設計初期段階でZEB Ready達成評価を可能にするシステムを開発
簡易的な3次元モデルを活用した外皮負荷の試算により高精度かつ短時間に評価します
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プレスリリース
株式会社大林組(本社:東京都港区、社長:蓮輪賢治)は、簡易的な3次元モデルを活用して外皮負荷(※1)を試算することにより、設計初期段階で高精度かつ短時間にZEB Ready(※2)達成評価を可能にするシステムを開発しました。
開発背景
2050年のカーボンニュートラル実現に向け、2025年には改正建築物省エネ法が施行されるなど、建築物の省エネルギー化、脱炭素化の必要性が高まっています。特にオフィスビルではZEB Ready認証が求められるケースが増えており、建築計画時の省エネルギー性能向上に対するニーズが高まっています。しかしながら、設計初期段階では電気設備、空調設備などの詳細な仕様が決まっていないことから、建物の省エネルギー性能を正確に評価できないことが課題でした。
本システムの構成、特長
大林組が設計したオフィスビルの豊富なデータを基に、システム内において計算ロジックを定式化し、情報入力の簡易化を行うことで、設備仕様が定まらない設計初期段階において、短時間でのZEB Ready達成評価が可能です。なお、本システムは、設計者が日常的に利用する3次元モデリングソフトの「ライノセラス(Rhinoceros®)」、および既成の環境性能解析プラグイン(機能拡張プログラム)である「クライメイトスタジオ(ClimateStudio)」(※3)を使用しています。
本システムの特長は、以下のとおりです。
外皮負荷を判断指標として高精度に省エネルギー性能を評価
建築物の省エネルギー性能を左右する空調設備の仕様は、外皮負荷の影響を大きく受け、夏期冷房ピーク時に使われるエネルギーの50%以上が、外皮負荷による熱の冷却に使われる場合もあります。本システムは、過去にZEB Ready認証を取得したオフィスのデータを活用し、外皮負荷を判断指標としてZEB Ready達成評価を行うことで、設計初期段階でありながら、高精度に省エネルギー性能を評価することができます。
簡易な入力で短時間での評価が可能
外皮負荷の算出は、従来、CADデータを用いて専門知識のある設備設計者が数日かけて行っていましたが、本システムでは、あらかじめ計算ロジックを定式化し、簡易に必要情報を入力できるユーザーインターフェースとすることにより、意匠設計者自身が数十秒で外皮負荷を試算することが可能です。
多様な建物形状に自在に対応
本システムは矩形平面に限らず、さまざまな形状の建物に使用することができ、加えて3次元モデル上の庇やルーバー材、外壁の凹凸などによる各部位の日除け効果も計算結果に反映できます。環境に配慮した建築デザインの有効性をリアルタイムに確認しながら設計案を比較検討し、より効果的な提案をすることが可能となります。
今後の展望
大林組は今後、本システムの対象をオフィスビル以外の建物用途にも拡張するとともに、ZEB Ready以外の認証基準にも対応範囲を広げていく予定です。これにより、省エネルギー性能に優れた建築物の提供を通じて、カーボンニュートラルの実現に貢献していきます。
- ※1 外皮負荷
外部から建物の外壁、開口部などの「外皮」を通して室内に入る熱負荷の総称
- ※2 ZEB Ready
年間の1次エネルギー消費量が正味ゼロまたはマイナスの建築物であるZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)を見据えた先進建築物として、エネルギー消費量を50%以上削減した建築物
- ※3 クライメイトスタジオ(ClimateStudio)
米国の建設系システム会社であるSolemma LLCが開発した建築、エンジニアリング、建設分野を対象とした設計者向けの環境解析ソフトで、3次元モデリングソフト「ライノセラス(Rhinoceros®)」のプラグインとして動作する
以上
この件に関するお問い合わせ先
大林組 コーポレート・コミュニケーション室広報課
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