「建物地震被災度即時推定システム」を開発

地震直後の被災度推定により、建物所有者、在勤者の安心を確保します

プレスリリース

株式会社大林組(本社:東京都港区、社長:白石達)は、新築建物のみならず既存建物へも容易かつ安価に設置でき、地震直後に自動的に建物の被災度を推定する「建物地震被災度即時推定システム」を開発し、大林不動産株式会社が東京都墨田区に所有する超高層建物(鉄骨造33階建て、高さ134m)に今回設置しました。

2013年4月に施行された東京都の「帰宅困難者対策条例」とそのガイドラインでは、地震後3時間までに、建物にとどまることが可能かどうかを事業者が判断することを求めています。建物管理者あるいは建物所有者は、大地震の直後に余震による二次災害を防止するため、建物が被害を受けていないか早急に判断する必要があります。

大地震後の建物の危険度評価には、専門家による「応急危険度判定」という仕組みが既に存在しますが、対応に数日から数週間を必要とすることから、地震直後の被災度判定には対応できないのが現実です。特に、首都圏に約1,500棟、全国に約2,500棟ある超高層建物においては、建物全体の調査に多大な手間がかかるため、建物管理者などによる被災度判断を支援するシステムへのニーズが急速に高まってきています。

超高層建物の地震直後の建物被災度判定を支援するシステムとして、建物に複数設置した地震計の観測結果から建物被災度を推定するシステムが近年普及しつつありますが、多数の地震計を用いることから、既存建物への適用には、設置やコストの面で課題がありました。

今回、開発、設置したシステムは、超高層建物の地震応答計算用の数値モデルを活用するもので、既存建物への設置も容易で、かつ低コストで導入できます。

「建物地震被災度即時推定システム」の主な特長は以下のとおりです。

  1. 1台の地震計のみによるシステムで、既存建物へも容易かつ安価に設置できます。

    本システムは、建物1階もしくは地階などに設置した1台の地震計とPCという簡易な構成となっています。多数の地震計やそれらを接続するケーブルの敷設を必要としないので、既存建物へもコストをかけずに容易に設置できます。
    従来システムを用いた場合の試算と比較して4分の1から5分の1程度のコストで導入することが可能です。

    (左)地震計とネット接続されているPC、(右)地震計外観

    (左)地震計とネット接続されているPC、(右)地震計外観


  2. 信頼性の高い設計モデルに基づいて自動的に被災度推定を行います。

    超高層建物では、建物の詳細な設計用数値モデルを作成し、予想される地震動に対する応答計算を行うことが義務づけられています。本システムでは、この信頼性の高い数値モデルを活用し、建物基部に設置した地震計の観測結果を入力した計算結果に基づいて、建物被災度を自動的に推定します。
    東日本大震災における複数の超高層建物における地震観測結果の分析を通じて、設計用数値モデルが、被災度即時推定の目的として十分な予測計算精度を持つことを確認しています。

    「建物地震被災度即時推定システム」の構成

    「建物地震被災度即時推定システム」の構成


  3. 分かりやすい結果表示により被災度判定を支援します。

    地震直後に被災度の推定結果を分かりやすい3段階評価で画面表示します。建物管理者は評価結果を参考に、速やかにどのような行動をとるべきか判断することが可能となり、BCP(事業継続計画)対策に効果を発揮します。また観測と計算結果は保存され、建物被災状況の詳細な分析を行うことができるので、迅速な復旧対策を可能とします。

    「建物地震被災度即時推定システム」の画面例

    「建物地震被災度即時推定システム」の画面例

大林組は、「建物地震被災度即時推定システム」をお客様の地震時BCP支援ツールとして積極的に提案・展開し、安全・安心な社会の実現に貢献していきます。

以上

この件に関するお問い合わせ先
大林組 CSR室広報部広報第一課
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