風車に最適な建設地を選定する「Wind Mapper」を開発・実用化

複雑な地形でも10m間隔で高精度に風況の予測が可能

プレスリリース

大林組は、急峻で複雑な地形でも、最小10m間隔で風の状況を予測し、風車の最適な建設地を高精度に選定できるシステム「Wind Mapper(ウインド マッパー)」を開発、実用化しました。年間を通じて風向きや風速の変化を時間ごとに詳細に解析できるので、最も効率的に発電できる風車の建設地を選定できます。すでに、この1年間で4件の解析業務を受注しています。

近年、環境への配慮から自然エネルギーに注目が集まっており、各地で風力発電所の建設が進んでいます。風車で発電を効率的に行うためには、一年を通して風が強く吹く場所を選定し、その地点に風車を建設する必要があります。当社が解析した事例では、風車の設置場所が20m異なるだけで、発電量が15%程度増加すると見込まれたケースもあるほどです。そのため、風車建設の最適地を選定するために風の状況を予測するシステムの開発が行われていますが、従来は山沿いや谷などの複雑な地形では予測が難しく、また解析する間隔が粗く、気象現象を十分に反映できないなどの課題がありました。また最近では、これらの課題に対応したシステムも開発されていますが、風の状況を時間毎の変化に合わせて詳細に解析を行うことは難しく、年間の平均的な風の状況を解析するものしかありませんでした。

今回、大林組が開発した「Wind Mapper」は、解析対象となる地域内の風況(風速や風向など)をパソコンでシュミレーションしたデータと、実測によるデータを組み合わせて活用することで、我が国特有の急峻で複雑な地形でも、年間を通じて詳細に時間毎の風況の変化を予測することができるシステムです。

「Wind Mapper」による風況予測の手順は以下のとおりです。
  1. 一年間にわたり対象地の任意の箇所で実際に風を観測します。必要に応じて測定時間の間隔を短くし、時間毎の詳細なデータを記録しておきます(実測データ)。
    ※風力発電の事業者側が既に実測していればそのデータをそのまま利用できます。
  2. 対象地の空間をパソコン上でメッシュに区切り、任意の高さの風向を16以上の方向に分け、各ポイントにおける風速と風向を計算します(計算データ)。
  3. 実測データの風向きに対応する計算データを時刻毎に抽出し、その計算値を実測値で補正していきます。
  4. すべてのポイントの計算データを補正することで、対象地における任意の場所の風速や風向を時刻毎に一年分予測することができます。
このシステムは、広い範囲の気象的な影響を考慮した計算方法とビル風のような地表近くの風を解析する計算方法とを組み合わせてプログラミングされています。さらに、樹木などの障害物による影響や、風の流れと乱れとの関係などを計算に組み込んでいるので、複雑な地形でも最小10m間隔で解析することができます。また、山の頂上や崖の上など、風が地表から離れる剥離流が起こる場所や、風が巻いて逆流する場所では、発電効率が下がったり、風車の羽根の寿命に悪影響をあたえますが、このシステムでは、急峻な地形で発生する剥離流や逆流まで解析することが可能です。
このように詳細な解析が可能なので、実際の風速との誤差は、年間を通して±10%以内に抑えることが可能です。また、解析結果は数値で表示するほか、風の強さを地図上に色分けしてわかりやすく表示できます。

今回、開発した「Wind Mapper」の特長は以下の通りです。
  1. 最小10m間隔での風況解析が可能

    複雑な地形に対応できる様々な計算方法を採用しているので、地表の形状に応じて格子間隔を任意に設定することができ、計算範囲を段階的に縮小することによって、最小で10mメッシュの間隔で解析することができます。


  2. 短時間で計算が可能

    まず、対象地を任意の間隔でメッシュに区切り、各ポイント毎に上空の16通り以上の方角の風を解析しておきます。あとは観測データを用いてこれを補正するだけなので、計算時間が短くてすみます。


  3. 複雑な地形に対応

    風の流れや乱れの関係まで計算に組み込んでいるので、急峻な地形で風が地表から離れる剥離流や逆流についても解析することができます。また、山脈の下流側に強風をもたらす山岳波などの気象現象も考慮して計算することが可能です。


  4. 時刻毎に詳細に分析し誤差は10%以内

    現地で実測する間隔を、10分毎、1時間毎のように設定しておき、その実測値と計算値を用いて詳細に解析することで、風況の時刻歴データが得られます。また、解析した予測値と実際の風速の誤差を、月平均で概ね10%以内に抑えることができます。

大林組は、早くからスーパーコンピュータを用いて風力発電のための風況予測に取り組んできました。
今後、山岳や急な斜面など日本特有の複雑な地形でも、高精度に風況を予測できるこのシステムを用いて、最も効率的に発電できる風力発電所の建設地を提案していきます。

分析の対象となる地域を選定する

分析対象地域を細かなメッシュに区切り計算する

以上

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大林組 東京本社 広報室 企画・報道・IRグループ
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