能を評価します。
https://www.obayashi.co.jp/carbon_neutral/dictionary/detail/casbee.html
https://www.obayashi.co.jp/carbon_neutral/dictionary/detail/leed.html

WELL

働きやすさや健康性などへの注目の高まりから、快適性や健康性を評価します。
https://www.obayashi.co.jp/carbon_neutral/dictionary/detail/well.html

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企業に求められるZEBへの取り組みとは?

地球環境に配慮し、ZEBの認証を取得することで、その企業の信頼性と企業価値が向上します。これは、ZEBが環境に配慮し、カーボンニュートラル実現に貢献する建築物だからです。

パリ協定において設定された2030年の温室効果ガス削減目標や、2050年のカーボンニュートラル実現に向けた取り組みは、世界的な動向として重視されており、これらの目標に貢献する行動は企業のイメージを大きく向上させることでしょう。

ZEB認証を取得することは、これらの環境目標に積極的に貢献していることを示す証となりますが、このほかにも、「快適性・知的生産性の向上」、「建物資産価値の向上」、「従業員の省エネ意識の啓発」、「光熱費のコスト削減」、「災害時の事業継続性の向上」「株主・投資家へのアピール」などの多くのメリットが期待されています。

大林組はお客様のZEB実現に向けて、コンサルティング・設計・施工・建物運営維持管理などあらゆる場面でサポートしています。

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大林組の取り組みはさらに進化

大林組はZEBの建築だけでなく、資材調達から解体までの建物のライフサイクル全体で、二酸化炭素(CO2)排出量ゼロ(正味)を目指す取り組みを行っています。

原材料の調達、資材製造、建物の施工、使用を経て解体廃棄するまで、つまり建物の誕生から廃棄までの「一生涯」に排出されるCO2のことをホールライフカーボン(Whole Life Carbon:LCCO2)といいます。

ホールライフカーボン(LCCO2)とCO2削減方法の取り組み

この図にあるように、建物の「運用段階(B6-B7)」に排出する「オペレーショナルカーボン」において実質ゼロを目指すことがZEBに当たります。「オペレーショナルカーボン」の削減では、ZEB実現に向けた取り組みとして、「省エネ」や再生可能エネルギーによる「創エネ」を推進しています。

大林組では、新築・改修・解体時(A1-A5、B1-C4)に排出する「エンボディードカーボン」の削減にも取り組んでいます。「新築建物の資材製造から施工(A1-A5)」までに排出する「アップフロントカーボン」の削減では、木造・木質化、低炭素資材の活用、建材のリユース・リサイクルなどを推進しています。

また、運用中の建物の改修や設備のメンテナンス、その後の解体がしやすいよう設計段階から検討し、使用建材のリユース、リサイクル、リデュースを見越した設計手法を導入することで、CO2削減に取り組んでいます。

さらに大林組では、オンサイト(現地)での省エネルギー・ゼロエミッション施工を徹底し、工事現場で削減しきれない消費エネルギー分を、オフサイト(遠隔地)創エネルギーやグリーン電力証書の購入により、ゼロにすることにも取り組んでいます。

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大林組のZEB実績

大林組では、大林組技術研究所本館 テクノステーションにおいて、日本初のZEB建築を実現しました。以来、ZEB建築のリーディングカンパニーとして、さらに多くの環境認証を受けた建築を生み出してきました。ここではそのうちのいくつかをご紹介します。



<ZEBのクラス:『ZEB』>

大林組技術研究所 本館テクノステーション

所在地:東京都清瀬市
竣工:2010年9月
ZEBのクラス:『ZEB』(基準値から120%削減)
日本初!本格的なエネルギー収支ゼロを達成。2014年度の達成後、継続してソースZEB(敷地内で収支ゼロ)を達成中です。
https://www.obayashi.co.jp/news/detail/news20140408_01.html



<ZEBのクラス:『ZEB』/Nearly ZEB>

クボタ グローバル技術研究所

©株式会社 伸和

所在地:大阪府堺市
竣工:2022年7月
ZEBのクラス(事務所):ZEB(基準値から109%削減)
ZEBのクラス(全体):Nearly ZEB(基準値から76%削減)
https://www.obayashi.co.jp/works/focus/article-06.html
https://www.obayashi.co.jp/news/detail/news20250129_1.html



<ZEBのクラス:ZEB Ready>

Port Plus® 大林組横浜研修所

Port Plus® 大林組横浜研修所の外観や内部の写真

所在地:神奈川県横浜市
竣工:2022年
ZEBのクラス:ZEB Ready(基準値から56%削減)
令和元年度サステナブル建築物先導事業(木造先導型)
平成31年度CLT活用建築物実証事業
https://www.obayashi.co.jp/works/focus/article-05.html
https://www.obayashi.co.jp/news/detail/news20230315_1.html



<ZEBのクラス:ZEB Ready>

横浜シンフォステージ(YOKOHAMA SYMPHOSTAGE®)

所在地:神奈川県横浜市
竣工年:2024年
ZEBのクラス(事務所):ZEB Ready(基準から50%削減)
https://www.obayashi.co.jp/works/detail/work_2822.html



<ZEBのクラス:ZEB Ready>

三井不動産ロジスティクスパーク船橋Ⅲ

所在地:千葉県船橋市
竣工年:2021年6月
ZEBのクラス(事務所):ZEB Ready(基準値から70%削減)
https://www.obayashi.co.jp/works/detail/work_2572.html

カーボンニュートラル実現に貢献し、さまざまなメリットを生むことで、企業の価値を向上させるZEBの取り組みは、これからますます注目されていくでしょう。

大林組ではさらにZEBの取り組みを進化させ、カーボンニュートラル実現に向けて、積極的な挑戦を続けていきます。