天然ダムにおける緊急排水技術「ポータブルサイフォン」を開発

迅速な排水により天然ダムの決壊による二次災害を未然に防止

プレスリリース

株式会社大林組
株式会社ダムドレ

株式会社大林組(本社:東京都港区、社長:白石達)と、株式会社ダムドレ(本社:東京都中央区、社長:小島徳明)は、機動性に優れた緊急排水技術「ポータブルサイフォン」を共同開発しました。

豪雨や地震が発生した場合、斜面崩壊などで流出した土砂が河川を閉塞(へいそく)し、天然ダムを形成することがあります。天然ダムは、その場の浸水被害だけではなく、決壊すると下流域に土石流が流れ込み、甚大な二次災害を引き起こす危険性があります。現地においては、これを回避するために一刻も早く排水作業を行う必要がありますが、災害の直後は周辺道路が寸断され、車両で現地に近づけない場合が多く、排水ポンプ車や大型ポンプを使う従来の対応では、(1)重機や資機材を搬入するまでに時間がかかる、(2)排水開始後に一日に何度も燃料を運搬・供給する手間がかかる、(3)燃料が切れた場合、排水作業を行えない、という問題がありました。

災害直後の天然ダムの状況

災害直後の天然ダムの状況

今回、大林組が共同開発したポータブルサイフォンは、サイフォンの原理(無動力)で排水を行う仕組みとなっており、人力のみで迅速かつ容易に設置することが可能です。設置に重機を使用しないので軽油などの燃料が要らないうえ、自動運転・遠隔監視も可能です。

ポータブルサイフォンは、国土交通省の技術公募において、次世代社会インフラ用ロボット現場検証委員会応急復旧部会から、「技術的には完成していることが確認できた。ポンプ等による排水に比べて揚程や水位差等の適用範囲に限界はあるものの、適用可能な条件下において緊急排水作業が必要となった場合には、導入を検討すべき技術として推薦する」との高い評価を得ました。

ポータブルサイフォンの特長は以下のとおりです。

  1. 人力のみで容易に設置が可能

    排水装置を分割・軽量化(部材最大重量25kg)しているので、設置に重機を必要とせず、人力のみで迅速かつ容易に組み立てられる構造となっています。現地への輸送はヘリコプターで行い、到着してから約6時間で排水作業を開始できます(※1)。

    ポータブルサイフォン適用イメージ

    ポータブルサイフォン適用イメージ

  2. サイフォンの原理により無動力で排水を行うため、軽油などの燃料が不要

    湛水池と吐き出し口の水位差(サイフォンの原理)によって排水を行うので、燃料が要らないうえ、連続排水が可能です(排水能力は、排水量2.4m³/分・セット、吸い上げ揚程7m)。

  3. 自動運転・遠隔監視が可能で、運用にかかる労力を省力化

    ポータブルサイフォンの頂部には「バルブユニット」があり、排水を開始する前に、配管を満水にするための呼び水が自動で注水される仕組みとなっています。また、両端部には「軽量バルブ」があり、湛水池の水位変動に応じて自動で開閉(排水の開始、一時停止)を繰り返すので、運用時に労力がかかりません。加えて、本装置は、現地の制御盤から信号を発信し、異常の発生を知らせる機能を備えているので、排水状況を遠隔地から監視することも可能です。現地に監視員を配置する必要がないことから、従来に比べて安全性も高くなっています。

    ポータブルサイフォンの構造

    ポータブルサイフォンの構造

大林組とダムドレは、災害に強い国づくりに向け、安全・安心に貢献する建物やインフラを整備するとともに、災害時の被害を最小限に抑える技術を開発し国や地方自治体へ積極的に提案していきます。

  • ※1 現地での人力による平均運搬距離100m、排水管設置延長100mとした場合。排水管には耐圧性と柔軟性を備えた、長さ2.5mの軽量ホース「ポータブル排水管」を使用しています

以上

この件に関するお問い合わせ先
大林組 CSR室広報部広報第一課
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