株式会社大林組(本社:東京都港区、社長:白石達)は、生コンクリートの流動性を最大3時間延長し、コールドジョイント(※1)や充填(じゅうてん)不良を防止する「フレッシュキープ工法」を開発しました。
生コンの鮮度(ワーカビリティー)は、生鮮品と同様、時間とともに低下します。ワーカビリティーが低下したコンクリートの打ち重ねはコールドジョイントの発生原因となり、コールドジョイント部分から水分や塩分が浸入し鉄筋腐食が生じると、コンクリート構造物の耐久性と構造性能が大きく損なわれます。このため、コンクリート標準示方書(土木学会、2012年制定)では、コンクリートを練り混ぜてから打ち終わるまでの時間の限度を2.0時間以内(外気温が25℃を超える場合は1.5時間)、許容打重ね時間間隔(※2)を2.5時間以内としています。
しかし、全国の生コン工場数は大幅に減少しており、現場までの運搬距離や時間が長くなることで、現場内での作業可能な時間が短くなっています。さらに、夏季は外気温が高いため流動性が低下しやすく、充填不良が生じるリスクが高くなります。これまでは、(1)流動性の低下を見越し、高流動コンクリートなどの使用、(2)流動化剤の添加、(3)コンクリートの凝結を遅らせる超遅延剤の利用、などの手法が採られてきましたが、それぞれ(1)余剰な水分の蒸発時に収縮ひび割れが発生するリスクが高まる、(2)流動性が一時的に増加した後急激に低下する、(3)ブリーディング(※3)量の増大および初期の強度発現の遅れにより型枠の取り外し時期が遅れる、などの課題がありました。
今回、大林組は、メーカーと共同開発した特殊混和剤を、製造後のコンクリートに混入するだけで流動性を保持でき、許容打重ね時間間隔を最大3時間延長できる「フレッシュキープ工法」を開発しました。流動化剤を使用するより長時間流動性を保持することが可能で、強度発現時期は従来のコンクリートと変わらない工法です。
「フレッシュキープ工法」の特長は以下のとおりです。
- コールドジョイントの発生を防止できます
外気温や施工時間などが厳しい条件下でも、コンクリートの流動性保持時間の増大により許容打重ね時間間隔を最大3時間延長できるため、コールドジョイントの発生を防止できます。また、ブリーディング量、強度発現時期は元のコンクリートと同等のため、同じ工期、工程で、より耐久性に優れた高品質な鉄筋コンクリート構造物を構築できます。
- 取り扱いが容易で多様なコンクリートに安価に適用できます
メーカーと共同開発した特殊混和剤はJIS規格(※4)に適合しており、使用するセメント、骨材、混和剤の種類を選ばないため、普通コンクリートをはじめ、中流動コンクリートや高流動コンクリートにも適用できます。コンクリートの出荷時もしくは荷降ろし時に、アジテータ車のホッパーから特殊混和剤を添加するだけで容易に適用でき、生コン車の到着遅延などの突発的な事態に対して限定的に適用することも可能です。
また、材料コストは、従来技術である流動化剤に比べ約2割減、超遅延剤に比べ約3割減と、安価に適用でき、特殊混和剤をコンクリートに添加しても通常の生コンクリートの約1割増程度に抑えられます。
大林組は、今後、フレッシュキープ工法を積極的に適用し、いかなる施工条件においてもコストや工期に影響を与えることなく、高品質で耐久性に優れたコンクリート構造物を効率的に構築することで、安全・安心な街づくりに貢献していきます。
- ※1 コールドジョイント
先に打ち込まれたコンクリートの上に、後から打ち込まれたコンクリートが一体化しない状態となって、打ち重ねた部分に不連続面が生じること。水密性や耐久性に悪影響を与える。そのため、本来は先に打ち込まれたコンクリートが硬化する前に、次のコンクリートを打ち重ねる必要がある
- ※2 許容打重ね時間間隔
下層のコンクリートを打ち込んでから上層にコンクリートを打ち重ねるまでの時間の限度
- ※3 ブリーディング
コンクリート打ち込み後に表面に水が浮いてくる現象。浮き水の量が多いと鉄筋の下面に隙間が生じ、耐久性が低下する要因になるとともに、仕上がり面の沈み、ひび割れの発生原因となる。また、排水作業などの余分な手間がかかる。超遅延剤を用いると凝結時間が遅延するため、水が浮きやすくなり、ブリーディング量が増加する
- ※4 JIS A 6204「コンクリート用化学混和剤」の減水剤規格
以上
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大林組 CSR室広報部広報第一課
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