（株）大林組は、桟橋の保護や船の方向を変えるために必要な防衝工を水圧差を利用した新しい概念のスカート基礎工法を用いて施工します。

大林組では、スカート基礎を用いた新型式海洋構造物の施工方法について、1994年にアーケル・マリン・コントラクターズ社（現アーケル・エンジニアリング社、ノルウェー）と、技術提携を行って以来、構造実験、数値解析などの基礎研究を重ねてきました。スカート基礎工法は大水深での海中基礎や軟弱な海底地盤に対応する工法として近年注目されている工法です。下部にスカートと呼ばれる薄肉の壁を設け、軟弱な表層地盤を貫通させて支持層まで根入れし、外力に対して安定化を図るもので、スカートを貫入する際にスカート内部の水を制御しながら排水し、スカート内外に水圧差（サクション）を発生させ、この水圧差をスカート貫入力として利用するという新たな概念で施工される構造物です。海底地盤が軟弱な場合、従来の一般的な工法では軟弱地盤を掘削して良質な砂に置換えたり地盤改良を行うなどの対策が必要ですが、このスカート基礎ではこれらの対策が不要なため環境にやさしく、また、海上作業を大幅に削減できるためコストと工期を大幅に縮減することができます。

このたび、大阪府泉南郡岬町小島地先に建設する土砂積出桟橋先端に桟橋本体の防護および土運船回頭時の支点としての役割を果たす防衝工をスカート基礎工法を用いて設置します。この桟橋からは、2007年に2本目の平行滑走路供用を目指す関西国際空港の第2期事業埋立て用土砂のうち7000万m³が2001年から2005年度にかけて積み出される予定です。

本防衝工は直径18m、高さ5.5mの円筒状のスカート上に直径12m、高さ25mの円筒状のケーソンを一体化した鉄筋コンクリート構造です。防衝工は淡路島の津名港内の陸上で製作し、フローティングクレーンで吊り上げたまま曳航し、設置場所において厚さ2～3mの軟弱層を貫通させた後、スカート内の水を強制排水し支持層へ根入れさせます。その後、ケーソン底版と海底地盤との間隙にグラウトを充填し、さらにスカート先端から強制排水を行い支持層の締固めを促進し、最後にケーソン内に中詰砂を投入して完了します。

現在淡路島の津名港内の陸上で製作中の防衝工は、8月初旬に大阪府泉南群岬町小島地先に設置を予定しています。
この実績をもとに大水深、軟弱海底地盤における橋梁基礎や洋上における船舶係留施設などの海洋構造物への適用を積極的に提案していきます。

「防衝工概要」
　鉄筋コンクリート製防衝工の製作および据付け
　　1．製作工事
　　　1）製作場所 兵庫県津名郡津名町志筑新島 1-8
　　　2）製作期間 平成11年8月～平成12年8月
　　　3）工事内容
　　　　@主要寸法
　　　　・ 直径　　スカート部 18m
　　　　　　　　　一般部 12m
　　　　・ 高さ　　全高 30.5m
　　　　　　　　　スカート部 5.5m
　　　　　　　　　一般部 25.0m
　　　　A重量　　約2,200t

　　2．据付工事
　　　1）据付場所 大阪府泉南郡岬町小島地先
　　　2）据付時期 平成12年8月初旬