(株)大林組は、世界一の超省エネルギービルである大林組技術研究所本館のリニューアル工事に、知的分散制御のためのネットワーク技術であるLONWORKSを、日本で初めて、全面的に適用します。世界一の省エネルギービルを、より快適に、かつより省エネルギー化します。
大林組では、米国エシェロン社(Echelon Corporation)が提供するローカル・オペレーティング・ネットワークス(LONWORKS:知的分散制御ネットワーク)技術の、日本初の公認ネットワークインテグレーター(NI)(平成11年3月1日にライセンスを取得)として、今回、世界一の超省エネルギービルである大林組技術研究所本館リニューアル工事に、LONWORKSを日本で初めて全面本格適用します。LONWORKS技術による総合的な設備制御システムが、より精密な設備機器の運転調整を可能とし、世界一の省エネルギービルを、より快適に、かつより省エネルギー化します。
●LONWORKS技術を導入する制御系
・熱源設備制御(太陽熱集熱システム+太陽熱利用吸収式冷凍機、熱回収ヒートポンプ、冷却塔)
・熱源廻り一・二次冷温水制御
・空調機廻り変風量制
・全熱交換器制御
・換気システム制御(外気冷房、ナイトパージ、ダブルスキン集熱)
・ファンコイルユニット制御
・タブレットスイッチによる会議室系統の照明、空調の連動
・インターネット技術(IP)を利用した遠隔監視、調整
LONWORKS技術に代表される設備制御のオープン化は、欧米では既に普及しており、LONWORKS技術が数多くのビルや施設に用いられています。
しかし、日本国内では部分的な適用にとどまっているのが現状です。
大林組は、今回技術研究所本館に本格的にLONWORKS技術を導入することで、これまでのシステム構築技術に加え、高効率で費用対効果の高い知的分散型設備制御システムのノウハウ蓄積を行い、今後、一層の普及が見込まれる、LONWORKS技術による設備制御オープン化について積極的に対応・提案をしていきます。
●LONWORKS技術への取組み
・分散型設備制御システムの実現
・ネットワークインテグレーション技術・ノウハウの強化
・各メーカーのLONWORKS製品の価格・性能の情報収集
・ネットワークを利用した高効率制御による省エネ手法の開発
・既存ビルリニューアルへの分散型設備制御システムの導入
・工事区分を越えた制御連携による建物制御の高付加価値化
・インターネット技術との親和性(IP化)
・次世代に向けての知的建築物の提案
●今回導入の設備制御システムの特長
1.設備制御全体をLONWORKSで統合
今まで日本におけるLONWORKSの適用例は、空調機制御の一部の通信技術だけで、全体を統合するネットワークは旧来のシステムを利用していました。今回のリニューアル工事は、日本で初めて、設備制御の通信全体にLONWORKSを全面的に用い、熱源設備や換気設備などの制御も行います。
2.統一した通信プロトコルとネットワーク変数
工事区分によらず、空調・電気工事の制御内容もすべてLONWORKS技術の中核である通信プロトコルLONTALKを全面的に用いて統一し、統合します。途中に通信プロトコルの変換は行いません。また、マルチベンダなシステムを構築するために、制御通信はすべてLONWORKS技術における標準ネットワーク変数を用いています。
3.自律分散制御による省資源・省力化
制御盤を削減し、制御対象付近に分散させることで、自律分散型制御を実現し、省制御盤、省配線によるコストダウンを目指します。また、完成した部分から順次稼動させていくことができ、仕様変更や設計変更が多く発生するリニューアル工事にも適しているとして、今回の工事に採用を決定しました。これによりリニューアル工事にありがちな手戻りや仮設の施工をできるだけ削減して、より効率的な工事が行えます。
4.精密な運転調整による省エネルギー化
LONWORKSのインターネット技術(IP)との親和性を生かして、制御ネットワークを社内のネットワークと接続し、遠隔地からの調整作業や監視により、より精密な運転調整を行います。
5.日本初、LONWORKS対応の中央監視システム
LONWORKS技術に親和性が高く、今までFAなどで実績がある標準監視ソフトウェアWonderware InTouchを用いて日本で始めてLONWORKS対応の中央監視システムを構築します。
6.フラットなネットワークアーキテクチュア
バックボーン1.25Mbpsバストポロジー、各階78kbpsフリートポロジーのツイストペアネットワークケーブルとLonpointルーターにより、全体としてフラットなネットワークアーキテクチャとします。
LONWORKS
米国エシェロン社が提供する知的分散制御ネットワーク技術で、次のような特長がある。
(1)それぞれの設備機器に自律制御プログラムを設定できます。
メーカーが違ってもLONTALKに準拠した各々の製品はネットワークを通じてお互いに情報交換ができます。
(2)メーカーが違ってもLONTALKに準拠した各々の製品はネットワークを通じてお互いに情報交換ができます。
(3)通信機能(共通言語)LONTALKは公開されている技術なので、自律制御プログラムとネットワーク通信機能により、誰でもシステム全体の制御プログラムを自由に設定できます。
ネットワークインテグレーター(NI)
ネットワークインテグレーター(NI)とは、LONWORKS技術を利用して、自分たちの過去の設備制御における豊富な経験をベースとし、特定メーカーの製品にとらわれることなく、さまざまなメーカーの安くて優れた製品の組み合せにより費用対効果に優れたシステムを提案・構築を行うコントラクター(請負人)のことです。
大林組技術研究所本館
1982年に竣工した事務所ビル。98の省エネルギー手法により、イニシャルコスト20%の増加に対し、ランニングコスト(光熱水費)を69%削減、運用時CO2排出量も73%削減した世界一の超省エネルギービル。410MJ/m²年の消費一次エネルギー量をターゲットとして建設され、初年度には364MJ/m²年を記録。(最近の標準的な事務所ビルでは約1,600MJ/m²年といわれている。)
これまで米国冷凍空調工学会(ASHRAE)をはじめとして日本建築学会、日本空調衛生工学会の賞を受賞し、今日でも省エネルギーモデルビルとされている。しかし、竣工後18年が経過、設備機器の寿命を迎え、1987年から改修工事に順次着手。
「大林組技術研究所本館リニューアル工事の概要」
●場所
東京都清瀬市下清戸4-640
●工期
第1期1997年8月~1998年3月/第2期1999年6月~2000年3月
●建物概要
鉄筋コンクリート造、地下1階、地上3階、延べ床面積3,775.84m²/1982年竣工
●主なリニューアル工事
中央監視設備更新/空調用配管、設備更新/トイレリニューアルおよび増設