株式会社大林組(本社:東京都港区、社長:白石達)は、医療施設などの多床室の室内環境を改善する空調システムを開発し、初適用しました。
従来、多くの医療関連施設における多床室での空調は、部屋の天井中央付近1ヵ所の吹き出し口から供給されています。そのため、各床の仕切りカーテンの影響などにより個々の患者の環境が必ずしも均一とならない傾向があります。また、安静にしている患者にとっては、不快となるような気流が直接頭部に当たらない空調環境が望まれています。
今回開発したシステムは、通常病室内に設置されるベッドサイドのコンソールユニット(機器用電源や医療ガスの配管接続用スペース)を空調用ダクトスペースとして兼用し、各ベッドごとに個別の吹き出し口を設けることで、空調環境の均一化を図るとともに患者が気流を不快に感じない環境を実現しました。
さらに、この吹き出し口には、供給する空気温度により自動的に冷房時は上部から、暖房時は下部から吹き出す機構を設けました。この機構により温度むらが改善(居住域空調)し、従来の空調方式と比較してエネルギーを約9%低減します。また、コンソールユニットとの一体化や、気流の切り替えに必要な制御システムを不要とすることなどにより、建設コストが約11%削減しました。
本システムは、2012年10月に完成した「宇城総合病院」(熊本県宇城市、理事長:清水寛)に初適用し、効果を確認しています。
「ベッドサイド空調システム」の特長は次のとおりです。
- 空調環境を向上
部屋中央の天井面などに設置した空調機(PAC)本体からのダクトを、縦型コンソールユニットに組み込み、各ベッドサイドに個別の吹き出し口を設けることで、各ベッドごとに均一な空調環境を提供することを可能にしました。気流方向を患者へ直接向けるのではなく居住域への包括的な流れとすることで、従来の空調方式で問題となる、患者への気流の不快感をなくしました。
- 設置コストの削減
通常病室内に設置されるベッドサイドのコンソールユニット(医療機器用電源や医療ガスの配管接続用スペース)と一体型とすることで、ベッド周りの空間を狭めません。併せて制御システムのシンプル化などにより、設置に関わる建設コストを約11%削減しました。
【従来空調方式の概要】
【ベッドサイド空調システムの概要】
- 冷暖房時で上下の吹き出しを自動制御
上下2ヵ所に設けた各ベッドへの気流吹き出し口は、吹き出し温度に応じて、自動的に切り替わります。冷房時は上部から暖房時は下部から吹き出すことで、空気の対流を活かした居住域への優先的な空調ができます。特に従来方式による暖房時は、室内上部から暖かくなりますが、本システムではベッド周囲から暖かくすることが可能です。
また、暖房空調のスタートから室内環境が満足できるレベルになるまで、従来方式では約30分を要していましたが、本方式では約8分に短縮できました。加えてエネルギー消費量も約9%削減しています。
大林組は、医療関連施設でのお客様の安全性、快適性、機能性、省エネルギーなどのさまざまな要望にお応えするため、「ベッドサイド空調システム」を含め、豊富なノウハウを活かしたソリューションをご提供していきます。
【モックアップによる実証実験風景】
【暖房運転開始8分後】
【暖房運転開始30分後】
【実証実験での風速測定結果】
以上
この件に関するお問い合わせ先
大林組 CSR室広報部広報第一課
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