新しい概念の掘削泥水で施工性の向上、コストダウンが可能になりました

高性能掘削泥水「Super Slurry」を開発・実用化

プレスリリース

大林組と三洋化成工業(株)(本社:京都市東山区、社長:家永昌明)は、泥水掘削工事で使用する、液状で、しかも掘削土砂やセメント成分などが多量に混入しても劣化しにくい特長をもつ新しいタイプの泥水材料を共同で開発し、地中連続壁工事で実用化しました。

安定液とも呼ばれる泥水を使用する泥水掘削工法では、泥水が掘削面の溝壁を安定させたり、掘削土砂をスムーズに運搬したりするうえで重要な役割を果たします。一般的には、ベントナイトやポリマー(CMC:カルボキシメチルセルロース)などを混練ミキサーで溶解して掘削泥水として用いられています。
しかし、最近の大規模・高速施工の工事では、泥水に多量の掘削土砂が混入し、遠心分離機でも除去しにくい超微粒子(1ミクロン以下の粒子)が蓄積します。
超微粒子は増粘作用が激しく、掘削泥水を高粘性化するという問題があります。そのため、粘性を低下させる目的で分散剤を添加しますが、従来の分散剤では超微粒子を多量に含む掘削泥水では思った効果が得られません(図1)。しかも、溝壁を安定化させる造壁性を確保するためにベントナイトやCMCを添加すると、さらに高粘性化し(図2)掘削効率の低下等の支障が生じるので、掘削泥水の一部を廃棄処理したのち新しい泥水材料を添加せざるを得ない状況となっていました。

今回開発した泥水材料は、いずれも液状の製品で、次の3タイプの材料があります。

(1)「Super Slurry B」は、ポリカルボン酸系の高性能分散剤で掘削泥水の高粘性化を防ぎます。土砂中の超微粒子やセメント成分で掘削泥水の粘性が高くなった時には、同分散剤を少量添加することで粘性を低下させることが可能です。また、繰返し添加しても効果を発揮します(繰り返し再生が可能)。

(2)「Super Slurry D」は、ポリカルボン酸系の泥膜形成剤で壁面に掘削土中の超微粒子と作用して溝壁の安定に必要な優れた泥膜を形成します。

(3)「Super Slurry C」は、分散性と泥膜形成性の2つの機能をあわせ持ち、一剤で掘削泥水が製造可能な掘削泥水材料です。

今回開発した材料はいずれも液状品であり、掘削泥水として次の特長を有しています。

(1) 水溶液は低粘性である。
(2) 粘土やセメント分が混入しても性状が変化しにくい。
(3) 地盤中の微生物によって腐敗しない。
(4) 鉄筋・コンクリートに付着しにくい。

こうした特長から、工事現場において泥水を作るための溶解・混練用のミキサーが不要となるほか、掘削泥水が劣化しにくいので廃棄する泥水量が減少し、全体として泥水作成量を減らすことができます。また、掘削泥水が低粘度に保てるため、土砂分離効率や掘削効率の低下が少なくなります。さらに、掘削泥水の品質が安定なため、掘削泥水の品質管理や掘削溝の精度管理が容易となり、工事をスムーズに進めることができます。
近年、建設現場では、工事用敷地の制限、高速施工、廃棄物発生量の抑制など非常に厳しい条件下での施工となっています。今回開発した泥水材料は、こうした泥水掘削工事時の厳しい条件への対応を可能にするとともに、経済的にも大きなメリットが期待できます。今回開発した材料は、いずれも既に地中連続壁工事において実用化しており、今後は他の泥水掘削工事にも広く適用していく予定にしています。

図1

図2

以上

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大林組 東京本社 広報室 企画・報道・IRグループ
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