沿岸域での施工に適した海水と海砂を利用した高耐久・高強度なコンクリートを開発

材料が現地で容易に調達でき、コスト10%削減、CO2排出量40%削減

プレスリリース

株式会社大林組(本社:東京都港区、社長:白石達)は、沿岸域での調達が容易な海水と海砂を利用した高耐久・高強度の「海水練り・海砂コンクリート」を開発しました。これにより、真水や良質の陸砂の確保が困難な国内外の沿岸地域や離島でも材料が現地で容易に調達できるため、コンクリート工事のコストを10%削減するとともに、運搬に伴うCO2排出量を40%削減することが可能となりました。

離島など材料調達手段が限られた地域の建設工事では、材料の運搬や淡水化に伴う経済的負担や環境負荷の軽減が課題となります。また、国内外のエネルギー関連施設やプラント施設の多くは沿岸部に立地されることが多く、多量のコンクリートを使用しますが、真水や良質の陸砂を確保することが困難な地域も少なくありません。これら沿岸部では海水は豊富にあり、条件によっては海砂の入手も可能です。

今回開発したコンクリートは、細骨材に海砂、練り混ぜ水に海水を用いることにより、コストダウンとともに、材料が現地調達可能となり、運搬に伴うCO2の排出量が大幅に低減され、環境に優しいコンクリートとなります。

現状では、無筋コンクリートを除き、鉄筋の腐食の観点から、練り混ぜ水に海水を用いることや、骨材に海砂をそのまま用いることができず、除塩をしたうえで、塩分量を規定値以下にする必要があります。
しかし、近年、非腐食性補強材や、塩分の影響を制限できる混和材が出現し、さらには、耐久性試験方法や物性試験方法などが進歩しました。これにより、海水・海砂を用いたとしても耐久性を確保し、それを評価する方法が整ってきています。

今回の開発は、セメント材料の種類や混和材の成分を特定し、海水との相乗効果により、一般コンクリートよりも優れた品質性を得ようとしたものです。高炉セメントに特殊混和材を加えることで、コンクリート打設後の初期段階での強度が大きくなり、工期短縮に寄与します。
また、海水の効果により、組織がより緻密化して透水性が大幅に低下し、化学物質を含んだ水に対してより強い耐性を発揮します。長期的強度低下も少ないことから、真水で練った普通コンクリートに比べて、品質の向上が図れました。

今後、国内外を問わず、離島や沿岸部のインフラ整備、防潮堤・テトラポッドなどの海面上昇対策、発電施設などを対象に積極的に適用を図っていく方針です。

「海水練り・海砂コンクリート」の特長は次のとおりです。

  1. 高耐久、高強度、高品質

    特殊混和材の添加等により、真水で練った普通コンクリートに比べ、一般コンクリート構造体の設計での基準となるコンクリート打設後の経過日数28日目の圧縮強度は50%以上増加しました。また、自然曝露100年に相当する試験の結果、長期的強度低下も少なく品質向上が図れました。さらに、一般に緻密性を表す指標となる透水係数が、透水試験の結果、真水で練った場合に対し、70分の1に低減し緻密性の向上を実現しました。
    特に、この緻密性(※1)に関しては、岩塩に匹敵するもので、米国における放射性廃棄物処分場(例:ニューメキシコ州カールスバッドにおける廃棄物隔離パイロットプラント(WIPP(※2):1983~1985年、大林組施工))が岩塩層(※3)に建設されることに着目し、岩塩層が存在しない日本の放射性廃棄物処分場に対しても、本コンクリートの適用を今後検討していきます。

  2. 鉄筋コンクリート構造へも適用

    従来、海水や海砂は無筋コンクリートでは適用例はあるものの、鉄筋コンクリート構造では鉄筋の腐食の観点から使われていませんでした。鉄筋などの補強材が必要な構造物では、エポキシ樹脂塗装鉄筋、ステンレス鉄筋、炭素繊維補強筋、有機繊維など耐腐食性補強材を設計寿命に応じて適切に使用し、耐久性を確保します。これらの耐久性は、海水を練り混ぜ水とした供試体の促進腐食試験を実施することにより確認しています。

  3. CO2排出量とコストを低減

    本島から100㎞の離島における擁壁工事(コンクリート打設量1,000m³)をモデルに試算した結果、真水と陸砂を本島から運搬して使用した場合(標準案)に比べて、CO2排出量で300kg/m³(40%)の低減が図れます。有筋コンクリートの場合には、エポキシ樹脂塗装鉄筋を用いた場合で、上記と同様、300kg/m³(40%)の低減が図れます。
    なお、施工コストは、標準案に対し、無筋コンクリートでは10%の低減となり、補強材にエポキシ樹脂塗装鉄筋を用いた場合には、5%以上の低減が図れます。

大林組は、「海水練り・海砂コンクリート」を今後、国内外の沿岸部や離島のコンクリート構造物に積極的に適用を図るとともに、放射性廃棄物処分場への適用等、さらなる適用範囲の拡大を検討し、安全・安心の提供と低炭素社会の実現に貢献していきます。


※1 緻密性:一般には透水係数で表すことが多く、岩塩層はデータにもよりますが、1×10-11~1×10-14m/secです。これに対し、「海水練り・海砂コンクリート」は1×10-13m/secです。

※2 WIPP:核廃棄物隔離試験施設(Waste Isolation Pilot Plant)のことです。

※3 岩塩層:海底の隆起と沈下により海水が陸地に閉じ込められ、長い時を経て水分が蒸発し濃縮され、何百万年~何億年もかけて堆積されたものです。岩塩層の起源は海水です。

参考資料

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