NHK神戸新放送会館に「軽量建物用免震システム」を採用

阪神・淡路大震災10年目となる平成17年1月の放送開始をめざします

プレスリリース

大林組は、大同精密工業(株)(本社:東京都豊島区、社長:横山博之)と共同で開発し、平成13年に大臣認定を取得した「両面転がり支承」と「摩擦皿ばね支承」を「軽量建物用免震システム」として、日本放送協会発注の「NHK神戸新放送会館建設工事」に採用いただきました。阪神・淡路大震災10年目となる平成17年1月17日の放送開始をめざし、急ピッチで工事を進めています。

今回の工事は、平成7年に発生した阪神・淡路大震災により被災した旧NHK神戸放送会館を再建するもので、公募型プロポーザル方式により、当社・日本設計・イチケングループが受注したものです。NHK神戸新放送会館は、鉄骨造の地上3階建て、延床面積5,226m²の放送施設で、震災での教訓を生かして免震構造となっています。

通常、建物の免震装置には、「支承」「減衰」「復元」の3つの機能が必要です。
「支承機能」 建物の荷重を支え、地震時には地盤の揺れから建物を絶縁する機能
「減衰機能」 地震時の揺れのエネルギーを吸収し、速やかに揺れを収める機能
「復元機能」 地震時に生じる地盤と建物間の変形を元の位置に戻す機能
一般のマンションなどに採用される免震装置には、これらの機能を併せ持つ積層ゴムが使用されます。しかし、積層ゴムは、1体あたり200t以上の荷重を支持した状態で免震性能を発揮するように設計されており、オフィスビルやマンションなど荷重の大きな建物では高い免震性能を発揮しますが、建物重量が軽い場合には、免震周期が短くなるので十分な免震効果が得られませんでした。建物の荷重に左右されない経済的な免震装置の開発が望まれていました。

今回採用した「軽量建物用免震システム」の免震装置(免震材料)は、支承機能として複数の鋼球により建物の荷重を支持する「両面転がり支承」と、支承と減衰機能を併せ持つ「摩擦皿ばね支承」、3つの機能を有する「鉛プラグ入り積層ゴム」により構成されています。それぞれを、建物の形状や荷重の分布に合わせて最適に配置することで、建物荷重に左右されない経済的で高性能な「軽量建物用免震システム」が構築できます。

1) 「両面転がり支承」は、敷き詰められた複数の鋼球により建物の荷重を支持する装置です。摩擦係数がきわめて小さいので、地震時には揺れに対して平面上どの方向にも滑らかに転がります。荷重支持に必要な数の鋼球を環状や四角形のリテーナーで囲み、上下を平滑な鋼板で挟んだ機構のため、装置の高さが低くてすみ、コンパクトな設計が可能です。鋼球の数を調整することにより、低荷重から高荷重まで支持することができます。今回は隅柱や側柱の荷重の小さな柱に用いて、建物の免震周期の長周期化により免震性能の向上を図ります。
2) 「摩擦皿ばね支承」は、皿ばね(自動車のクラッチなどに使われている工業用ばね)の反力を利用して滑り材をステンレス板に押し付け、そこに生じる摩擦力を利用する減衰装置です。強風時には摩擦力により免震装置の水平移動を拘束(トリガー機能)し、風揺れによる居住性の悪化を防ぎます。地震時には滑り支承として機能し、安定した摩擦減衰装置として働きます。この装置は、減衰機能と支承機能を併せ持っているので、他の免震装置が減らせ、免震コストの低減が図れます。今回の建物上部には、放送用アンテナを支持する鉄塔が取り付けられていますので、「摩擦皿ばね支承」により台風や強風などによる建物の揺れを抑えて放送機能を保持すると共に、大地震時には建物の揺れを小さくし、速やかに減衰させます。
3) 「鉛プラグ入り積層ゴム」は「支承」「減衰」「復元」の3つの機能を併せ持っており、今回は建物中央部などの荷重の大きな柱に使用します。
今回、開発した「軽量建物用免震システム」の特長は次のとおりです。
  1. 低層建物を含め、さまざまな軽量建物に適用できます
    従来の積層ゴムとは異なり、「両面転がり支承」の免震性能は建物自体の荷重に左右されないため、重量の軽い一般戸建て住宅や低層の集合住宅、学校や教育施設、病院、福祉厚生施設、美術館、モニュメントなどの免震に適用できます。また、免震装置が小さいので、納まりがコンパクトな設計が可能です。

  2. 低コストで高い免震性能が得られます
    軽量建物の免震設計に当たって、「両面転がり支承」と「摩擦皿ばね支承」および「鉛プラグ入り積層ゴム」のそれぞれの特長を活かした最適な配置ができるので、 経済的で長周期化による高性能な免震システムが構築できます。

  3. メンテナンスフリーです
    免震システムの「両面転がり支承」と「摩擦皿ばね支承」は、適切な面圧設定と特殊な防錆潤滑処理により、耐久性に優れており特別なメンテナンスを必要としません。

大林組は今後、低コストで高性能な軽量建物用免震システムを、 一般住宅をはじめ低層の教育施設、病院、福祉厚生施設などに 積極的に提案し、より安全で快適な空間造りを目指していきます。

[工事概要]
工事名称 :NHK神戸新放送会館建設工事
施工場所 :神戸市中央区中山手通2丁目
発 注 者 :日本放送協会(NHK)
総合管理 :日本放送協会(NHK)技術局 開発センター(建築技術)
工事監理 :株式会社 松田平田設計
設計・施工 :大林組・日本設計・イチケン特定建設工事設計・施工連合体
工事概要 :S造 地上3階、塔屋1階 延5,226m²
工期 :平成15年5月~平成16年7月
以上

■この件に関するお問い合わせ先
大林組 東京本社 広報室企画課
東京都港区港南2-15-2  品川インターシティB棟
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