国際宇宙ステーション/「きぼう」日本実験棟での宇宙実験を開始

宇宙環境曝露実験を通し、先端材料の建設分野における幅広い可能性を模索

プレスリリース

株式会社大林組(本社:東京都港区、社長:白石達)は、国立大学法人静岡大学(所在地:静岡市駿河区、学長:伊東幸宏)と有人宇宙システム株式会社(本社:東京都千代田区、社長:古藤俊一)と共同で、航空宇宙産業向け先端材料の宇宙環境曝露(ばくろ)実験を開始します。

これは、国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)の「簡易曝露実験装置(ExHAM)」の利用テーマとして採択されたもので、国際宇宙ステーション/「きぼう」日本実験棟の船外実験プラットフォームを利用して行うものです。

国際宇宙ステーション/「きぼう」の宇宙曝露実験スペース

国際宇宙ステーション/「きぼう」の宇宙曝露実験スペース

大林組ではこれまでに、先端材料であるカーボンナノチューブ(以下CNT)の利用を想定した未来の宇宙インフラ建設構想を発表しています。この実験は、CNTの建設材料としての可能性を探る各種実験の一環として、宇宙曝露環境における耐久性を検証することを目的としています。

CNTは、高い軽量性(アルミニウムの約半分の比重)、高機械強度(鉄鋼の約20倍の引張強度)、高弾性力、高電流密度耐性(銅の100倍以上)、高熱伝導性(銅の5倍以上)など多くの優れた性質を持ちます。

現在、CNTの複合材は電池材料などの用途で使われ始めていますが、将来、CNT繊維を構造材などほかの用途で利用することが期待されています。具体的には、橋梁のケーブルや構造体の耐震補強など建設分野のほか、航空機や宇宙機の機体、電磁シールドなどの導電性も兼ねた素材、輸送機器のケーブル材など、幅広い用途への利用が考えられます。

一方で、使用環境がCNTに及ぼす影響はほとんど知られておらず、紫外線(UV)、放射線、原子状酸素(AO)などによる劣化の可能性があります。個別要素についての環境評価は地上試験でも可能ですが、宇宙空間のように各要素が複合的に影響する環境下での評価は、実験試料が回収可能な実験でのみ実現可能です。

この実験では、CNTから構成する標準試験体と、ほかの炭素材料から構成する比較試験体を用いて材料による耐久性の差異、曝露期間および曝露位置による劣化の差異などを把握します。

本実験で使用するCNTは高品質で長尺な撚糸(ねんし)の形状です。直径約20ナノメートル(ナノメートル:10億分の1メートル)の多層カーボンナノチューブ繊維をより合わせて試験体とします。

複数の試験体で試験を実施し、宇宙環境への曝露期間は、試験体により1年間または2年間を予定しています。第一回目の試験体は、2015年4月に米国ケープカナベラル空軍基地から、米国の民間ロケットにより成功裏に打ち上げられました。今後、ExHAMに取り付けられた後、「きぼう」船外実験プラットフォームに置かれ、曝露実験を開始します。

1年または2年の曝露後には試験体を回収し、状態を分析することにより、宇宙環境における耐久性を調査します。CNTの機械的強度や、その変化をもたらす結晶欠陥密度の変化などを観測することにより、宇宙環境における原子状酸素、放射線、紫外線などの影響を調べる予定です。

大林組は今後も、先端材料の活用や、それを活かした新技術の開発などに積極的に取り組み、社会の発展に貢献していきます。

以上

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大林組 CSR室広報部広報第一課
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