海外事業の新たな展開

2008(平成20)年4月、それぞれ別個の組織として事業を展開してきた東京本社の海外建築事業部と海外土木事業部を統合し、海外支店を設置した。海外建設事業全体の損益管理を徹底するためには、情報の一元化・共有化や蓄積した知識・ノウハウを共有・深化することが重要であり、原価管理およびリスク管理機能を強化し、収益力の拡大をめざしたものであった。2010年7月には、アジアおよび北米の域内管理を行う海外統括事務所を設置(各統括事務所には総務部、土木部、建築部を設置)するとともに、海外支店に企画管理部を設置(企画部と総務部を統合)し、土木第一部〜第三部、建築第一部〜第三部を各二部制に再編、設備部を廃止した。

この間の海外での代表的な施工実績としては、フーバーダムバイパスプロジェクト-コロラドリバー橋(コンクリートアーチ橋として北米で最長、2010年10月竣工)、ドバイメトロプロジェクト(総延長約76km、世界最長の全自動無人運転鉄道システム、2011年8月竣工)が挙げられる。

一方、東南アジアでは、日系企業案件を受注の主対象として営業してきたが、新たに欧米グローバル企業の案件にも積極的に取り組む方針が示され、IT企業、石油関連企業などからの受注実績を挙げている。また新たな重点市場として、カナダやオセアニアを重要地域と位置づけた。2011年3月、水処理施設などの土木工事を得意とし数多くの施工実績と高い技術力を有するケナイダン社(オンタリオ州ミシソーガ市)をM&Aにより取得し、11月には、同社と当社の現地法人である大林カナダ(2011年3月設立)のJV方式により、トロント市の鉄道立体交差化事業「ウェストントンネル建設工事」を受注した。また、同年9月には、ニュージーランドで、同国最大の道路プロジェクトを構成する「ウォータービュー高速道路建設工事」を同国の建設会社とのJV方式で受注し、ニュージーランド事務所を設置(11月)した。同年12月には、2022FIFAワールドカップが開催されるカタールに、中東事務所(2011年7月にドバイ総合事務所を改組して設置)カタール分室を、2012年3月には香港に香港事務所を設置した。