プレキャストコンクリート工法を採用した建物向けの雷保護システム「O-LiPROS」を開発

避雷引き下げ導線設備のコストを2分の1に低減

プレスリリース

株式会社大林組(本社:東京都港区、社長:白石達)は、プレキャストコンクリート工法(以下、PC工法)を採用した、鉄筋コンクリート造(以下、RC造)高層集合住宅などの建物に向けた雷保護システム「O-LiPROS(オーリプロス)」(図1-1)を開発しました。

O-LiPROS(大林組の雷保護システム)

図1-1 O-LiPROS(大林組の雷保護システム)

従来、RC造の建物では、避雷設備として柱の主鉄筋などを引き下げ導線(避雷針と接地の間をつないで雷電流を大地に逃がす役割)に用い、雷保護を行っていました(図1-2)。しかしながら、近年、高層集合住宅などをRC造で建設する場合には、工期の短縮や施工の省力化を目的として、鉄筋と鉄筋の間に電気的な接続のないPC工法(図2)を採用することが主流となっています。結果、柱の主鉄筋を用いて雷電流を大地に逃がすことができず、別途、柱の中に雷電流用導線を通すという対策を講じる必要があり、施工に手間とコストがかかっていました。

PC工法による従来の引き下げ導線敷設方法

図1-2 PC工法による従来の引き下げ導線敷設方法

PC工法(大林組LRV工法)

図2 PC工法(大林組LRV工法

PC工法では、あらかじめ工場で柱や梁部材を製造し、現場に搬入して組み立てる工法であり、部材間の鉄筋の接続には、主にモルタル充てん式の接合方法(図3)が使われています。今回開発した雷保護システム「O-LiPROS」は、このモルタル充てん式の接合用鋼管の両端を、避雷用コネクタ(図4)によって電気的に接続することで、柱の主鉄筋を雷電流用導線として利用する信頼性の高いシステムです。

柱の主鉄筋を利用することで、RC造の格子のように配置された鉄筋が有効に機能し、建物内の電気電子機器の破損を防ぐための等電位化(※1)が容易に図れます。さらに、従来行っていた雷電流用導線を別途設置する手間を省くことができ、設備に関わるコストを約2分の1に低減できます。このシステムは電気設備学会の「鉄筋の雷保護用引き下げ導体性能要件に関する調査研究」委員会の中で評価を受け、PC工法での柱の主鉄筋を引き下げ導線として利用することができるとの結論を得ています(電気設備学会誌2012年9月号に掲載)。

モルタル充てん継手

図3 モルタル充てん継手

避雷用コネクタ

図4 避雷用コネクタ

電気的な接続に用いる避雷用コネクタは、橋本精密工業株式会社(本社:東京都葛飾区、社長:橋本靖久)と共同開発しました。既にこの雷保護システム「O-LiPROS」は、東京都港区のグランスイート麻布台ヒルトップタワーや、神奈川県川崎市港町のリヴァリエなど、大林組で建設中の複数建物に採用しています。

「O-LiPROS」の特長は次のとおりです。

  1. PC工法において、柱の主鉄筋を引き下げ導線として利用できます。従来のようにコンクリートに埋設したビニール管の中に別途雷電流用導線を通す必要がなくなり、設備に関わるコストを約2分の1に低減できます。

  2. 従来のPC工法における避雷用引き下げ導線設備では、建物内の等電位化(※1)を図ることが困難でしたが、「O-LiPROS」では鳥籠のような格子状に配置された鉄筋が利用できるため、容易に等電位化が図れ、落雷による二次的な被害(電子機器の損傷など)を防止することができます。例えば、落雷によるエレベーターの停止、給排水ポンプの停止、自動火災報知機器の誤作動、インターホンの故障、パソコンやテレビの故障などを防ぐことができます。

  3. 落雷による電子機器の被害を防止するには、雷サージ(瞬間的に発生する異常な過大電流)が侵入しないよう各住戸にSPD(サージプロテクティブデバイス:避雷器)を取り付けることが必要です。これまでは、SPDから雷電流を逃がす地上までの距離が長く、避雷機能を十分に発揮できない場合もありましたが、「O-LiPROS」はSPD設置階のスラブ筋に雷電流を逃がすため、避雷機能を十分に発揮することが可能です。

大林組は、近年急速に増加している情報通信機器や家電製品の落雷被害を防止するため、今後も「O-LiPROS」を積極的に提案し、安全で安心な建物を提供していきます。

※1 等電位化
等電位化とは、サージ(過電圧)が侵入しても、電気電子機器が絶縁破壊を起こさないように、また危険となるような箇所に放電が発生しないように、建物内の接地箇所間で電圧(電位)の差が生じないように、電圧(電位)を等しくすること。

以上

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大林組 CSR室広報部広報第一課
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