山岳トンネル切羽安定化の新技術「フェイスタット注入工法」を開発、実用化

浸透性が高く・早期に硬化する注入材を用いて掘削効率を向上

プレスリリース

大林組は、太平洋マテリアル(株)(本社:東京都中央区、社長:永山肇)と(株)亀山(本社:福岡県柳川市、社長:野口政信)の3社共同で、山岳トンネル工法の補助工法「フェイスタット注入工法」を開発しました。本工法は、超微粒子セメントと硬化促進材を配合した注入材を使って、土砂地山を早期に硬化させてトンネル掘削時の切羽安定化や地表面の沈下抑制を早期・確実に実現することができます。これにより、施工時の安全性向上やコストダウン、掘削能率向上が可能となります。

近年、主に山間部のトンネル工事に用いていた山岳トンネル工法を都市部の土砂地山の工事に適用する事例が増加しています。このような場合には、地表への影響を極力抑えるため掘削作業の前に切羽の安定化や地表面沈下抑制のための補助工法が必要となります。通常、地山に鋼管やFRP管を打込み、この管の内部から注入材を注入することで、管での固定と注入材硬化の複合効果で切羽上部を補強する工法を用います。
その際の注入材には従来、ウレタン系やセメント系を使用していますが、ウレタン系注入材の場合はコストが高く、セメント系注入材は硬化させたい領域を確実に改良できないことや施工に時間がかかるなどの課題がありました。

今回開発した「フェイスタット注入工法」は、山岳トンネルの補助工法に用いる注入材に超微粒子セメントと硬化促進材を混合した材料を使用することで切羽の安定性向上と効率的な掘削作業を実現する工法です。一般的にトンネル工事で用いるジャンボを利用して簡便に注入することができるうえ、注入材料の種類と配合を工夫することで、地質条件に合わせた硬化が可能となります。また、従来の注入材であるウレタン系と比べると20%程度のコスト低減となり、セメント系の注入材と比べると浸透性が高く、早期に硬化するので改良エリアを早期確実に安定させることが可能です。

「フェイスタット注入工法」の特長は次の通りです。
  1. 計画改良エリアで均一な改良体を造成

    注入材は、超微粒子セメントと硬化促進材から構成されており、浸透性が高く、計画改良エリアでの均一な改良体の造成を実現します。また、地質条件に合わせた硬化時間の設定が可能です。


  2. 掘削開始に必要な強度を早期に実現

    山岳トンネルでは、補助工法で地山を安定させた後に掘削作業を行うことから、工期短縮のためには補助工法に用いる注入材を早期に硬化させることが重要です。本工法は、これまでの注入材と比較して改良エリアを早期に硬化させることができるので、その後の掘削作業を速やかに実施することができます。(砂質地山の改良体強度:6時間で1N/mm²、1日で2N/mm²)


  3. 施工性が良く、特殊な作業員が不要

    注入作業は、一般的にトンネル工事で使用する工事機械を利用したものであり、一回に注入する長さも6m程度を標準とします。したがって、施工性が良く、注入のための特殊作業員は必要ありません。


  4. 工費・工期の縮減と安全性が向上

    注入材はウレタン系注入材を使用する場合に比べて20%程度のコスト低減になります。また、浸透性が高いことから早期・確実に硬化させたいエリアを改良できるので、掘削能率の向上により工費・工期の縮減と安全性向上が図れます。

このたび鉄道建設・運輸施設整備支援機構 鉄道建設本部 東北新幹線建設局発注の「東北新幹線市川トンネル」において、この工法を本格採用し、確実な切羽の安定化と周辺地山のゆるみや地表面沈下抑制効果を確認しました。今後はさらに増加すると考えられる都市部などの土砂地山のトンネル工事において「フェイスタット注入工法」を自社工法である注入式長尺先受け工法(AGF-OFP工法)(※1)や長尺鏡ボルト工法(FIT80S)(※2)との併用で積極的に提案していく予定です。

【工事概要】
 工事名称:東北幹、市川T他1
 発注者 :独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構
      鉄道建設本部 東北新幹線建設局
 工事概要:トンネル工 L=710m
 工  期:平成15年4月1日~平成18年3月31日
 施  工:大林・東亜・小田急・東北特定建設工事共同企業体


※1【長尺先受け工法】
トンネル掘削に先立ち、切羽前方のアーチ天端部に鋼管などを打設し、それを用いて地山改良を実施する工法であり、掘削時の天端安定や、地表面沈下抑制に効果がある


※2【長尺鏡ボルト工法】
鏡面から前方に、5m以上のGFRP(グラスファイバー補強プラスチック)管等のボルトを打設する工法であり、鏡面の安定や地表面沈下抑制に効果がある


フェイスタット注入工法システム

フェイスタット注入工法システム


以上

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大林組 東京本社 広報室 企画・報道・IRグループ
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