世界初 半径30mの急曲線部でベルトコンベアによる連続搬送を実用化

トンネル工事でクリーンな作業環境と大幅な安全性の向上を実現しました

プレスリリース

大林組は、日本道路公団発注の清水第四トンネルの建設工事において、世界で初めて半径30mの急曲線部に連続ベルトコンベアによる搬送システムを適用し、掘削排土の長距離搬送を実用化しました。このシステムの適用により、トンネル内の作業環境の改善と安全性の大幅な向上を実現しました。

トンネル工事では、これまでも掘削した排土をベルトコンベアで長距離搬送しているケースはありましたが、直線部または緩やかな曲線箇所にしか適用できず、急曲線部のあるトンネル工事ではレールを敷設して運搬用の台車(ずり鋼車)で搬出する方法や、直線型の短いベルトコンベアを縦列に並べてカーブ部分を搬送する方法が採用されていました。台車による方法では、狭いトンネル内に敷設された複線のレール上を台車が頻繁に行き交うため、安全性や施工性のほか、騒音や振動といった環境面にも課題がありました。短いベルトコンベアを並べて用いる方法では、全てのベルトコンベアに駆動部が必要なため、コストやメンテナンスの面で問題がありました。
清水第四トンネル建設工事は、TBM(Tunnel Boring Machine)で先進導坑を掘削した後でトンネルを拡幅するという手順で施工します。同工事では先進導坑を下り線から上り線へUターンさせて連続施工する計画であったため、Uターン部分で急曲線に適用できる排土の搬送方法が必要となりました。

今回、適用した「急曲線対応型連続ベルトコンベアシステム」は、すでに実現している半径40mに対応したシステムを、(株)タグチ工業(本社:福岡県福岡市、社長:田口一生)と共同で改良し実用化したものです。「急曲線対応型連続ベルトコンベアシステム」は、曲線部分にベルトの断面形状を任意に変えることができる複数のキャリアローラーを設置し、ベルトをU字型に湾曲させて排土がこぼれ落ちないようにすることで、急曲線部でも安定して排土を搬出することができるシステムです。今回は、半径30mという急曲線に対応できるよう、ベルトの傾きを変えるとともに、それに伴ってベルトを保持するローラーを増設するなどの改良を加えました。
この工法の導入によって、従来の方法に比べ台車の使用頻度が減少するのでレールを単線にすることができ、トンネル内の有効空間が広がるとともに安全性が向上しました。さらに騒音や振動が大幅に低減することで作業環境が改善しました。長距離運搬だけでなく、急曲線での運搬も対応可能としたことで、今後、様々なトンネル工事へ応用することが可能となります。

このシステムを清水第四トンネル工事に適用したことによる効果は以下のとおりです。

  1. 安全性が向上
    従来の工法では、台車で掘削排土を搬出していたので、狭いトンネル内に複線のレールを設置しなければなりませんでした。本システムでは、台車を排土の搬出に使用する必要がないので、レールを単線にすることができます。これにより、坑内の有効空間が広くなり、ゆとりある安全通路を確保でき、作業員の安全性が向上しました。

  2. 坑内の作業環境が向上
    排土の搬出に伴う台車の運行がないので、騒音や振動を大幅に低減できました。坑内の作業環境が向上し、さらに作業員の心身への負担も軽減しました。

  3. 清水と濁水の分離が容易
    レールが単線なので坑内の空間が広くなり、濁水を坑外へ排水するための枡の設置が容易でした。また、従来は排土の搬送中にこぼれ落ちがあり、坑内にしみ出す地下水が汚れるため、TBMの掘削部分から出る濁水と合わせて浄化処理する必要がありました。このシステムでは、地下水が汚れることなくそのまま坑外へ放流することができるので、濁水処理量が少量ですみ、過剰な設備を設置する必要がありません。

大林組は、今後、トンネル工事の長距離化・大深度化・急曲線化に対応する技術として、このシステムを積極的に提案し、作業員の安全性、坑内外環境の向上を実現するとともに、更なる作業の効率化を目指します。

[工事概要]
工事名称  :第二東名高速道路 清水第四トンネル工事
発注・設計 :日本道路公団 静岡建設局
概要 :TBMおよびNATM工法/トンネル延長 上り線2,162m、下り線2,156m
工期 :2000年3月~2006年3月
施工 :大林組・三井住友建設・鴻池組特定建設工事共同企業体

ベルトコンベアの設置台とローラー
(上部がU字型に湾曲させたベルト)

急曲線部での設置状況
(壁面左に設置されているのがベルトコンベアシステム)

以上

■この件に関するお問い合わせ先
大林組 東京本社 広報室 企画・報道・IRグループ
東京都港区港南2-15-2  品川インターシティB棟
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