資材を共同配送する仕組みを用いて 物流の大幅な効率化を図りCO2を低減

建設現場で初めて「UHF帯ICタグ」を活用し検品作業も効率化

プレスリリース

早稲田大学アジア太平洋研究センター椎野潤教授を中心とした共同研究コンソーシアム(大林組:幹事会社、竹中工務店、日立製作所、イー・クラッチ)は、国土交通省の住宅・建築関連先導技術開発事業の助成を受けて、環境配慮型「建設共同輸配送・トレーサビリティシステム」を開発し、複数の建設現場での実験によって、その有効性を確認した。

これまで、建設現場に資機材を配送する場合には、各工事事務所から資材メーカーなどの供給者あてに個別に注文を行い、直接、各建設現場へ配送を行っているケースがほとんどである。少量でも個別に配送しているため、トラックの積載率が低い非効率な配送となっており、使用するトラックの台数も増え、必要以上にCO2を排出する結果となっている。

このような課題に対応するため、5者共同で開発した本システムは、(1)「建設資材の共同輸配送システム」と、(2)「建設資材情報トレーサビリティシステム」の2つのサブシステムで構成されている。

(1)「建設資材の共同輸配送システム」
資材メーカーの工場と建設現場の間に、建設資材と物流情報を一元管理する共同輸配送センター(LS:Logistic Service)を設置する。このLSを拠点として、各メーカーの工場を巡回して資材の引取りを行うとともに、必要な資材を各建設現場に巡回配送する。LSでは、新たに開発した物流管理システムを用いて複数の建設現場の輸配送情報を一元管理する。
通常、建設現場に搬入された資材は、すぐに実際の作業場所へ移動させるケースがほとんどであるため、「配送」と「揚重」は密接に関連している。物流情報を、インターネットを通じて資材メーカーやサブコン、工事事務所などと共有することで、資材配送と揚重作業との時間調整がスムーズになり、効率的な巡回配送が可能となる。

(2)「建設資材情報トレーサビリティシステム」
建設資材のLSからの出荷検品と、建設現場での搬入検品を効率的に行うシステム。建設資材の「配送単位」あるいは「製品単位」ごとに資材にICタグを装着し、LSや建設現場の各拠点で、ICタグ機能を活用して配送履歴情報を収集する。共同輸配送では、複数の建設現場を巡回して荷おろしをするため、それぞれの建設現場に正確に配送したかを確認する必要がある。ICタグによって出荷・入荷のデータをすぐに可視化することで、リアルタイムに配送状況を確認することが可能になる。

ICタグは従来の電波帯よりも読み取り距離が長いUHF帯のものを使用した。これにより、資材を載せたパレットが読み取り機の近くを通過するだけで、ICタグのデータを一括で読み取ることができる。検品作業が簡素化できており、特にLSでは、従来方式の検品と比べると作業時間が1/3に低減できた。
なお、UHF帯のICタグは、物流をはじめ様々な分野での適用が期待されており、建設業界においては、今回のような実現場での実証実験は初めてである。

以上のサブシステムを含む「建設共同輸配送・トレーサビリティシステム」を、2005年10月中旬から12月中旬にかけて、首都圏の7ヶ所の建設現場を対象に26種類93品目の建設資材を対象として試験的に適用した。実験では、異なるメーカーの資材を運搬車両に積み合わせるなどしたケースが半数を超え、複数の建設現場を巡回した割合も約3割となるなど、資材の積み合わせによる物流の効率化を確認できた。トラックなどの車両の平均積載率は従来に比べ約14ポイント向上し、建設現場に入る車両台数も従来に比べて約30%減少した。
今回の実験では期間を2ヶ月間と限定したために、資材メーカーとLSの間の配送を大型車両で行った回数はそう多くはなかったが、物流の効率化により全車両の延べ走行距離が減ったため、これによるCO2の削減率は、少なく見積もっても22%となることを確認した。
以上のように、開発した本システムを用いて物流情報を一元的に管理することによって、効率的な資材配送と揚重作業を実現できることが分かった。

共同研究コンソーシアムの5者は、システムの改善を図ると共に適用資材や対象現場数を拡大し、今後も、建設共同輸配送システムの研究開発を進めていく。


環境配慮型「建設共同輸配送・トレーサビリティシステム」


以上

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大林組 東京本社 広報室 企画・報道・IRグループ
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