港内水域の水質汚濁を改善し、良好な水質環境を維持します

透過型防波堤を最適に配置することで閉鎖性水域の海水交換を促進する技術を開発・実用化

プレスリリース

大林組は、潮の干満による海水の動きを利用して、防波堤に囲まれた湾奥部などの閉鎖性水域内の流れを制御することで、港内水域の生物生息環境を保全、修復することができる流況制御型防波堤を開発、実用化しました。
産業技術総合研究所中国センター(旧 通産省工業技術院中国工業技術研究所)との共同研究における実験で、その有効性を実証しました。

波浪や津波などから港内施設や船舶を守ることを目的として防波堤が設置されます。防波堤は、波浪等に対する遮蔽性を向上させるため不透過型の防波堤が一般的ですが、仕切られた港内が閉鎖性水域となり、海水交換が行われにくい停滞性水域となってしまいます。
停滞性水域では富栄養化が促進される結果、次のプロセスで水質の悪化が進み、生物生息環境が破壊される場合があります。
1 プランクトンの増殖・大量発生(赤潮)
2 プランクトンの死骸など(有機懸濁物質)の沈降・堆積による水質汚濁進行
3 海底堆積物の分解に酸素が大量に消費されることによる底層部の貧酸素化
4 貧酸素水塊の形成にともなう生物生息環境の破壊(死滅)

このような停滞水域の水質汚濁を改善し、良好な水質環境を保全するには、排水処理施設の設置や浚渫工事などによる浄化対策もありますが、コストが高いことや対象水域が広域なため長期的な事業として徐々に進められているのが現状です。

大林組は、港内の停滞性水域を解消することで、生物が生息するような良好な水域環境を維持することができる海水交換促進技術を開発しました。従来の不透過型防波堤に代わり、その一部を透過型にすることで停滞水域内の海水の流動を促し、常に底層部分の水の交換を実現します。防波堤の全延長を透過型にした防波堤は多数ありますが、一部を透過型構造にするだけで最適な海水交換による水域の環境修復を実現することができます。透過型構造部分の位置や規模は、高度な水理実験や数値解析等のシミュレーションにより決定します。駆動力には、潮汐を利用するのでランニングコストをかけずに港内全域の広域に渡り、水域の環境を修復することができます。

透過型部分の構造は、ケーソンのようなコンクリート構造か、あるいは礫材からなる傾斜堤構造などを任意に選択することができます。ケーソン式の透過型防波堤の場合、上、下部に開口部を設け、海水の流動を促進します。一方、傾斜堤構造の場合は、当社が既に開発・実用化している「エコルム工法(※1)」をベースとした礫間接触酸化機能を有する浄化堤が最適です。浄化堤とした場合、海水は、浄化され港内に流入するため港内水質浄化の相乗効果が期待できます。

※1 エコルム工法:石積み浄化堤による海水浄化システム。石積みの堤体を、潮の干満や波動によって海水が移動する際、石積みに付着する微生物や生物などの自然生態系が持つ水質浄化機能によって、海水が浄化されます


今回開発した流況制御型防波堤による海水交換促進技術の特長は次のとおりです。
  1. 経済的に良好な水域環境を維持
    潮汐を主体とした自然エネルギーを港内海水交換の駆動力として利用するため、ランニングコストをかけずに良好な水域の環境を維持できます。

  2. 既存の防波堤がある場合でも港内浄化が可能
    既存の防波堤もその一部を流況制御型防波堤に置き換えることで、港内の水の流れを改善することができるので、水域の環境修復を実現することができます。

  3. 透過型防波堤を最適に配置します
    防波堤の一部を開口したモデルを用いて3次元流体解析によるシミュレーションを行い、海水交換量や水質改善効果を定量的に評価できるシステムを構築しているので、開口部を最適な位置と幅で設定することができます。

  4. 防波堤本来の機能を維持
    堤体延長の一部を透過型に変更するだけなので、防波堤本来の機能である波浪や津波の防御機能は、勿論維持されます。

今後、大林組は、豊かな海域環境を創出する浄化システムの一つとして、国や地方自治体等に積極的に提案していきます。

海水交換を促進する防波堤

以上

■この件に関するお問い合わせ先
大林組 東京本社 広報室企画課
東京都港区港南2-15-2  品川インターシティB棟
お問い合わせフォーム

プレスリリースに記載している情報は発表時のものです。