コンクリートダムの施工を高効率化し安全性を向上する「3次元ダム用コンクリート自動運搬システム」を開発・実用化

世界初、軌索式ケーブルクレーンでコンクリートの製造から打設までを完全自動化

プレスリリース

大林組は、コンクリートダム施工において、軌索式ケーブルクレーン(※1)を使用したダム用コンクリートの運搬をコンピュータ制御により製造から打設箇所への放出までを完全自動化した3次元ダム用コンクリート自動運搬システムを開発し、世界で初めて実用化しました。
コンクリートダムのコンクリート打設作業を高効率化し、省力化を可能とするシステムで、安全性にも優れた3次元運搬システムです。
現在、青森県三戸郡の世増ダム建設工事で開発し、順調に稼動しています。

コンクリートダムの建設工事は、その大部分がコンクリート打設工事であると言うことができます。そのため、コンクリート打設の効率化と安全性向上が工事全体のなかで重要なポイントとなります。大林組では、これらの観点から1992年に世界で初めてケーブルクレーンの施工自動化に成功し、ダム工事におけるコンクリート運搬を自動化しました。
近年、ダム周辺環境への配慮とダムの規模が中・小型が中心となる中、軌索式ケーブルクレーンによるコンクリート運搬方式が増えています。軌索式ケーブルクレーンはケーブルを張るためのベースが3点だけで済むためダム周辺環境への配慮に優れていますが、全てワイヤにて保持されているため、運転操作と打設時の合図、コンクリート放出作業に高度な熟練技術が必要です。熟練オペレーターが年々少なくなり、また典型的な繰り返し作業となるため、自動化が望まれていました。

※1 軌索式ケーブルクレーン:片岸の2点間にケーブルを張り(軌索ケーブル)、軌索ケーブルの中間に設けられた滑車に、対岸の1点からケーブル(主索ケーブル)を張ったもので、主索ケーブルに吊下げられたバケットによりコンクリートを運搬します


今回、大林組が開発し、実用化した3次元ダム用コンクリート自動運搬システムは、軌索式ケーブルにより3次元にバケットが移動するもので、コンクリート打設を行なう全域に直接バケットからコンクリート打設を行なうことができるので効率良くコンクリート打設が行えます。また、バケットのコンクリート放出作業員、周辺機械(トランスファーカ等バンカー線作業員)の特殊技能者の省力化が図れます。さらに、バケットの揺れ制御や各種安全装置により安全性も向上しています。

システムの流れは次のとおりです。
  1. トランスファーカは、バッチャープラントで製造されたコンクリートを積載後、自動にてバンカー線上を走行してコンクリートバケットに積み替えられます。
     
  2. ケーブルクレーンは、コンクリートバケットをコンピュータからの指令により最適な振れ止めを行ないながら打設位置へ正確に移動し、打設面での安全を確認してコンクリートを放出します。放出完了後空バケットは、バンカー線まで移動し振れ止めを行ない着床します。
     
  3. コンクリート打設開始前に、打設開始場所、幅、長さ、等簡単なパラメータを入力しておくことにより、決められたスケジュールに従い放出場所を順次移動しながら、コンクリート打設作業を自動的に行ないます。
今回開発した3次元ダム用コンクリート自動運搬システムの特長は次のとおりです。
  1. 打設効率が向上します
    コンピュータがバケットの揺れを制御しながら最短の放物線を算出し、打設位置までコンクリートを運搬します。従来の熟練オペレーターによる運転速度と同程度の速度で、濃霧などの視界不良時でも安定したコンクリート運搬が可能です。打設域全域に直接コンクリートを運搬して放出するので打設効率が向上します。

  2. 作業員の省力化が図れます
    バケットのコンクリート放出作業員、周辺機械(トランスファーカ等バンカー線作業員)の特殊技能者の省力化が図れます。

  3. 熟練オペレーターが不要です
    ケーブルクレーンのオペレーティングは、単一の作業を長時間繰り返す苦渋作業であり、熟練オペレーターにより高度な操作が要求されていましたが、コンピュータで集中制御することで高度な技術を持った熟練オペレーターでなくても運搬を可能としています。また、全自動化されているのでヒューマンエラーも排除することができます。

  4. 安全性が向上します
    各種の安全装置により安全性が向上しています。
    (1)バケット進入禁止区域の設定
    コンピュータで進入禁止区域を設定することで進入を防止します。また、障害物の位置も設定することで回避することができます。
    (2)誤作動防止装置
    ・バケットへのコンクリート積込みの誤作動防止機構
    ・バケット移動中のコンクリート放出扉のロック機構
    (3)バケット下部安全確認システム
    バケット下部と周辺機械や作業員のヘルメットに取付けられた感応機が信号をやり取りすることでバケットの頭上進入を防止。
    (4)コンクリート運搬が無人化されることで、運搬機械周辺に作業員が接近することが少なくなり安全性が向上します。

今後、大林組では当社の保有するダムコンクリート自動運搬システムを積極的に導入し、コンクリートダム施工における作業の省力化・効率化・安全化を進めていきます。

世増ダム建設工事の概要
 工事名称 :八戸平原開拓建設事業 世増ダム建設工事
 所在地 :青森県三戸郡南郷村大字島守地内
 発 注 者 :東北農政局
 施 工 者 :大林・住友・鉄建特定建設工事共同企業体
 工期 :1998年9月~2003年3月
 事業目的 :洪水調整、かんがい用水、 水道用水
 規模等 :重力式コンクリートダム
堤高 52.0m、堤頂長 247.0m、堤体積 220千m³
以上

■この件に関するお問い合わせ先
大林組 東京本社 広報室企画課
東京都港区港南2-15-2  品川インターシティB棟
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