軽量建物免震システムを開発

一般住宅でも低コストで高い免震性能が得られます

プレスリリース

(株)大林組は、大同精密工業(株)(本社:東京都豊島区、社長:矢島忠正)と共同で、一般住宅にも適用できる軽量建物免震システムを開発しました。建物荷重が小さくても水平方向に滑らかに動く「平面転がり支承」を採用することにより、軽量建物でも低コストで高性能な免震システムの構築が可能になりました。

通常、免震装置には、以下の3つの機能が必要です。

  1. 支承…建物の荷重を支え、地震時には地盤の揺れから建物を絶縁する機能。

  2. 減衰…地震時の揺れのエネルギーを吸収し、速やかに揺れを低減させる機能。

  3. 復元…地震時の揺れによって移動した建物を元の位置に戻す機能。

今回開発した軽量建物免震システムには、支承機能として「平面転がり支承」、減衰と支承機能を併せ持つ「転がりすべり支承」、復元機能として「復元用ゴム」を採用し、それぞれを建物の構造や柱の荷重の掛かり具合などにより最適に配置することにより、低コストで高性能な免震システムの構築を可能にします。

「平面転がり支承」は、支承部の底面に敷き詰められた多くの小さな鋼球により平滑な鋼板上で建物の荷重を支持する装置です。地震時には揺れに対して平面上どの方向にも転がり、建物を水平移動させることにより地盤の揺れから建物を守ります。また、コンパクトな装置でありながら、支承部底面の鋼球の数を調整することにより、軽量から大荷重までの荷重を支持することができます。しかも転がり方式のために摩擦係数がきわめて小さく、軽量建物でも高い免震効果が得られます。

この装置のシリーズとして、減衰機能を併せ持つ「転がりすべり支承」があります。「転がりすべり支承」は、「平面転がり支承」の周りにの反力を利用した超高分子量ポリエチレンのすべり摩擦による減衰機能(摩擦皿ばねダンパー)を一体化させた装置で、支承の働きと共に減衰機構として地震のエネルギーを吸収します。強風時には摩擦により免震装置の水平移動を拘束(トリガー機能)し、建物の揺れに伴う居住性の悪化を防ぎます。また、地震時には外側にある滑り面の防塵効果により、安定した摩擦減衰装置と転がり支承として機能します。この装置は、皿ばねの反力によって転がり支承部の支持荷重が低減されるので、鋼球の数が少なくでき、また、平滑な鋼板を共有することでコストの低減が図れます。

なお「復元用ゴム」は、地震による地盤と建物の水平方向の変位を元に戻すための積層ゴムで、荷重は支持しません。

軽量建物用免震システムの特徴は次のとおりです。

  1. 一般住宅を含め、さまざまな軽量建物に適用できます

    従来の積層ゴムとは異なり、「平面転がり支承」の免震性能は建物自体の 荷重に左右されないので、一般住宅のような軽量建物にも適用できます。


  2. 低コストで高い免震性能が得られます

    支承、減衰、復元の機能が分かれており、建物の特徴にあった最適な配置ができるので、経済的な設計と高性能な免震システムの構築ができます。従来割高だった軽量建物の免震システムを、建物価格の10%程度に収めつつ、性能面では地震の揺れを3分の1から4分の1に低減できます。


  3. メンテナンスフリーです

    免震システムが、非常に簡単で単純な構造の「平面転がり支承」を基本にしており、特殊な防錆潤滑処理をしているため、特別なメンテナンスを必要としません。

大林組は今後、低コストで高性能な軽量建物用免震システムを、一般住宅やコンビニエンスストア、住宅併用の店舗・医院、三階建て住宅などに積極的に提案し、より安全で快適な居住空間造りを目指していきます。