立体自動倉庫の耐震性を向上させる「連結制振技術」を実用化

地震時にラックから荷物の落下を防止

プレスリリース

株式会社大林組(本社:東京都港区、社長:白石達)は、地震時に立体自動倉庫における荷物の転落災害防止を目的とした低コストの連結制振構造を実用化しました。

立体自動倉庫は1980年代以降急速に普及し、あらゆる産業分野で導入されていますが、その構造上、大きな地震の際には荷物が落下しやすいという指摘があります。加えて、被災した際の復旧にも時間がかかるため、震災時に国内の物流機能に大きな影響を与えかねません。こうした事態を防ぐために、立体自動倉庫の地震対策として、建屋全体を免震化する免震倉庫や、ラックそのものを免震化する免震ラックなどの技術が開発されていますが、コスト高のため実際に採用される例は少ないのが現状です。

大林組では、集合住宅などをターゲットとした代表的な制振技術である「デュアル・フレーム・システム(DFS)(※1)」と同様の原理を用いた、立体自動倉庫の連結制振技術を実用化しました。当システムを採用することで、ラックからの荷物落下を防止するだけでなく、建屋およびラック自体の耐震性を同時に向上することが可能です。また同システムは、既に実物件への適用が計画されており、従来の免震倉庫や免震ラックと比較し、新築倉庫の場合で約15%コストを抑えることも確認できています。

連結制振構造の例

具体的には、建屋の屋根材とラックの上部とを制振ダンパーで連結します。剛性の大きい建屋と剛性の小さいラックを制振ダンパーで連結することで、制振ダンパーが建屋とラックの揺れの違いを吸収するため、それぞれの揺れを小さくすることが可能です。

試設計した例では、連結制振技術を採用した場合、採用しない場合と比べてラック頂部の揺れを地震時の応答加速度レベルで約3分の1程度に低減することが分かりました。これにより、ラック内の荷物の落下防止はもちろんのこと、建屋への過大な地震入力の制御ができ、建屋に対しても制振効果を発揮します。

また、この技術は新築時だけでなく既存の立体自動倉庫への適用も可能です。既存倉庫へ適用する場合、倉庫の形態、敷地の空きなどの条件によりさまざまな改修方法があり、状況に応じて倉庫機能を短期間休止して施工する方法や、倉庫機能を維持しながら施工する方法が適用できます。

連結制振技術の採用には、規模、条件によって異なりますが、おおよそ以下のコストで対応が可能です。
・新築倉庫の場合:通常の免震構造と比べて約15%のコストダウン。
・既存倉庫の場合:新築時建設費の約20%~40%の改修コストで設置

大林組は、この立体自動倉庫の荷物落下防止用に開発した連結制振技術を、新築物流倉庫および既存の物流倉庫へ積極的に提案・展開するとともに、広く社会に安全と安心をご提供できる設計・施工技術を追求していきます。

※1 デュアル・フレーム・システムについて

建物中央の硬い壁構造物が心棒の役割を果たします

建物中央の硬い壁構造物が心棒の役割を果たします

超高層制振構造システム「デュアル・フレーム・システム」は、一つの建物の中に2つの構造体(建物の中央に構築した固い心棒と、その外周に配置した柔構造の建物)を造り、オイルダンパーで連結するシステムです。

互いに分離する二つの構造体はそれぞれ固さが異なるため、揺れ方に差が生じます。この違いを利用してダンパーが地震エネルギーを効果的に吸収し、高い制振性能を発揮します。同じ規模の一般的なビルと比べて、地震力(地震時に建物に加わる水平力)を3分の1程度に低減できるほか、上層階の水平応答加速度(床の揺れの激しさ)が小さくなり、家具などの転倒による二次災害も低減できます。

 以上

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大林組 CSR室広報部広報第一課
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