高効率・低コストの新型地中熱交換器を開発、自社建物で実証へ

新開発の分岐管を用いて、採熱効率20%向上と施工コスト25%削減を実現

プレスリリース

株式会社大林組(本社:東京都港区、社長:白石達)は、地中熱利用ヒートポンプシステムにおいて、従来型のU字管を用いたボアホール方式よりも採熱効率が20%以上高く、施工コストを約25%削減した、分岐管型地中熱交換器を開発しました。本技術は、環境省平成25年度CO2排出削減対策強化誘導型技術・実証事業(委託・補助)に採択されており、2014年春から本格稼働する大林組技術研究所(東京都清瀬市)の新実験棟「オープンラボ-2」に導入し、実証実験を行います。

「地中熱」は、深さ100m程度までの比較的浅い地盤中に存在する低温の熱エネルギーであり、あらゆる場所で利用可能です。再生可能エネルギー源として、東日本大震災以降の省エネや節電、自然エネルギー活用への意識の高まり、さらには建物のZEB(※1)化の点から注目を集めています。

地中の温度は、年間を通してほぼ一定であり、外気温度に比べて夏季は低く冬季は高くなります。この温度差を利用して従来の空気式ヒートポンプを用いた冷暖房システムよりも消費電力が少なく、省エネやCO2排出量の削減効果が大きい効率的な冷暖房などが可能です。地中熱の集めやすさやその採熱量は、熱交換器の性能が影響しますが、地中熱交換器として主流となっているU字管方式(図1)は、送り管と還り管の密着により、地中で採熱しても、還り管を通過する際に送り管の低温の熱の影響を受けて、採熱効率が下がることが課題となっていました。

今回開発した「分岐管型地中熱交換器」(図2)は、還り管1本に対して、送り管3本の高密度ポリエチレン管で構成される国内初の技術です。専用ストッパーを用いて配管の間隔を離し、適正に保持することで送り管と還り管の密着を防ぎ、採熱効率が下がる現象を回避します。また、採熱効率の高い送り管の本数を還り管の本数より多くすることにより、還り管の流速を上げ、採熱能力を向上させています。

施工性については、4本の採熱管と管底キャップを電気融着装置を用いて自動的に接続するという、現場での簡易な組み立てを可能にしました。加えて、掘削機の改良による工期の短縮や、専用ホースリールの開発による立て込みの効率化を図ったことで、施工コストの削減も実現しました。

図1 従来型地中熱交換器(左)、図2 分岐管型地中熱交換器(右)


「分岐管型地中熱交換器」の主な特長は以下のとおりです。

  1. 分岐管と専用ストッパーを用いて採熱効率を20%以上向上

    従来多用されているU字管方式(図3)と異なり、送り管3本と還り管1本で構成される、分岐管型方式を開発しました(図4)。採熱効率の高い送り管の本数を還り管より多くすること、また、配管の間隔を適正に保持するための専用ストッパー(図5)を上下1~2m間隔で装着し、送り管と還り管の距離を一定に保持することで、採熱効率の向上を図りました。この分岐管型方式の採用と専用ストッパーによる配管の間隔適正保持機能により、U字管方式と比較して、採熱能力が20%以上向上することがシミュレーション解析および実証試験により検証されました。
    なお、循環ポンプ稼働時の搬送動力は従来方式と同程度で、付属機器の消費エネルギーが増加しないことは、実証試験により確認済みです。

  2. 施工性向上による25%のコスト削減

    4本の採熱管(高密度ポリエチレン製)を管底で一体化させるための管底キャップの接続には、熟練工を必要としない、簡易で高品質な接続が可能な電気融着ソケットを採用しています(図6)。さらに、専用のホースリールの開発により、4本の採熱管のスムーズな建て込みが可能です。また、掘削工事についても、掘削機の改良により工期短縮を実現し、従来の既存U字管方式と比較して、施工コストを約25%削減しました。

    図3 従来U字管方式(左)、図4 分岐管型方式(右)


    図5 専用ストッパー(左)、図6 電気融着による配管組み立て(右)

大林組は、今後もクリーンで省エネ効果の高い地中熱利用システムの積極的な技術開発と提案により、エネルギー効率が高い建物を実現し、環境負荷の少ない持続可能な社会の実現に貢献していきます。

  • ※1 ZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)
    年間の生産するエネルギーと消費するエネルギーの収支をゼロにすることを指向した建物です

以上

この件に関するお問い合わせ先
大林組 CSR室広報部広報第一課
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