株式会社大林組(本社:東京都港区、社長:白石達)は、板状免震マンション向けに大幅な工期短縮と省力化を実現したプレキャスト工法「LRV-W工法」を開発し、今回初めて宮城県仙台市のマンションに適用しました。
東日本大震災以降、免震マンションの需要が急増しています。さらに東北地方を中心に復興需要などによる建設労働者不足やそれに伴う労務費の高騰への対応、工期短縮を目的として、省力化工法が強く求められています。
大林組では、超高層タワー型マンション向けの省力化工法として、超短工期プレキャスト工法「LRV工法」を開発し、既に多くの施工実績を有していますが、板状型免震マンションで一般的に用いられる連層耐震壁の省力化は図られていませんでした。超高層以外のマンションは、その大多数が板状型マンションであり、一般的に戸境壁(各住戸間を仕切る壁)が1階から最上階まで続く連層耐震壁となっています。従来、連層耐震壁をプレキャスト化しようとした場合には、接続筋が多く配置されるために省力化が難しい箇所となっていました。
今回開発した「LRV-W工法」は、梁間方向の連層耐震壁について接合方法の簡易化と壁板のプレキャスト化を行い、桁行方向に従来のLRV工法を組み合わせることにより板状免震マンションの超短工期化、省力化、ローコスト化を実現しました。これにより、プレキャスト工法の適用範囲が一層拡大し、敷地条件に伴う建物形状やコストなどの諸条件に幅広く対応した提案が可能です。
「LRV-W工法」は、24階建ての板状免震マンション、「ザ・青葉通レジデンス新築工事(施工中、2015年3月竣工予定)」に初適用しています。
建物名称 |
ザ・青葉通レジデンス |
建築場所 |
宮城県仙台市青葉区 |
用途 |
共同住宅 |
規模 |
地上24階、地下1階 |
延べ面積 |
2万3,990m² |
竣工 |
2015年3月(予定) |
「LRV-W工法」の特長は以下のとおりです。
- 品質向上とローコスト化
プレキャスト化した連層耐震壁の継ぎ手を不要とした簡易な接合工法の併用により、通常では鉄筋が交差し複雑になる接合部の精度管理が容易となり、品質の向上を図りました。また、接合部の簡易化により接続筋の分だけ壁板の高さが低減でき、運搬性が向上することで、従来のプレキャスト工法と比較して24階建て(耐震壁180枚)程度の建物で、連層耐震壁に関わる部分について約22%のローコスト化が可能となります。
- 大幅な工期短縮と省力化
従来のプレキャスト工法では、躯体工事に1フロア6日から8日かかっていましたが、「LRV-W工法」では最短1フロア4日となり、躯体工事の工期を最大50%短縮できます。20層程度の建物では、全体工期(従来工法で約25ヵ月)を最大3ヵ月短縮します。この現場作業の大幅な省力化により、技能労働者の不足などといった課題にも効果があります。
大林組は、建設現場の生産性の向上およびコスト低減に向けた方策の一つとして、「LRV-W工法」を板状免震マンションに積極的に提案し、お客様の安全・安心に対するニーズに応える施工技術を追求していきます。
「LRV-W工法」詳細
(1)桁行方向は、耐震壁のない純フレーム構造なので、従来のLRV工法を採用します。
(2)梁間方向の連層耐震壁は、製作・運搬に配慮し、断面が一様な壁板部分をプレキャスト化します。
(3)免震構造は免震装置に引張力が生じないように設計するため、連層耐震壁にも引張力は生じません。結果として、連層耐震壁のせん断力もかなり小さく制御されます。この免震構造の特性を活かし、壁板の横筋と縦筋をつながず、壁板の接合面にズレ止めのコッター(凹部)と差し筋を設置するだけの大幅に簡易化を図った、壁板の接合方法とします。また、周辺フレームを補強する必要もありません。
(4)最後に、壁梁・壁両端を現場打ちし、柱梁との一体化を図ります。
【参考】「LRV工法」の概要
柱や梁の部材を完全にPCa(プレキャスト・コンクリート(※1))化し、現場でのコンクリート打設をなくして超短工期施工を実現する工法です。梁と接合部を一体化したLRビームと、柱のPCa部材であるVコラムで構成され、工場製作したものを現場で一体化します。複雑な配筋作業や仕口部のPCa化を工場で行うので、高い品質を確保できます。
「LRV工法」の特長
柱や梁の部材を先行して構築できるので、工期を大幅に短縮できます。
30階建て超高層建物の場合、躯体工期を2~2.5ヵ月短縮できます。
複雑な配筋作業をすべて工場で行うので、現場での施工性が向上します。
作業環境の安定した工場製作のため、構造体は高い品質を保つことができます。
タイル打ち込みなどの仕上げをすべて工場で行うため、増打ちが不要となります。
増打ちによるPCa寸法の増大がなく、部材寸法を最小化して重量を軽減できます。
以上
この件に関するお問い合わせ先
大林組 CSR室広報部広報第一課
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